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2017/5/18 19:00

ハンバーガー自販機って知ってる? あなたの知らない「自動販売機」の世界

日本国内、どこへ出かけても必ず見つけるのが自動販売機だ。日本自動販売機工業会によれば、日本には駐車場などの精算機や両替機を除いても約365万台が稼働中だという。全体の約68%が飲料系の自販機でもっとも多く、次いで5%強のたばこが続く。参考までに、国土が広いアメリカは日本よりも多い645万台。一番多いのが飲料系なのは変わらないが、それに続くのが食品系で22%もある。逆にたばこは1%以下とかなり少ない。

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そんな日本での自販機だが、過去12年の統計では2005年以降普及台数は減少の一途をたどっている。その最大の要因は、ほぼ24時間営業しているコンビニエンスストアの存在にあると予想される。コンビニは1985年以降、右肩上がりで増え続けており、現在は全国に5万4000店舗ほどある。品揃えの充実度で自販機は到底コンビニに敵わないし、ほぼ定価で販売されることが多い自販機はどうしても敬遠されがち。自販機が減るのもやむを得ないのかもしれない。

 

とはいえ、自販機には人を惹きつける不思議な魅力があるのも確かだ。暑さ寒さにも堪え忍びながら街角にポツンと佇んで客を待つ姿は哀愁すら感じるし、はたまた無人のドライブインとしてロングドライブを癒やす役割も果たしてくれる。そんな自販機も近年になって着実な進化を遂げようとしている。今回はそんな自販機の進化や歴史に詳しい“自販機マイスター”こと野村 誠さんに自販機の魅力についてお話を伺った。

↑“自販機マイスターの野村 誠さん
↑“自販機マイスターの野村 誠さん

 

野村さんは、自動販売機紹介HP「山田屋」を主宰しており、約15年前から同HPで全国のおもしろ自販機を紹介している。テレビ番組「マツコの知らない世界」(TBS)など、各種メディアにも出演するほど、自販機業界では名の知れた人物だ。

 

ハンバーガーの自動販売機に興味

野村さんが自販機に興味を抱いたのはハンバーガーが買えたことだった。25年前のことだという。当時「グーテンバーガー」というのがあって、その自販機を探すうちに、そばやうどん、カレー、トーストといったように、いろんなものを売っている自販機を発見。これは面白そうだと全国を探して回るようになったそうだ。

↑カップラーメンの自動販売機
↑カップラーメンの自動販売機

 

魅力なのはその仕掛けだ。カレーの場合なら、レトルトカレーの袋を破り、温めたご飯の上にかける。ほとんど人間がやっているようなことを自販機が内部で行う。そばの場合も、麺を湯がいて、出汁をかけてその上に具材を乗せる。その間、30秒足らず。急いでいる人にとってはありがたい存在だし、乗せる具材が手作りだったりするので味は結構よかったりするから驚いてしまう。もしかしたら、自販機の中に人が入っているんじゃないか、そう思わせるような仕掛けを実現しているのだ。

 

野村さんによれば、こういった仕掛けはほとんど“ワンオフ”に近いもので、大量生産によって生まれているものではないという。そうした自販機は数十年前に作られたものが多く、それだけに機械のトラブルが発生すると大変らしい。たとえば、ハンバーガーだったら温まらないうちに出てきたりすることもある。そんなトラブルも少なくないため、いまでは夕方になると販売を停止してしまう自販機もあるという。トラブル時に対応するサービスマンの確保ができないからだ。

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自販機のメーカーはこうした特殊な自販機の新モデルの開発に積極的ではないため、生産終了になってしまうと保全も管理者が自分で行わなくてはならなくなるケースもある。そうした自販機の管理者は、過去のものを修理して使っていたり、補修部品確保のためにヤフオクで中古自販機を購入したりすることも多いのだそうだ。売上より修理代のほうがかさんでしまうことも少なくなく、ここまで来るともうこれは管理者の趣味みたいなもの。その姿はまるで旧車オーナーのようだ。

 

ユニーク自販機を探すなら県境が狙い目

こうした自販機はどこに行けばあるのか。野村さんいわく、「県境あたりにあることが多いですね。自分が群馬県出身ということもあって、埼玉県から群馬県に向かう途中には結構珍しい自販機が多く見つかります」とのこと。一方で、自販機で最も多く集められているのは神奈川県・相模原市にある「かみや自販機コーナー」だそうで、60台ぐらいが並んでいるそうだ。

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また、日本でもっとも大型の自販機は長崎県佐世保市にある氷の自販機で、なんと高さは18mあり、4階建てのビルに相当する。魚の鮮度を保つために使う氷を販売しているのだという。

 

変わり種としては、東京・両国には100種類の日本酒を用意した自販機があり、これを使えば利き酒もできる。また、茨城県稲敷市にある「あらいやオートコーナー」には弁当の自販機があり、ここでは3種類の弁当がたった300円で買え、売り切れと同時に販売は終了。

 

また、大阪地卵の「10円自販機」は、消費期限ギリギリの商品を集めた飲料品を10円で販売している。特産品を扱う自販機もあり、兵庫県豊岡市には地元で作られる16種のカバンをプレミア商品として各1500円で販売中だ。新しいところでは、東京・銀座に先頃オープンした「GINZA SIX」には化粧品の自販機が設置されている。

 

進化する次世代自販機

こうした自販機が孤軍奮闘、生き残っている一方で、自販機のIT化を積極的に進めているのがJR東日本ウォータービジネス社だ。2010年にタッチパネル式の次世代自販機をローンチした同社は、2017年にさらなる進化を遂げた自販機を開発した。それが最先端自販機「イノベーション自販機」だ。

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専用アプリ「アキュアパス」を使って事前に飲料をバーチャルで購入し、必要なときに対応自販機でアプリのQRコードをかざして希望の飲料を手に入れるというもの。この飲料の“購入権”は第三者に譲ることもでき、それはプレゼントなどに活用することも可能となっている。たとえば、離れた場所にいる知り合いに「今日は暑いね。これで冷たいものを飲んで頑張ってください」とTwitterのメッセージと一緒にこの権利を送信する。もちろん、何かの記念日にちょっとした気持ちを贈ってもいい。野村さんはこの自販機が生まれるにあたって、「新たなコミュニケーションが生まれることを想定して、従来の概念にとらわれない新発想で作られた」と話す。

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「イノベーション自販機」の前に立つと、高さは2mを超え、幅も1m30cmほどあり、そのサイズ感に圧倒される。商品はすべて2枚の46インチ大型モニター上に映し出され、否が応でも従来の自販機とは異なる先進性を感じさせる。しかも、この自販機には現金を入れる場所がない。購入できるのは、専用アプリ「アキュアパス」によるQRコードのほかはSuica(PASUMOも可)のみ。まさに、この自販機はキャッシュレス時代の先頭を行く新たなツールとして開発されたのだ。

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この自販機から、新たな飲料の買い方が生まれていくかもしれない。野村さんによれば「あらかじめ自販機で購入する権利をまとめ買いしておき、必要なときに自販機から希望の飲料を取り出す。こうすることで常に冷たく、あるいは温かい飲料が手に入れられる」という。これを拡大して考えれば、スーパーなどでこの権利が買えるようになると、飲料をまとめ買いする必要もなくなる。重たいケースを持ち帰らずとも、必要なときに近所の自販機に赴き、スマホをかざせば飲料を購入できるようになるかもしれない。スーパーなどではその置き場所を大幅に節約でき、物流コストを下げる可能性だって考えられるだろう。

 

JR東日本ウォータービジネスが今回開発した「イノベーション自販機」は、そんな近未来の自販機の世界を創造する可能性を秘めているのだ。

 

現在は第一号設置となった東京駅丸の内地下1階コンコース(ビュースクエア)以外に、新宿や品川、横浜など関東圏のターミナル駅に14台が設置済み。今後も順次設置されていく予定になっている。「イノベーション自販機」を見かけたら、ぜひ試しに飲料を購入して自販機の未来を体験してみてはいかがだろうか。