こってり濃厚レビューでおなじみ、倉本 春さんによるレビュー記事。今回のターゲットは、斬新なフォルムで話題となったダイソンのドライヤー、「Dyson Supersonic ヘアードライヤー」です。基本性能はもちろん、風速や風の温度、駆動音の大きさや性質、付属品にいたるまで、隅々まで検証。同機の長所、短所を丸裸にしてしまいました!
「羽根のない扇風機」の技術で細いスリットから風が出る!
掃除機で有名なダイソンが、今年は独自形状のドライヤー「Dyson Supersonic ヘアードライヤー」(実売価格4万8600円)を発売しました。ダイソンといえば、「羽根のない扇風機」でも世界中を驚かせましたが、今度はなんと筒形のドライヤー。見た目は文句なしにカッコイイこの製品ですが、その実力はいかほどのものなのでしょうか!?
さて、Dyson Supersonicの特徴といえば、同社の「羽根のない扇風機」と同じ技術、Air Multiplier(エアマルチプライアー)を使用している点です。このため、ノズル部にファンは搭載しておらず、吹出し側から後ろの景色まで見えます。じつはこの製品、羽根とモーターはハンドル部分に内蔵。
ハンドル下部から空気を取り込み、吹き出し口にある幅2mmほどのスリットから空気を排出しているのです。また、空気排出時に周りの空気を巻き込むことで驚くほど「強い風」を生み出します。
これぞダイソンの真骨頂! 風の勢いがスゴイ!
家電ライターである筆者はさまざまなドライヤーを試していますが、その結果、たどり着いた結論は「ドライヤーは大風量で低温が良い」ということです。髪が濡れている間は表面のキューティクルがはがれやすく、ダメージを受けやすい状態。さらに、濡れたままの頭皮は雑菌が繁殖して臭くなりやすいもの。このため、美しく健康な髪を保つには「素早く乾かす」ことが重要です。
そして、素早く乾かすには「風」と「熱」の力が重要なのですが、濡れている髪は60℃以上の熱でダメージを受けると言われています。つまり、「60℃以下の温度で、できるだけ風量があるドライヤー」がおススメなのです。
Dyson Supersonicは、温度を高温、中温、低温/スカルプモード、冷風(送風)の4段階から選択可能。特に低温モードはノズルから3cmで約40℃なので、髪に当て続けても傷む心配は少なそうです。
一番気になる風は、なんと風量が2.4立方メートル/分だそう。ちなみに、一般的には1.3立方メートル/分、風速なら14m/s以上のドライヤーが「大風量タイプ」といわれています。我が家で風速を計ったところ、なんと最大風速は約22m/s、そして風速を最小にしたときの風速が約15m/sでした。
比較対象として、我が家にある国産人気高級大風量ドライヤーも計測したところ、こちらは最大風速が約15m/s……なんと、Dyson Supersonic の最小風速と同じという結果です! ちなみに、国産高級ドライヤーの最小風速は約7m/sだったのですが、本機は付属する「スムージングノズル」を取り付けると、同じ約7m/s程度の風速になりました。
実際にDyson Supersonicを使用すると、明らか風の勢いが今まで使用していたドライヤーと違います。胸の下まである筆者のロングヘアが、一瞬にして宙に吹っ飛ぶレベルの風圧です。また、風の勢いで髪をかき分けて地肌に直接風があたるため、「地肌をすばやく乾かす」というスカルプケアの観点からも、かなり良い製品だと感じます。
ただし「髪の毛が飛び散る」状態では、髪同士がこすれてダメージを受けるので髪によくありません。使用するときは、頭の上から髪先に沿うように風を当てるのがおススメ。この方法だと、風の勢いで髪が押さえつけられるため、ストレートヘアの筆者はブラシなしでも比較的髪がまとまりました。
疲れにくいし髪が絡まるストレスもなし!
前述したように、ノズル内部にモーターなどを内蔵する必要がないため、ノズル部が非常に短いのも特徴です。このため、一見するとドライヤーというよりトンカチのようなデザインにも見えます。
ところで、髪は濡れている時は非常にダメージ受けやすいもの。このため、髪のダメージを気にする人は、よく熱い風を一か所にあてないようにノズル先をブルブルと振ってドライヤーを使用します。Dyson Supersonicはモーターなどの重い部品がハンドル部にある上、ノズル先が短いので素早く振っても遠心力による重さを感じません。本体重量は618gと決して軽い部類のドライヤーではありませんが、長く使用してもほとんど疲れませんでした。
また、吸気口がハンドル下部にあるのも便利。普通のドライヤーは吸気部がノズル後ろにあるため、筆者のようなロングヘアの場合、手荒にバサバサとドライヤーをかけると吸気部に髪の毛が絡まることもありました。また、タオルやカーテンなどの近くでは、布が吸気部に張り付くことも……。ところが、Dyson Supersonicは吸気部がハンドル下にあるため、このような現象が起こりません。毎日使用するドライヤーなので、こういった細かなストレスがなくなるのはうれしいポイントです。
指が届きにくいボタン配置が惜しい……
ただ、ちょっと気になるのはボタンの配置。一般的なドライヤーは、髪をドライしている間もスイッチ類が目視できるよう、吹き出し口側にスイッチ類が配置されています。一方、Dyson Supersonicはスイッチ類がすべて裏面に配置されています。
このため、自分で髪をドライするときは、手の感触だけでスイッチを操作しなければなりません。しかも、使用中によく利用する「風速切替」と「風温切替」はノズル部にあるため、スイッチへ指が届きにくいのも気になりました。
アタッチメントは風が強すぎる人に便利
ところで、本製品には3種類のノズルアタッチメントが付属しています。こちらは「風の流れで髪を整える」らしいのですが、個人的にはほとんど使用しませんでした。というのも、一般的なドライヤーのノズルは「風の通り道を狭めることで、風速をあげる」ものが多いのですが、なぜか本機はアタッチメントを付けると風が弱くなるのです。ですから、「風は強いほど良い」主義の筆者には必要ありませんでしたが、アタッチメントは風が強すぎると感じる人には便利だと思います。
また、髪をカールしていると、強い風でカールが緩むことがありますが、こういった人には風を拡散する「ディフューザー」アタッチメントが便利です。また、アタッチメントはマグネット式で、手軽につけ外しできるのも好印象でした。
運転音はやや小さいが特徴的な駆動音がある
大風量というと、音のうるささも気になりますが、Dyson Supersonicはどうでしょうか。我が家でスマホアプリを使って簡易計測をしたところ、Dyson Supersonicは77dB、前述の国産高級ドライヤーは89dBと、Dyson Supersonicのほうが静かな結果となりました。
ただ、普通のドライヤーがゴーッと低い音を発するのに対し、本製品はキュイーンという少々甲高い特徴的な駆動音がします。個人的には、身体に響く重低音よりは気にならないのですが、使用する人によっては高い音のほうが耳障りと感じる人もいるかもしれません。
頭皮トラブルを抱える人も試してみては?
操作性などで少々気になるところもありましたが、Dyson Supersonicはとにかく大風量なのがいい。いままで髪を乾燥させるのに10分ほどかかっていた筆者ですが、本機の使用時は高温・強風モードで6分ほどで髪が乾きました。そのため「髪を乾かすのが面倒」という人には、ぜひ一度使ってほしいです。
また、強い風が直接頭皮に当たるため、低温モードを使用すればスカルプケアにも良いと感じました。「洗っているのに頭が臭い」「頭皮がべとっとする」などの頭皮トラブルを感じている人も、一度試してみてはどうでしょうか?
【URL】
Dyson Supersonic ヘアードライヤー(※ページに飛ぶと音が出ます) http://www.dyson.co.jp/haircare/supersonic.aspx