エンタメ
2016/4/30 20:30

トレンディエンジェル斎藤さんに思う、”雰囲気イケメン”がモテるワケ

 

ずいぶんと前の話だが、とある男性と食事をしていたら、唐突に「菜々ちゃんって、雰囲気がいいよね」と言いだした。「決して美人っていうわけではないんだけど、雰囲気がいいんだよね。いや、美人っていうわけではないんだけど、なんか雰囲気がいいんだよなあ」

 

「美人っていうわけではないんだけど」という枕詞の連呼に、当時はあまり褒められた気がしていなかったのだが、最近ふと思い出す。単純に「可愛いね」と言われるよりも(まあ、まず言われないんだけど)、なんだか心の部分で通じるものがあるような気がしたからだ。

 

録画していたお笑い番組「そこそこチャップリン」を見ながら家で晩酌をしていた。勝ち抜きで出演権を得た芸人や最近旬でそこそこテレビに出ている芸人など、若手がネタを披露する。

 

トップバッターは、今をときめくトレンディエンジェルだった。漫才が終わった後に、司会の内村光良がゲストの佐藤栞里にコメントを求める。彼女は、「斎藤さんが、あまりにも堂々と立っているので、脳が麻痺して格好良く見えてきましたね」と言った。

 

“雰囲気イケメンという言葉がある。いわゆる目鼻立ちの整った正統派イケメンとは違い、モテ界に存在する亜種。誰かが「格好いい」と言えば、誰かが「嘘、信じられない」と唾を吐き捨てる、絶妙なシーソーの上でバランスをとる存在だ。

 

「斎藤さん格好いい!」と頬を染める女性は私の周りにも多い。ハゲでもモテる時代がやってきたなんて、どれほどの世の男性陣を勇気づけることだろう。話せば面白い、声もいいし歌もうまい、どこか清潔感もある。しかし、ハゲだ。「恋愛対象としてNGな男性ランキング」で「体臭」や「デブ」とともに常連でトップ3入りするようなウィークポイントを、むしろ全面に出しながらモテるというのは、やはりすごい。

 

この人はモテるだろうな、と思いつつ、どうしてかその理由が自分の中では明確ではなかった。しかし、佐藤栞里の一言で腑に落ちた。つまりは、堂々としているその「自信」だ。

 

自信をもつ、というのは存外難しい。私たちは日々、学校で先生に○×をつけられ、誰が書いたかもわからぬ「男性がエロいと感じる女性の仕草」などの恋愛コラムを読みふけり、Facebookのいいね!の数で人生の充実度を測り、婚活パーティーでは指名された人数で自分の価値を認識する。「自分がいいと思ったから」と言い切って生きるのは、予想以上に勇気と根性がいるものだ。

 

雰囲気イケメンとは、正統派イケメンと違い、独自の”イケメン”の基準をもった人間だ。他人の評価軸で生かされている人間にとって、自分の中に評価基準があり堂々としている姿は、それだけで憧憬の対象となりうる。

 

ただ、イケメンの雰囲気をもってしても、万人受けは不可能。「勘違いのブサイク野郎は死ね」と罵倒する人間もいる。「細身」「ギャグのセンス」「中肉中背」「ロン毛」……彼らをイケメンに保つための基準に、ある種シンパシーを感じなければ、雰囲気を感じとることはない。人は理解し得ないものには心揺り動かされないのだ。

 

ちなみに私は「黒髪」で「ウィットに富んでいる」人であれば大抵の男性は格好良く見える。

 

しかし、ということは、だ。

 

ただひたすら私の雰囲気を褒め称えてくれた彼は、私のどこかにシンパシーを感じて、悪しからず想っていてくれたということなんじゃないか。茶髪だったけど、ウィットに富んだ人だった。

 

「美人っていうわけではないんだけど」という枕詞が悔しくて適当に流してしまっていたが、雰囲気に惹かれたことと話が弾んだことは、きちんとした因果関係があるように思うのだ。もしかすると、彼なりのアプローチだったのでは?

 

まあ、その食事以来なんの音沙汰も無いので、確かめようがないのだが。

 

イラスト/マガポン