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2016/9/8 12:53

いま地震が来たら猫ちゃんをどうする? ペット防災の専門家に“いざ”への準備を聞いてみた

猫をはじめとするペットは、大切な家族の一員です。 だからこそ、いざというときのための備えが重要。 いまできる物と心の準備について、ペット防災の専門家、平井潤子さんにお話しを聞きました!

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【お話を聞いたのはこの人!】

NPO法人ANICE代表

平井潤子さん

2002年 に「ANICE」を立ち上げ、さまざまなメディアを通して“動物と共に避難 する”ための情報提供やサポートを行っている。また、全国の被災地で、調査や救援活動も実施。

 

平時の備えと情報収集がスムーズな避難につながる

地震に台風、土砂崩れ、火山噴火……。いつこうした災害に見舞われるかは、誰にもわかりません。 もしも自分が被災者になったとき、愛猫を連れてきちんと避難できるのか――。NPO法人「ANICE」代表の平井潤子さんは、次のようにアドバイスしてくれました。

 

「東日本大震災のとき、ペットを置いて避難せざるを得ない状況があり、迷子になったり命を落としたりした犬猫がたくさんいました。13年には環境省からペットの同行避難に関するガイドラインが示され、災害時にペットとともに避難するのは飼い主の役割として、推奨する動きが高まっています。4月に起こった熊本・大分の震災後に、被災地へ調査に入った際には、同行避難はいまやあたり前になっているという印象を受けました。 しかし、これには地域性も大きく影響していると思います。私が滞在した熊本県益城町は高齢者も多く、もともと地元住民の交流が深い地域。「あれは○○さんちの猫」というように、お互いに受け入れる環境ができているようでした。都会でも、日ごろから近所に猫好き仲間のコミュニティを作っておくと、いざというときに助け合えて心強いですね」(平井さん)

 

同行避難をスムーズに行うためには、平時からの準備が何より大切だと平井さんは続けます。

 

「一緒に避難したペットに対する責任は、飼い主にあります。フードや水、トイレグッズなど必要な物資をある程度備え、すぐに持ち出せるようにしておきましょう。 さらに、避難する手段や避難先などについても、複数の選択肢を用意しておくことが大切です。どこへ避難するにせよ、それぞれメリットとリスクがあります。あらかじめシミュレートしておけば、状況に応じて速やかに最善の方法を選べると思うのです。何より優先してほしいのは、自分の命を守ること。大切な猫の命を守れるのは、 自分だけだということを、心にとめておいてください」(平井さん)

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【“いざ”に備えていますぐできる 10のこと】

備えが十分であれば、速やかに避難でき、避難生活で起きうるトラブルを未然に防ぐこともできます。自分と猫を守るため、今日から準備を!

 

1.避難グッズを用意する

猫用の避難グッズも用意しましょう。同行避難にキャリーケースはマスト。エサや水は、1週間ぶんあると安心です。新聞紙は短冊に裂けば、トイレの砂の代わりになります。また、避難所などでの屋外診療のときに役立つのが、目の粗い洗濯ネット。興奮した猫が逃げ出すことを防げます。

猫用の避難グッズリスト

●キャリーケース ●ポータブルケージ ●ポータブルトイレ ●猫砂・ペットシーツ・新聞紙 ●キャットフード・水(1週間ぶん) ●毛布・バスタオル ●ハーネス・リード ●猫用健康手帳・薬 ●ブラシ・くし ●洗濯ネット

 

2.マイクロチップや首輪で飼い主がわかるようにする

地震でパニックを起こして逃げた猫を探すのは大変。名前や連絡先を記した首輪や迷子札を付けておくのは基本ですが、災害時の状況次第では、やせて首輪が外れてしまうことも。頸部皮下に埋め込むマイクロチップは痛みもなく、個体識別も確実かつ迅速。法令でも推奨されています。

 

3.去勢・避妊手術を済ませる

避難所にいるときに、わが家の猫が発情期に入って、大きな声で鳴き始めたら他の避難者に多大な迷惑をかけてしまうでしょう。逃げ出した猫がその地域で出産を繰り返せば、震災後の野良猫問題になります。繁殖希望の場合を除き、早めに去勢・避妊手術を済ませておきましょう。

 

4.ワクチン接種を行う

避難所生活が続くと、ストレスや衛生状態の問題などから、人間だけでなくペットの間にも感染症が広がってしまう可能性があります。日ごろから、定期的なワクチン接種を行い、予防しましょう。また、月に1回はノミやダニなど寄生虫の駆除を行い、清潔を保つことが大切です。

 

5.飼育環境を整える

地震に備えて、大型家具の転倒防止策を施しておくのは、基本中の基本。物が落ちてきて猫が怪我をしないように収納方法も考えましょう。飼い主の不在のときに災害が起きたとき、猫が室内に閉じ込められてしまわないよう、ストッパーなどでドアを開放しておくと安心です。

 

6.ケージに慣らしておく

避難所では、ペットはケージに入れさせることになります。普段自由に行動している猫が慣れない環境で体調を崩さないよう、ケージの中が安心できる場所だとあらかじめ認識させておくのがベター。日ごろからおやつをケージ内で与えるなどの習慣を作っておくのも有効です。

 

7.飼育数を管理する

一人暮らしで何匹も猫と暮らしていたら、いざという時全員を連れて逃げるのは困難です。また、避難生活を送る場所によっては、受け入れを拒否される場合もあります。多頭飼いのリスクを知った上で、いまいるコたちを守るための手段を考えておくことが重要です。

 

8.部屋の中に猫の避難場所を用意する

大きな揺れが発生すると、窓ガラスが割れて飛散する危険があります。窓際を避け、なるべく安全な場所に、猫のお気に入りスペースを作ってあげましょう。また、とっさに猫が自分で逃げ込めるよう、リビングなどにケージを置いておけば、ケージに慣らす訓練にもなります。

 

9.避難経路を確認しておく

自宅から避難する場合は、指定の避難場所を確認し、猫を連れて実際に避難ルートを歩いてみることをおすすめします。自分一人で避難する場合に比べると荷物も増えますし、猫がパニックを起こす恐れもあります。なるべく最短、かつ安全なルートを把握しておきましょう。

 

10.近所に猫友を作る

仕事などで不在時に災害が起きた場合、猫の様子を見に帰宅するのは、かえって危険。安否確認や一時的な保護をお願いできる猫友がいると非常に心強いです。日ごろから、ご近所さんとコミュニケーションをとり、愛猫のことを知っておいてもらうよう心がけてみてください。