乗り物
2017/4/30 20:00

【上海モーターショー】激似モデルはまだまだ健在? 中国での“そっくりさん”事情とその理由

中国ではかつて、どう見ても「コピーしたんじゃないの?」と思えるクルマが多かった。近年はその傾向がかなり薄らいだとはいえ、上海モーターショーの会場内を見て歩けば「あれ?」と思える“そっくりさん”がけっこう見受けられる。本稿では今年の上海モーターショーで見つけたそうしたクルマたちをピックアップするとともに、中国での“そっくりさん”事情を探ってみた。

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↑上海モーターショー2017の会場となった国家会展中心(National Exhabition and Convention Center)

 

No.1はポルシェ・マカン似のZOTYE『SR9』か?

会場を歩いていて一番驚いたのは、「ZOTYE」が発表した『SR9』だ。このクルマ、どう見てもポルシェ『マカン』にしか見えない。もちろん、ボディサイズがマカンよりも一回り小さいなど、細部を見れば違うところもなくはないが、街を走っているこのクルマを見て違いがわかる人はどれだけいるか。それほどまでに似ているのだ。

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↑ZOTYE『S9』。この角度から見て本家のポルシェ・マカンとの違いを見分けられる人はどれだけいるか。リアビューも見事なまでの酷似ぶりだ

 

このSR9の価格は13万元(約200万円)ほど。それに対して、ポルシェ・マカンの中国での販売価格は50万元(約800万円)というから3分の1以下でしかない。本物とは走りも大きく違うだろうが、それでも気分で走るなら十分、ということだろうか。

 

また、同社のブースにはジャガー『F-PACE』やアウディ『Q3』、三菱『ミラージュ』に似ていたモデルもあったが、それらはいずれも「強いて言えば似てるかな~」と思える程度。SR9のマカンそっくり度に比べれば数段落ちる。

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↑ジャガー『F-PACE』似のZOTYE『T500』

 

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↑アウディ『Q3』そっくりのZOTYE『SR7』。フロントよりもリアビューが似ている

 

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↑三菱『ミラージュ』を思い起こすZOTYEのEV『100plus』

 

続いて東風汽車の『CM7』。このクルマはトヨタの旧アルファードにそっくりだ。アルファードは先代モデルはトヨタと広汽集団の中国合弁、広汽トヨタから発売していたが、全量を輸入に頼っていたために関税が加わって60万元(日本円換算:1000万円)前後もしていた。それでも中国でのアルファードの人気は高く、確信犯的に似せてしまったということなのかもしれない。

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↑東風汽車の『CM7』は旧型アルファードのそっくりさん。ここまでくればもはや確信犯に思える

 

ブランド名からしてパクリっぽかったのが「LANDWIND」だ。会場には“一押し!”とでも言いたげなほどレンジローバー『イヴォーク』の“そっくりさん”『X7』がずらりと並ぶ。全体のデザインはもちろんのこと、特にLANDWINDのロゴを入れているフロントグリル周りはライトの造形からして本物とそっくり。リアビューあたりはレンジローバーに近い印象を受ける。こちらも本物の1/3程度の価格で買えるという。

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↑LANDWINDはランドローバー『イヴォーク』にそっくりの『X7』を出展。音声でバックドアの開け閉めができていた

 

上海汽車で見つけたのはMGブランドのSUV『ZS』だ。このデザインを見てすぐに思い浮かんだのはマツダ『CX-5』。メインカラーを“マツダカラー”っぽくしたあたりもますますCX-5似と思えてくる。MGではもう1つの“そっくりさん”『GS』を発見。これはトヨタが海外で展開してきた4代目『RAV4』にかなり似ている。街で見かけても勘違いしてしまいそうだ。

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↑マツダ『CX-5』にカラーリングまで似せたように思えるのがMGブランドのSUV『ZS』。横から見たフロントグリル付近はそっくり

 

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↑MGブランドのSUV『GS』は、トヨタが海外で展開する『RAV4』にそっくり

 

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↑MGブランドのコンセプトカー『E-Motion concept』。どう見てもマツダが発表した『RX-Vision』に似ている

 

ちなみに、MGはもともとはイギリスの「モーリス・ガレージ」を略称名だったが、現在は上海汽車の傘下にあるブランドの1つとなっている。企画・生産も中国国内で行われ、昔の「モーリス・ガレージ」の面影はほとんど伝わってこなくなってしまった。

 

大手メーカーでも“そっくりさん”を出展する事情とは?

ここまで上海モーターショーで見つけた“そっくりさん”を紹介してきたが、どうして中国ではここまで“そっくりさん”がまかり通っているのだろうか。ここで紹介した上海汽車や東風汽車などは中国の“ビッグ5”ともなる大手メーカーで、この大手でさえ、そっくりなクルマに手を染めているのだから。

 

その理由として考えられるのは、中国では何よりも創造物に対する権利を認めるというグローバルスタンダードな帰属意識が希薄であることが大きい。日本もかつてそうだったように、今後は経済の発展と共に意識は少しずつ変わっていくとは思われるが、“そっくりさん”であっても憧れのクルマに少しでも近づきたいという需要がある以上、なかなか止められないという背景もあるようだ。

 

また、中国では民間企業が訴訟を起こしてもなかなか受け入れてもらえないという事情もある。現在はポルシェが訴訟準備を進めていると言われるが、イヴォークを真似されて訴えを起こすつもりだったランドローバーはそれを見送ったとされる。

 

ただ、1つ言えるのは、以前とは違って単なるコピー車とは言えないほど車両のクォリティが上がっていることだ。デザイン的にも真似したとは思えない完成度で、内装を見ても高品質なつくりが伝わってくる。現段階でこそ中国メーカーが海外へ進出して実績を残しているとの話は聞かないが、こうして実力を着実に付けている中国車が日本をはじめ海外で見られる日もそう遠くはないのかもしれない。