Vol.144-4
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はAppleの「新型iPad mini」の話題。Apple独自の生成AI「Apple Intelligence」の展開において、iPad miniが狙う立ち位置とは何なのかを探る。
今月の注目アイテム
Apple
iPad mini
7万8800円~
iPad miniに加えてもう1つ、10月末にアップルが発表したMac新製品のなかで注目を集めた製品がある。新型の「Mac mini」だ。
Mac miniは小型のデスクトップ型Mac。2010年に初代モデルが登場以来14年間、「薄くて小さなMac」として親しまれてきたのだが、今回の新モデルはさらに小さくなった。本体は手のひらに乗るほどのサイズしかない上に、従来のデザインに比べて設置面積は半分以下になった。
それでいて、性能は非常に高い。最新の「M4」は、M1からM2、M2からM3への進化に対して伸びしろが大きい。さらにGPUの性能を求める場合には、M4でなく「M4 Pro」も選べる。
しかも安い。ディスプレイやキーボードなどを別途用意する必要があるとはいえ、もっとも廉価なモデルは9万4800円(税込)。性能を考えると、Macのなかはもちろん、Windows PCと比較しても安価である。
こうした小型のPCは、Appleだけが開発しているものではない。ノートPC向けのプロセッサーを使い、手のひらサイズの「ミニPC」を作るメーカーは増えてきている。NVIDIAやAMDのハイエンドGPUを使うPCはともかく、そうでないなら、もはや「デスクトップ型」といえども大柄にする理由は減ってきた。
ただ、Windows系のミニPCと比べてもMac miniは小さい。そして、動作音も静かだ。筆者はWindowsのミニPCと新しいMac miniを両方持っているが、動作音の静かさや消費電力の点で、Mac miniの完成度は頭一つ抜け出している印象だ。Windows系のミニPCもコスパの良い製品が多く、注目のジャンルではなるのだが、電源が外付けであったり動作音が大きかったりと、Mac miniほど洗練された製品は見当たらない。
Mac miniが小さなボディかつ静かな製品になっている理由は、AppleシリコンがスマホやノートPC向けの技術から生まれたもので、省電力性能が高いためだ。プロが使うにしろ一般の人が使うにしろ、Mac上での処理の多くはさほど性能を必要としない。用途によっては、時々高い性能を必要とすることもあり、ピーク性能は重要な要素だ。だが同時に、性能負荷が下がったら速やかに消費電力を下げ、プロセッサーを冷やして動作することも必要になってくる。その結果として、ファンや電源が小さくなってボディも小さく、静かなPCになる。
Macも他のPCと同じく、より多く売れるのはノート型(MacBook Air)ではある。だがMac miniも、人気があって長く使われる製品であり、Appleが力を入れている商品であることに違いはない。AppleはApple Intelligenceに合わせてプロセッサーを刷新し、自社製品の性能向上をしてきた。Mac miniはそのタイミングに合わせて出てきた意欲作といえそうだ。
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