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2024/12/20 18:30

お笑い愛あふれる分析ノート持参! 冨手麻妙が【M-1グランプリ2024】三連単ガチ予想!

日本一の漫才師を決める頂上決戦『M-1グランプリ2024』(テレビ朝日系)が12月22日(日)に開催される。今大会では、ついにエントリー数が1万組を越え、過去最多を記録したほか、2023年大会でチャンピオンに輝いた令和ロマンが史上初の連覇となるかも大きな話題となっている。

そこで今回、5月20日のXに、<Mおぢ凄すぎるって。いつかこうなりたい><いつかMおばになってお笑い賞レース予想記事書いてもらおう>というポストをしていた女優の冨手麻妙さんに予想をオファー。X上では普段からお笑い愛を感じさせるポストをしており、今回のM-1についても、<トムブラウン上がってきたのまじ凄すぎるwww><鬼としみちゃむ居ないの本当に泣きそう><めっちゃいいポスター! 井口かわいい>など言及し、同業者ならば敬称をつけがちだが呼び捨てしているところにお笑いファンらしさを感じてしまう。「同業だなんてとんでもない! 雲の上の存在です」と言いながら持参したM-1分析ノートをめくる冨手さんに、愛ゆえの敬称略で予想してもらいました!

 

冨手麻妙●とみて・あみ…1994年3月17日生まれ。神奈川県出身。主な出演作に映画「サイレント・トーキョー」「生きててごめんなさい」「愛の茶番」、ドラマ「どうか私より不幸でいて下さい」、Netflix「全裸監督」シリーズなど。公式HPXInstagram

冨手麻妙さん撮り下ろし写真

 

クリスマスは三浦マイルドがやっていたライブを観にひとり祇園花月へ

──ノート、何ページにも渡りびっしりと書いていますね。

 

冨手 今回の予想に関することのほかに、忘れてしまっている昔の大会を見返してメモしてきたんです。

 

──昔からお笑いが好きだったんですか?

 

冨手 ちゃんと好きになったのは2020年の『キングオブコント』(TBS系)です。ニッポンの社長の「ケンタウルス」のネタを観て衝撃と感銘を受け、そこから「趣味:お笑い」になりました。それまでは家族の団らんでテレビがついていて「今年はあの人が優勝したのかぁ」という程度の見方でしたが、そこからガラッと変わって、本気で見ようと。

 

──2020年というとコロナ禍真っただ中でしたね。

 

冨手 はい、その環境も後押しになりました。家にいる時間が増えて芸人さんのYouTubeを見る時間が増えて。さらば青春の光、ニューヨーク、見取り図……ひたすら見ていました。そうすると、見取り図は当時大阪にいて、大阪吉本のコニュニティを知り、属している若手を知り、ニューヨークきかっけで東京吉本を知り、と広がっていきました。劇場には、ニッポンの社長に“こんなに面白い芸人さんがいるんだ!”と本当に衝撃を受けたことで、まずは大阪の劇場に行くようになったんです。

 

──東京ではなく、まず遠征したんですね。

 

冨手 先に大阪吉本を好きになっちゃったので。まだマユリカやロングコートダディがいたころの京都の祇園花月に行ったりしていました。

 

──どのくらいのペースですか?

 

冨手 月1で、いつも1人で行っていました。クリスマスの祇園花月にも行ったことがあるんですよ。三浦マイルドさんがやっていたライブが、金属バットなどいいメンツが出ていて。そうやって劇場に足を運ぶと新たに芸人さんを知ることができるし、発見がたくさんあって楽しいんです。その後、無限大ホールなど東京の方にも行くようになりました。

 

──東京では誰が好きなんですか?

 

冨手 いぬ、です! クセが強くて独特の世界観を持った芸人さんが好きなんですよね。いまみたいにお笑いにハマる前に、一時期かもめんたるにハマった時期もあって、そういう人に魅力を感じます。

 

いつも三連単は惨敗「私の予想はパラレルワールドの順位(笑)」

──早速M-1について聞きたいんですが、これまでで印象的な大会は?

 

冨手 リアルタイムで見ていて号泣したのは、錦鯉が優勝した2021年です。あの大会のテーマが「人生を変えろ」で、それまで世間に浸透していなかった錦鯉が、本当にあの瞬間に人生を変えたじゃないですか。そんなふうに、振り返るとどの大会もバックボーンがあって、すごくいいなあ……と今回改めて見ながら思いました。個人的には優勝した芸人さんのネタより、最下位のほうが好みだったりしましたね。POISON GIRL BAND(ポイズンガールバンド)とか。

 

──いまは活動休止中ですよね。

 

冨手 そうなんですよね。3回出て、2006年と2007年どちらも最下位なんです。スリムクラブが初めて決勝に行った2010年もすごく好きです。笑い飯が念願の優勝を果たした年で、スリムクラブが衝撃的に登場して、松本人志さんがすごく高い点数をつけるんですよ。松本さんは真栄田(賢)さんを自分の番組に呼ぶことが多かったんですが、そのときから2人の歴史があるんだなあと、今とのつながりを感じます。あとはやっぱりトム・ブラウン! 推しなんです。2018年に初めて決勝に行ったとき、(立川)志らく師匠が「また戻ってきてください」ということを言っていて、それが6年後しで叶ったというのがうれしいです。

 

──レベルの高さを感じた年はありましたか?

 

冨手 全体的にすごいと思ったのは2019年、ミルクボーイが優勝した年ですね。1本目のネタを見た瞬間の感動もありましたし、かまいたちもすごかったし、ぺこぱは新しさを感じたし、どのコンビも爆発的な面白さでどこが優勝してもおかしくない年でしたよね。世間的にも「2019年はすごい」と答える人は多いと思います。

 

──この年の最下位はニューヨークなんですね。

 

冨手 意外ですよね。毎年1、2組は最下位をとっても「まあOK」みたいな暗黙の認識があると思いますが、2019年はいないように感じましたね。

 

──あと1つ、「ここには触れておきたい」という年はありますか?

 

冨手 ランジャタイが目立った2021年は面白かったです! 最下位でしたが「やばい芸人がいる」と世間が気づいたきっかけになったし、こんなにも最下位が似合うコンビっていないと思います。

 

──それでは今年の決勝進出者について聞きたいのですが、昨年、一昨年はM-1公式の「三連単順位予想キャンペーン」に参加して上位3組をXに投稿していますよね。

 

冨手 私、全部ハズレていますよね(笑)。いつも思うんですが、私はクセの強いお笑いが好きだと自覚していて、自分の順位と世間一般の順位予想はまったく違うんです。「順当に考えたらこうだよな」と思いつつも、結局好みを優先して予想しちゃうので、自分の予想はパラレルワールドの順位のように思います(笑)。昨年は、一昨年のさや香がすごく面白かったのでさや香を推していた気がします。敗者復活でシシガシラが上がってくるなんて思わなかったし、昨年は大ハズレすぎてびっくりしました。だから絶対に当たらないのは自覚しているんですが(笑)、今年はこうして取材をしていただいてより多くの方に予想を見られると思うと、さすがに手堅く考えました!

 

【1組目】令和ロマン

 

──今年は昨年の覇者、令和ロマンの2連覇が話題の中心になっていますよね。

 

冨手 そうですね。今年は3回戦を公式YouTubeで、準決勝を配信で見ましたが、まずは「令和ロマンVS」の構図が前提としてあると思います。令和ロマンはまだ本気を出していない感じがして、決勝の会場で笑神籤が引かれてからどのネタにするのか考える余裕があるくらい、めちゃくちゃ準備していると思います。(髙比良)くるまさんはいままでのM-1も全部研究して、圧倒的な考察力を下地に絶対に優勝できるネタを持ってくると思うんです。史上初の2連覇を本気で取りに来ているので、令和ロマンの優勝はかなり堅いと思います。ただ、今年は正統派漫才師が多いじゃないですか。徹底的に準備をしてきた令和ロマンに勝てるのって、正統派ではなくてぶち壊しにきたトリッキーな芸人なのかな、とは思っていますね。

 

【2組目】ママタルト

 

冨手 ママタルトは知名度もあるし、バラエティ番組の平場のイメージが強いと思いますが、今回決勝に行くことで「この人たちって本当に漫才が上手なんだな」というのがお笑い好き以外に知られるきっかけになるのではと思います。昨年、一昨年は敗者復活戦で頑張っていて、こうしてストレートで決勝に上がってきたのは本当によかったです!

 

──それぞれの敗者復活戦でのママタルトはいかがでしたか?

 

冨手 昨年は、鬼としみちゃむにドハマリしていて、ちょっとそっちに集中していまして……。ママタルトってみんなが見て笑える、状況を想像しやすいネタを作っていらっしゃるから「私が応援しなくてもほかに応援するひとがたくさんいるだろう」と思ってノーマークでした……すみません! とはいえ、大鶴肥満さんがせり上がってくる絵面だけで面白いと思うので、とても期待しています。

 

【3組目】ダイタク

 

冨手 双子の実力派漫才師、ダイタクの決勝進出はただただうれしいです! いつも敗者復活戦にいて、今年は決勝の舞台にストレートで行けたことに感動しました。

 

──ダイタクは劇場でも見る機会があったのでは?

 

冨手 そうなんです。劇場でのダイタクは際立っています。うまいし輝いていて「舞台に強い人たち」という印象があります。ファンも多いし圧倒的にウケるし、だから敗者復活戦でも強いはずなんですが、なかなか決勝戦には行けなくて。今回も準決勝のネタは本当に面白くて、過去の敗者復活戦で見てきたネタと比較しても「これは今年は決勝に行くのはそりゃあ納得だわ」という仕上がりでした。ただ”双子漫才”という伝家の宝刀が、決勝1本目はすごくいいかもしれませんが、2本目に新しい発見があるのかどうかが問われそうです。

 

──2人の決勝進出については、芸人仲間の反響もすごいですよね。

 

冨手 そうなんですよ! 2人は”劇場のスター”で憧れている芸人さんたちもたくさんいると思うし、吉本の芸人さんたちがめちゃくちゃ喜んでいます。多くの仲間たちが送り出していて、すごくステキな光景ですよね。信頼が厚いんだなと実感します。優勝しなくても世間に名前が知れ渡り、これからバラエティ番組に出るんだろうなという未来が見えます。2人ともギャンブラーでめちゃくちゃ面白いんですよ!『チャンスの時間』(ABEMA)にもギャンブル企画でよく出ていて、これを機にそういったクズな面が世に出ることで人気が出るんじゃないかな。あと、ラストイヤーなんですよね。ここでやりきって優勝できなくても『THE SECOND~漫才トーナメント~』(フジテレビ系)で結果を残す道も見えています。

 

──M-1後の未来まで予想していただきありがとうございます(笑)。

 

【4組目】真空ジェシカ

 

冨手 すごいですよね、連続……?

 

──2021年から4年連続ですね。

 

冨手 いやあ、すごい。悲願の優勝を本気で狙っていると思いますが、今や真空ジェシカのスタイルって世間に浸透しているじゃないですか。”トリッキーなネタ”というイメージが浸透したがゆえに、難しくなってきているような気もするんですよ。最初のインパクトがすごかっただけに、メジャーになった今は普通にすごい人気芸人さんで、その立場が逆に足を引っ張っているような気がします。見る人たちは、何をしでかすか分からない川北(茂澄)さんに対して「次はどんなトリッキーなことをしてくれるんだろう」と期待の目で見てしまっているので。私はもともと好きなので、その辺りが悔しくもありますね。ただ、『Mおじ』のYouTubeで「真空ジェシカは、3回戦や準決勝のネタをすごいブラッシュアップして決勝に持ってきたりする。ファンやほかの芸人の意見を取り入れて変えてくる」と取り上げられていて。今回の3回戦と準決勝のネタもすごく面白かったので、それをブラッシュアップしてくるとしたら優勝の可能性はあると思います!

 

──真空ジェシカも好きだったんですね。

 

冨手 はい! M-1本編も面白いけど、決勝進出者発表会見や本戦直後から配信する打ち上げ番組でもめちゃくちゃ面白いんです! 終わってから「印象に残っているのって、結局真空ジェシカだよね」と思わせる、平場でのぶっ飛んだ面白さがあります。

 

──ファイナリストによる『相席食堂』(朝日放送テレビ)での「街ブラ1グランプリ」でも、いつも爪痕を残していますよね。

 

冨手 ね! 結局真空ジェシカが持っていくんですよ。だから舞台でも平場くらい暴れてほしいです。決勝経験4回目であの場所に慣れていると思うので、変に優勝を狙いすぎずに壊しにきてほしいという願いがあります。

 

【5組目】ジョックロック

 

冨手 ジョックロックはダークホースですね。今回初めて知りましたが、それぞれピンとして活動していて結成は3年目、決勝進出が早いですよね。それこそ私のパラレルワールドでは優勝するかもしれませんが、この世界線でも特徴的なツッコミスタイルがハマれば優勝もあり得るのではと思います。霜降り明星が優勝したときのように、独特の動きと大きい声でのツッコミが、お客さんと審査員の心を掴んだらこっちのものですよね。

 

──コンビ結成3年目での優勝は最短記録になりますね(最短記録は第3回のフットボールアワーの4年8か月)。

 

冨手 そういったトピックも記念すべき20回目の大会にふさわしいですよね。2人は見た目にも華があるし、ツッコミの福本(ユウショウ)さんの、センス系かと思いきや真逆を行くツッコミスタイルのギャップにインパクトがある。それでいて、見る者が「分かる!」と共感を得やすいツッコミなんですよね。例えば、野球に例えてツッコむ芸人さんが多いと思いますが、野球を知っている人じゃないと分からないじゃないですか。そういうのがなくて、ちゃんとみんなが想像しやすく理解できるツッコミをしてくれる、見た目に反して意外と正統派なスタイルがハマってほしいです!

 

──出番順がキモになりそうですね。

 

冨手 そう! トップバッターだと難しいかもしれません。知名度がないコンビがトップバッターって「誰?」と構えて見てしまうと思うので。後半なら優勝の可能性はあると思います!

 

【6組目】バッテリィズ

 

冨手 私、すごく好きなんです。昨年の敗者復活戦でも華があり「めちゃくちゃ面白い人が出てきたな」と思わせてくれました。今年優勝できなくても、いずれ優勝のチャンスが濃厚だし、これを機にバラエティ番組に出まくるんだろうなという将来が想像しやすいです。一番将来が見えているのがバッテリィズだと思います。特にエースさんのキャラクターがかわいらしくて魅力的。大阪吉本の芸人さんたちからすごくかわいがられているイメージで、いろいろな芸人さんのYouTubeに頻繁に登場するんですよね。私が好きなニッポンの社長もかわいがっているイメージがあり、以前からすごく気になっていました。昨年の敗者復活戦で初めてちゃんとネタを見て「めっちゃ面白いじゃん!」となって、今年は敗者復活戦から上がってくるんじゃないかなと予想していましたが、まさかストレートで来るとは!

 

──昨年は注目株としてさまざまなメディアで取り上げられていましたね。

 

冨手 今年の準決勝のネタは昨年よりも格段にレベルが上っていて、この一年間で相当仕上げてきたんだなというM-1に向けての覚悟が見えました。優勝してもしなくても、「M-1で人生が変わる」というキャッチフレーズが一番ハマるのがバッテリィズではないでしょうか。現時点でも『チャンスの時間』の「ブレイキングやんちゃオーディション」で輝いていますし、今後のテレビ展開に期待大です。

 

──『チャンスの時間』は注目すべき若手芸人がよく出ていますもんね。

 

冨手 それこそヤーレンズもそうですよ。楢原(真樹)さんも「ブレイキング~」で輝いていたし、『チャンス~』はやっぱり参考になりますね。

 

【7組目】エバース

 

冨手 彼らは今年すごいプレッシャーがあったと思います。賞レースで軒並み結果を残しているんです。

 

──「上方漫才協会大賞」で大賞・新人賞にノミネートされ、「ツギクル芸人グランプリ2024」では決勝3位、「ABCお笑いグランプリ」にでも決勝進出しているし、10月27日には『NHK新人お笑い大賞』で優勝を果たしています。

 

冨手 今年一年、周囲の期待が一番高かったと思います。その期待を背負ってよくストレートで決勝に来たなと、プレッシャーに打ち克つ強さにまず惚れ惚れしました。エバースもバッテリィズと同じく昨年の敗者復活戦からこの一年で相当ネタを仕上げてきているので、優勝候補の1組に入ります。漫才が本当にうまいんですよね。ただ、これだけの賞レース常連芸人になると、今年めっちゃいいところまでいかないと今後大変になってくるかもしれませんよね。決勝進出会見でも「もうネタを出し尽くした」「新ネタを書きすぎた」「賞レースをやりすぎた」と言っているほど相当数な賞レースで名前を残しているので。ただ、M-1は新ネタを下ろさなきゃいけないわけじゃないし、既存ネタをブラッシュアップすると思います。

 

──劇場で見たことはありますか?

 

冨手 劇場ではなくて、昨年の敗者復活戦で初めて拝見しました。ケンタウロスが合コンに行くネタで、「特にツッコミがうまいなー!」と思ったことをすっごく覚えています。実力がある人たちなんだと感じました。だから「2024年はバッテリィズとエバースは絶対にストレートで決勝に行くだろう」と思っていました。M-1の空気に飲まれずに、普段通りやってほしいです!

 

【8組目】トム・ブラウン

 

冨手 今回改めて2018年の初決勝進出ネタを見ましたが、色褪せない面白さでした! そして今年、あれからスタイルを変えずにまた合体させているんですよ。ただ、やっていることは一緒なのにテンポの良さなのかなんなのか、巧みなうまさを感じるんです。2018年のときは布川(ひろき)さんが様子をうかがいながらツッコんでいるように見えましたが、今年は迷いなく合体させています。ステージを自分たちの世界にしている感があって、熟練された技を見せていただいた気分になりました。だから決勝にいることは、いるべくしている感じがするんです。好きだからというわけではなく優勝は全っ然ありだと思っています。優勝しなかったとしても、最終決戦に進む可能性が高いです。

 

──冨手さんは以前からXで決勝進出を予想しつつ、実際に進出したことに驚いていましたね。

 

冨手 そうですね(笑)。きっと4分間めちゃくちゃ笑うと思います。漫才のうまい正統派も揃っている中で、「じゃあ誰の4分間で一番笑ったか」と問われたときに思い浮かぶのは、トム・ブラウンじゃないかな。3回戦と準決勝でも会場が合体を楽しみにしている雰囲気もあり、2人の勢いもすごかったんです。会場全体を一体化させることができたのは、この6年間で2人がブレずに自分たちのやりたいことを突き詰めた結果だと思います。決勝進出が発表された瞬間も、すごくかっこよかったんですよね。みちおさんはおふざけを忘れてすごく喜んでいて。今年はラストイヤーだし、頑張ってほしいと思います。

 

──2018年は6位でしたよね。

 

冨手 そう! 633点取ってて、意外と最下位じゃないんですよ。志らく師匠が高い点数をつけているので、今年いないのが残念です。当時は上沼恵美子さんが「私には分からないけど、次のお笑い」というようなことを言っていたし、オール巨人師匠も同じようなことを言っていました。審査員を困惑させたときから6年経ち、お笑いのシーンも変わり、まさにいまは“次”じゃないですか。トム・ブラウンが異色ではなく、毎日のようにテレビで見るしメインストリームのお笑いになっている。だとしたら、優勝してもおかしくありません!

 

【9組目】ヤーレンズ

 

冨手 3回戦と準決勝のネタ、「やっぱり誰にも敵わない」と思うほどめちゃくちゃ面白くてすっごく笑いました。昨年決勝に登場したときの衝撃が色あせず、「なぜこんなにも面白い人たちをマークしていなかったんだろう。自分が恥ずかしい」と思うくらい笑って、それから一年間でヤーレンズのスタイルを知り、「今年改めてネタを見たときに自分はどう感じるのかな。もしかしたら、面白さに気づいてしまったから『まあ面白いよね』程度になってしまうのか」と思っていましたがやっぱり抜群に面白かったんですよね。とんでもない数のボケだし、頭一つ抜きん出ています。

 

運命の敗者復活戦! 決勝に進出する10組目のコンビは?

──ここから先は敗者復活戦の予想をお願いします。今年のルールは昨年同様、ABCの3つのブロックに出場者が振り分けられ、各ブロックから観客票で勝者を1組ずつ選出。その3組の中から、5人の芸人審査員が最終的なジャッジをして、決勝進出者1組を選出します。

 

冨手 準決勝を見た上で予想しましたが、すっごく悩みました。個人的に好きなのは豆鉄砲。修学旅行についてくるカメラマンのおじさんのネタでしたが、パワー系の漫才をやるそうな雰囲気なのに意外とインテリなネタで、すごく面白かったんです。ただ、SNSでは「修学旅行で写真を撮るおじさんっていうのが、よく分からなかった」という声を見かけて、万人ウケしないのかもしれません。

もう1組個人的に好きで面白かったのは、滝音。ツッコミのさすけさんが言う「ベイビーワード」呼ばれる造語によるツッコミが、ハマらない人は本当にハマらなくて……。文化素養がある人はハマりやすいと思いますが、一度立ち止まって「ん?」と考えちゃう人にとってはハマりづらいみたいで票が入りづらい感じはします。

 

──滝音は2020年に敗者復活戦11位、翌年はGYAO!ワイルドカード枠で復活していて、根強いファンの後押しもありそうですね。

 

冨手 あとは、家族チャーハンが面白かったです。ツカミが面白くてボケ数が多くて、お笑いファンじゃない人にも分かりやすいネタをしてくれるし、テンポもいい。

 

──家族チャーハンは2023年に結成したばかりで、ネタが少ない中で勝ち上がってきたことで話題となりました。

 

冨手 そうなんですよね。ファンも多いし、業界内でも期待の若手のようですね。私のお笑い好きの友達は、敗者復活枠に家族チャーハンを予想しているんです。ほかにも強そうなのはナイチンゲールダンス。昨年も本当に面白かったし、テンポもいいし場の空気を作るのもうまいんです、が、若い人からの人気がめちゃくちゃ高い一方で、中年以降のお客さんはあまり笑えないネタのような気がします。ネット社会を生きてSNSが身近にある世代じゃない人からすると、ボケが分かりづらいかもしれないですね。華があるので絶対に票は取るとは思いますけど。

 

──そのとおり昨年は敗者復活戦3位でした。

 

冨手 だからこそ、今年こそ決勝に行く可能性は相当高いと思います。以上を踏まえて私が選んだのは……。

 

★敗者復活枠 ダンビラムーチョ

 

──昨年はストレートで決勝に行き8位でしたね。

 

冨手 準決勝の配信は著作権の関係で無音で、どんな歌ネタなのか分からなかったんですが(笑)、会場のウケはすごくよかったです。今年は『キングオブコント』でやったネタ「冨安四発太鼓」が大バズりしたじゃないですか。今のダンビラは相当ノッているし、ダンビラなら最下位でもめちゃくちゃ面白いんですよ。

 

──それは共感できる人が多そうですね……!

 

冨手 視聴者の胸が痛むような哀愁がないから、手放しで面白く思える。ダンビラなら最下位でも優勝ですから!

 

2024年のM-1グランプリを制するのは? トップ3&優勝コンビ予想を発表!

──ではいよいよ、最終決戦に勝ち上がるトップ3、そして優勝コンビの予想をしてもらいます! 昨年、一昨年と三連単は大ハズレだったという冨手さんが選んだのは……?

 

冨手 うう、これ、私の予想が世に出ちゃうんですよね……だからちゃんと考えなきゃいけないと思って、本当に悩みました。悩み抜いて決めた第3位は、私の大好きな彼らです!

 

★第3位 トム・ブラウン

 

冨手 やっぱりトム・ブラウンが三連単に入るのは妥当だと思うんですよ。M-1出場者にはいろいろな物語やバックボーンが語られますが、初期はそんな物語とか全然なく「ただ面白い」だけで淡々と進んでいきました。20回目にして原点に戻り、4分間サンパチマイクの前でどれだけ面白い瞬間が作れるかの勝負……となると、最近の物語込みのM-1を粉々にしてくれるのはトム・ブラウンしかいません。

 

──破壊願望があるんですね。

 

冨手 破壊してほしいです。「記念すべき20回目なのに、今年のM-1はなんだったんだろう……」と思わせてほしい!

 

★第2位 令和ロマン
★第1位 ヤーレンズ

 

冨手 令和ロマンがとんでもない戦略を練ってきて「誰も勝てません」となる可能性はすごくありますが、彼らの今年のスタンスは”ヒール”みたいな感じじゃないですか。そんな令和ロマンを倒せるのはヤーレンズだと思うんです。その構図すらくるまさんが作り上げているのかもしれませんが、ヤーレンズは優勝への執着心がとても強いと思います。

令和ロマンとはお互いに売れない頃から新ネタライブをずっと一緒に回っていたし、だからこそ負けたくないだろうし、「2連覇をなんとしてでも止めたい」という思いは強いと思います。それに、どうしても物語も求めてしまう自分もいて、“令和ロマンを倒すヤーレンズ”を見たいと思ってしまうんですよね。令和ロマンの漫才への深い愛情も、くるまさんがさまざまなメディアでしゃべるたびに感じますが、やっぱりヤーレンズが勝つところが見たいです。

 

──昨年は最終決戦で令和ロマンに4票、ヤーレンズに3票で、ヤーレンズは惜敗だったんですよね。

 

冨手 だからこそ相当悔しかったと思います。令和ロマンを倒すためにこの一年間で仕上げてきているし、「俺たちは漫才でいく」というすごみを感じます。というのも、今年一年いろいろな番組に出ていましたが、楢原さんってすごくシャイな方なんですよね。でも漫才に入ったとたんにスイッチが入る。器用にいろんなことができない姿が、漫才師としてめちゃくちゃかっこいい。だからどうしても優勝してほしいです!

 

──アツい予想、ありがとうございました! 冨手さんの予想を聞き、ますます楽しみになりました。

 

冨手 私も楽しみすぎて今からわくわくが止まらないです。12月22日は敗者復活戦が放送される午後3時からずっとテレビ前にいます。お風呂やごはんはどうしようかと思っていますが、一年に一度のお祭りなので最後まで楽しみたいと思います。Mおじに憧れてやってみたかったM-1予想ができて、とてもいい経験でした。

 

 

構成・撮影/丸山剛史 取材・文/有山千春