ラグビー日本代表のワールドカップでの活躍は2015年を振り返るうえで欠かせないニュースです。選手たちの活躍は記憶に新しいところですが、多くの選手が「勝利の立役者」と評する人物がいます。その人物こそ、チームのメンタルコーチを務めた荒木香織さん。一躍有名になった五郎丸 歩選手の一連の動作(ルーティーン)の共作者でもあります。
今回は荒木さんに、ワールドカップを終えた今の心境を語ってもらいました。
「自分でコントロールできる、目の前のことに集中しましょう」
「W杯はベスト8が目標だったので悔しさはあります。でも、『歴史を変える』『人びとの憧れの存在になって満員のスタジアムでプレーする』という目標は達成しました。南アに勝ったことや、スポーツ界に衝撃を与えられたことは満足していますし、誇りです」
「チームではなく寄せ集めやった」と、荒木さんは就任当時を振り返ります。それが歴史に残る名チームへと変貌するまでに彼女がしたことは、監督の「選手の自主性を高めて世界と戦う意識をつくる」という要求に応えつつ、選手の味方となり、選手と対話することでした。
「選手からの相談を聞いて、課題を解決する方法論を、状況に応じて組み合わせていきます。学術用語は使わんと、あくまでもこの関西弁で(笑)」
驚くべきことに、4年間で不安を感じたことは皆無だったといいます。
「メンタルのプログラムはすべて、自分の感覚や経験ではなく、理論や研究結果をもとに遂行するので、間違っているわけがありません。だからすぐに効果が出なくても、選手が向上したいと思っている限り、不安は一切ないんです」
離婚などのプライベートな問題でプレーに集中できないと相談されたときは、「嫁がこれからどう言うてくるかなんてわからない。だったら、自分でコントロールできる、目の前の練習に集中しましょう」と助言したといいます。
この集中するためのメソッドは、ビジネスにも応用可能です。
「ビジネスはスポーツの試合と違って、敵と競ってもいないし、考える時間もある。失敗して落ち込むよりも、次の課題をリスト化して、自分が何をすべきかについて考えたらいいと思います」
このインタビューの完全版を後日公開!
“五郎丸ポーズ”の秘密も明らかに?ご期待ください!
Profile
荒木香織 あらき・かおり 1973年2月23日生まれ。京都府出身。学生時代は陸上競技部に所属し、ジュニアオリンピックに出場するなど選手として活躍。8年間に渡るアメリカでの留学・博士課程の取得の後、シンガポールの大学にて教鞭を取る。08年10月より兵庫県立大学准教授。スポーツ心理学についての研究を行う。12年から15年10月まで、ラグビー日本代表のメンタルコーチを務めた。
ジャパンラグビー トップリーグ
2015-2016
11月13日に開幕した日本最高峰のラグビー全国リーグ。全16チームが2グループ8チームに分かれて7節のリーグ戦を行った後、16年1月より上位8チームと下位8チームに分かれて順位決定トーナメントを行う。三地域リーグとの入替戦もある。五郎丸選手(ヤマハ発動機ジュビロ)やリーチ選手(東芝ブレイブルーパス)など日本代表選手も多数所属する。