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2025/5/19 12:00

【西田宗千佳連載】トランプ関税に揺れる今後のスマホ商戦

Vol.149-4

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回は廉価版として登場したiPhone 16eの話題。これまでのiPhone SEではなくiPhone 16シリーズとして登場させた狙いを探る。

 

今月の注目アイテム

Apple

iPhone 16e

9万9800円~(SIMフリー・128GB)

↑他のiPhone 16シリーズと同様、6.1インチのSuperRetina XRディスプレイを採用。よく使う機能に素早くアクセスできる「アクションボタン」も搭載されている。一方で「Dynamic Island」などは割愛された。

 

日本だと“スマホの春商戦”というと、誰もがその背景をすぐに理解できるだろう。新入学・就職など、新たにスマホを買う・切り替えやすい季節だからだ。だが世界的にいえば、この話は通じない。アメリカなどは新入学シーズンが「秋」であるので、4月までに学生向けの商戦を……という話にはならないのだ。

 

昔は携帯電話事業者が携帯電話端末の商品企画をし、メーカーに製造を委託していた。だから「日本の商戦期」に向けた展開が行われていた。だがいまは、グローバルなメーカーから端末を仕入れて販売するものになっているので、日本だけの事情に合わせて作られる例は少ない。

 

実際、iPhone 16eにしてもPixel 9aにしても“春商戦”というには少し遅いタイミングであり、特に日本を意識したものではない。アメリカ的にいえば、この時期に発売して初夏の“新入学シーズン”に備えるのがベストということになる。

 

Pixel 9aについては例年よりもさらに遅れたし、アメリカと日本では発売時期が少しズレた。この辺は、カメラ周りを含め、新しい部分が多かったからかもしれない。

 

一方iPhone 16eは潤沢な数量が提供されているものの、大人気とはいかないようだ。価格が高くなり、シンプルに“低価格モデル”と言いづらい部分があるからだろう。携帯電話事業者は割引などを積極的に行ったが、それでも、円安による価格上昇をカバーできる状況にはない。

 

その間で、シャオミは「Xiaomi 15 Ultra」などの製品を、価格を抑える形で販売している。携帯電話事業者での扱いが少ないため、マスにはまだなかなか売れていきづらい状況にはあるものの、スマホファンの心を掴みつつある。

 

トランプ政権が打ち出す「相互関税」のゴタゴタにより、スマートフォン市場も大きな影響を受けている。現在販売されている製品はともかく、今後販売される製品の価格がどうなるか、現状では予断を許さない。

 

関税はアメリカに輸入されるものに影響するので日本は大丈夫……と思うかもしれないが、そうはいかない。企業は世界全体で価格をコントロールしている。特にアメリカ企業にとって、“アメリカだけ高くする”選択を簡単に選べるものではない。“各国の関税によって製品価格が全く異なる”時代がやってくる可能性もあるし、結局トランプ関税が施行されず、大した影響がない可能性もある。

 

ドル安誘導もあり、円安傾向は多少是正されてきている。その結果、今秋の製品がいまよりも割安になる可能性はある。ただそれも、トランプ関税の行方次第だ。

 

いまはスマホが高い時代だが、それが秋に変わるのか、そうではないのか。変な話だが、その結果として、今年はスマホ選びが面倒な年になるかもしれない。

 

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