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2025/7/2 12:00

アップルの「Liquid Glass」が次世代iPhoneに与える影響は?WWDC25を取材して考えてみた

アップルの世界開発者会議「WWDC25」を、本社Apple Parkで取材しました。

 

今回のWWDCでは、iOS 26を筆頭とする次世代のAppleプラットフォームの発表とともに、「Liquid Glass(リキッドグラス)」という新しいデザインが発表されています。秋に正式リリースを迎えるiOS 26を、おそらくは次世代のiPhoneも搭載してくるでしょう。Liquid Glassの特徴や、次のiPhoneのハードウェアに与える影響を考察してみたいと思います。

↑アップルは、次世代のOSに採用する新デザイン「Liquid Glass」を発表しました。

 

Liquid Glassはユーザー体験を変える「デジタルメタ素材」

今のiPhoneのOSは、2013年のiOS 7から採用するフラットデザインを練り上げながら、長らく踏襲してきたものです。新しいLiquid Glassデザインは、2023年のWWDCでアップルが発表した空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」の基幹ソフトウェアである「visionOS」の、立体的で没入感のあるインターフェイスにインスパイアされたとも言われています。平面なiPhoneのディスプレイにコンテンツと操作ボタンなど複数のレイヤー(層)を重ねて描き分け、視覚的な立体感と奥行き感を表現しているところが大きな特徴です。

↑Apple Vision ProのvisonOSが先行採用した立体的なユーザーインターフェースのコンセプトがLiquid Glassにも活きています。

 

アップルのLiquid Glassは、まるで光を映し込んだガラス、あるいは水滴のような表現をデジタルキャンパスの中に描く「デジタルメタ素材」のようです。ユーザーが画面をスクロールすると、操作に合わせて“Liquid Glassの素材”でつくられたホーム画面のアプリアイコンやフォルダが光を帯びて反応します。透過表示の部分が背景の壁紙の色や輪郭に重なると、色が滲んだりカタチが屈曲するエフェクトがずっと見ていても飽きません。

↑アップルは新しいデザインを採用するユーザーインターフェースの中に、Liquid Glassをデジタル世界のマテリアルとして作り上げて、各所のコントロールボタンに採用しました。

 

iPhoneなどデバイスの画面を操作する時に、Liquid Glass世代のOS以降は移り変わる光の表現、ガラスや水滴のような素材感が動的に伝わる感覚が得られます。例えばブラウザーアプリの画面をスクロールすると、アドレスバーの裏側に焦点をぼかしたページのテキストや写真が半透過表示になります。

 

一方で、筆者はいまのフラットデザインも好きだし、何事も新しいものに慣れるまで時間がかかるタイプです。Liquid GlassのOSに本格的に切り替えるべき時が来ることに、少しの寂しさも感じています。

↑ページをスクロールしたり、コントロールボタンを動かすと光が屈折して、色があわく滲む効果などが楽しめます。

 

新しいデザインが次世代のAppleデバイスにもたらすもの

Liquid Glassデザインは、ユーザーインターフェースとコンテンツの複雑なレイヤーが奥行き方向にも広がっていくのが特徴です。したがって、iPhoneなどのデバイスが搭載するディスプレイには高い解像度とダイナミックレンジの再現力が求められるようになります。

 

スマホに4Kディスプレイを搭載するトレンドは、ソニーのXperia 1シリーズが解像度FHD+のディスプレイを採用した頃にもう落ち着いてしまったように筆者は思っています。しかし、もしかすると「ベゼルレスデザイン」のようにディスプレイ周囲の縁をさらに狭くして、没入感を高める方向性の進化はあり得るかもしれません。よりベゼルレスに迫るデザインになったiPhoneのディスプレイを水面のように見立てて、透過表示のウィジェットやアプリアイコンが浮かぶ美しい様子をぜひ楽しみたいものです。

↑iOS 26ではクリアモードのアイコンに色を付けてカスタマイゼーションが楽しめるようになります。色の鮮やかさ、透明感、輝きを存分に表現できるディスプレイの性能が求められます。

 

また、今回のLiquid GlassデザインはiPhoneのiOSだけでなく、ほかのmacOSにiPadOS、watchOS、visionOS、tvOSにも広く同時に起きる革新であることにも注目するべきです。視覚的な一貫性、ユーザー体験の共通性を意識しながら、次世代のOSアップデートは秋以降から正式に実行されます。iPhoneに慣れ親しんできたユーザーは、これまで以上にiPad、Mac、そしてApple Watchへと使うデバイスをスイッチした時の違和感がなく、自然で直感的な操作体験が得られるでしょう。Appleデバイスがより有機的に連携する感覚は、Liquid Glassデザインのインパクトだけでなく、これまでにアップルが構築してきた様々なデバイス連携のための機能と、AirDropに代表される便利な機能によってもさらに強く感じられると思います。

 

今年のWWDCで、アップルは新しいハードウェアを発表していません。もしかすると、例年9月上旬に実施されるiPhoneの発表会で、Liquid GlassデザインのOSを載せたハードウェアを一気に発表するのではないかと筆者は予想しています。iPhoneシリーズにiPadの入門機、Apple Watchシリーズとプラスα(Apple TV 4Kか、筐体にガラスをふんだん使ったMac Proが爆誕?)といったところでしょうか。

 

ウワサされているiPhone 17 Airのような、iPhoneにとっても新規カテゴリになるようなプロダクトがあるのだとすれば、それはLiquid Glassデザインの幕開けを象徴する斬新なデザインを纏っているのかもしれません。

↑Liquid Glassデザインを採用する次世代のAppleデバイスにどんな面白い製品が誕生するのか楽しみです。

 

ともあれ、アップルはLiquid Glassデザインについて、それが表層的な要素ではなく、次世代のハードウェアとソフトウェアのあり方を規定する重要な基盤に位置付けています。同時にApple Intelligenceの革新も力強く前に進めながら、ユーザーと一体になって知的に反応する、まったく新しいデバイスがLiquid Glassの時代に生まれることも期待しつつ、秋のiOS 26ほか新OSの正式リリースを楽しみに待ちましょう。