Vol.151-2
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はGoogleが公開したAIを活用したスマートグラス「Android XR」の話題。これまでのスマートグラスと異なる点と新たな可能性を探る。
今月の注目アイテム
AI活用型スマートグラス
価格未定

Googleは、XR関連プラットフォーム「Android XR」の立ち上げを進めている。
実のところ、当初この動きは関連業界からは冷ややかに見られていた部分がある。GoogleはXR関連・スマートグラス関連で複数のプロジェクトを展開しつつ、止めてきた経緯があるからだ。
一番有名なのは「Google Glass」だろう。スマホからの情報を目の前に表示する「情報系スマートグラス」の先駆けであり、2012年に発表され、大きな話題となった。テスト版が1500ドルで発売されて製品化が近いと言われていたが、実際には技術的な課題やプライバシー上の課題、用途の開拓などで苦戦。2017年には業務用デバイスに舵を切り直すもうまくいかず、2023年に販売も終了している。
ダンボール製の簡易VRビューワーである「Google Cardboard」は2014年にスタートしたものの2021年に販売を終了、Cardboardよりも本格的なVR機器として企画された「Google Daydream」(2016年発表)は、2019年には早々に販売を終了した。他にも、空間を3DでキャプチャするAR技術である「Project Tango」(2014年発表)も、2018年にサポートを終了している。
ビジネスがうまくいかなかった、といえばそれだけの話ではあるのだが、Metaは2014年にOculusを買収以降、10年以上に渡ってXR関連技術の開発を進めている。それに比べると“堪え性がない”と見られてもしょうがない。
とはいえ、これまでのプロジェクトに比べるとAndroid XRはかなり規模が大きく、打ち出し方も目立つ。Googleが将来を見据えた大きなプロジェクトとしてスタートしている。
だが筆者が知る限り、Android XRというプロジェクト自身も、幾度かの変更を経つつ、時間をかけて現在の形へと生まれ変わっている。
3年以上前から、GoogleはXR機器を作る計画を持っていた。ここでの主なライバルはMetaだ。Meta Questシリーズのライバルとなる機器を、サムスンをパートナーに開発していた。これは本来、2023年には発売される予定だったと聞いている。
そこからさらに、より本格的なハイエンド製品へと方向転換したようだ。少なくとも2023年のうちにお披露目するという計画は変更され、2024年をターゲットに、より高画質なデバイスを目指して変更が行われた。ターゲットはApple Vision Proだ。OSの構造自体には大きな変更はないが、画質や操作感をよりブラッシュアップした製品の姿が見えてくる。これが、本年末までに海外で発売を予定している「Project Moohan」となる。
そしてさらに、スマートグラスの盛り上がりと生成AIの急速な進化をベースに、同じOSやソフトウェア・コンポーネントを使いつつ“スマートグラスまでを想定したプラットフォーム”として準備されたのが、現在のAndroid XR……ということになる。
ではどんな製品になりそうなのか? その点は次回のウェブ版で解説する。
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