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2017/4/1 10:00

知る人ぞ知る名所! 沖縄本島・南部の史跡をつなぐ道「グスクロード」の魅力とは?

沖縄といえば綺麗な海や自然で有名ですが、一方で歴史的な遺産も充実しています。今回は、歴史ライターの山上至人さんに沖縄を代表する歴史遺産・グスクを中心に紹介していただきました。もう一か月ちょっとに迫ったGW、沖縄に行く機会があればぜひ行ってみてはいかがでしょうか。

※本記事は航空会社・バニラエアの機内誌「バニラプレス 2017年4-6月号(創刊号)」に掲載された内容の完全版となります

 

 

かつて琉球と呼ばれた沖縄。1879年に日本に併合されるまで独立国として独自の歴史を歩み、日本とも中国とも違う独特の文化を育くみました。

 

1429年に成立した琉球王国は最盛期には、奄美諸島から台湾に隣接する先島諸島にかけての広大な海域を支配し、中国や東南アジアとの貿易で栄えました。その琉球王国が成立するより前、沖縄には北山・中山・南山の3つの王国が対立し互いに覇権を争っています。この時代、王や按司(アジ)とよばれる領主たちが住んだ城がグスクです。

 

 

壮大な石垣が目をひく、グスク。5つのグスク跡は世界遺産に

中世の日本の、土塁や空堀からなる土の城とは異なり、グスクの城壁は壮麗な石垣造り。珊瑚礁からできた琉球石灰岩が積み重ねられた壁が描く優美な曲線は、見るものをひきつけます。一見、粗っぽい積み方ですが高度な技術が用いられているのです。

 

南西諸島全体では大小200以上ものグスクが発見・確認されており、2000年には5つのグスク跡と4つの関連史跡が世界遺産に登録されました。

 

琉球王国の宮殿・首里城(那覇市)、北山王の居城として築かれた大規模グスク・今帰仁(なきじん)城(名護市)、西洋の古城か近代の要塞を思わせる座喜味(ざきみ)城(中頭郡読谷村)、幕末、ペリーが日本へ来航する前に訪れた中城(なかぐすく)城(中頭郡北中頭村・中頭村)、琉球王府にその力を警戒されて滅ぼされた英雄・阿麻和利の居城・勝連城(うるま市)など、いずれも沖縄のグスクを代表するものばかりで見ごたえ十分。

 

 

空港からも近い南部の城跡巡りもおすすめ

世界遺産に登録されているグスクは、首里城以外はどれも那覇から離れた中部・北部にあります。そのため、1日でいくつもの史跡を巡るのは、なかなか難しいです。そこで那覇市や那覇空港からも遠くなく、観光客にもあまり知られていない本島南部のグスク巡りはいかがでしょうか。

 

南山王国時代の史跡が残る本島南部。特に東岸の南城市や知念半島周辺には斎場御嶽(せーふぁうたき)、知念グスクなど多くの史跡が集中しています。

 

そして、「グスクロード」と呼ばれる道沿いには、わずか4キロほどの間に4つのグスクが密集しています。少々、場所がわかりにくいのが難点ですが、静かな雰囲気で上級者のグスク巡りが一気に楽しめるのです。

 

まずは南山随一の規模を誇る糸数グスク。案内に従って南国特有の植物に覆われた林道を進むと、万里の長城を彷彿させる見事な登り石垣が忽然と現れます。切り石積みの正門はまるで古代の神殿を思わせる荘厳さ。

 

糸数グスクからグスクロードを南東に少し進み、高台にさしかかった地点の、さらに小高い丘の上に見えるのが玉城(たまぐすく)グスク。琉球の創世神・アマミキヨが築いたとの伝承が残る、沖縄でも最古のグスクのひとつです。

 

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↑壁面が描く曲線が美しい、糸数グスク

 

石段を登っていくと、岩盤をくり抜いて造ったアーチ門、本丸門に着きます。門は東北東の方角に開いていますが、これは夏至の日、昇る太陽の光がまっすぐ差し込んでくるように造られているため。グスクは城主を霊的に守るパワースポットでもあったわけです。

 

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↑岩盤をくり抜いて造られた、玉城グスクのアーチ門

 

 

城内に入ると、木々が生い茂った一角に神を祭る小さな祠が目につきます。アマミキヨによって作られた7つの聖地「琉球開闢七御嶽(りゅうきゅうかいびゃくななうたき)」のひとつ、「天つぎあまつぎの御嶽」です。

 

御嶽とは神々や祖先への祈りの場のことで、グスクには必ずといってよいほどあります。グスクには「城」の字をあてますが、元々は地域の聖域に築かれた祭祀の施設だったといいます。 今なお地域の人々の信仰のよりどころであり、訪れる際には荒らしたり、騒いだりなどしないように心掛けたいです。

 

コバルトブルーの水平線を望みながら、沖縄の歴史と信仰の世界に触れられるのがグスク巡りの醍醐味。一度ならずとも何度も訪れたくなります。

 

(文/山上至人 …編集者・歴史ライター。『雑誌 歴史群像』(学研プラス)では戦国・城郭記事の編集を担当)

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