日々の業務にかかせない文房具。そのなかでもペン類に次いで使用頻度が高いものといえば「ふせん」ではないでしょうか? ちょっとしたメモや目印、伝言など、その用途は実に多彩。決して派手ではありませんが、オフィスの誰もが使う必須アイテムです。今回はそんな“当たり前”の存在であるふせんの最新事情をご紹介! 驚きのユニークアイテムを教えてくれるのは、3000以上の文具コレクションに囲まれて暮らしているという文具ライター・きだて たく さんです。
[その1 ありそうでなかった個性派ふせん]
ふせんが「立つ」? しっかり書けて紛失が激減する「SUTTO」のスゴさ
会社でふせんを資料に貼ろうとした時、机の上に無いし、引き出しの中にも見つからない。で、結局、しばらく経った頃にペン立ての中から粘着面にほこりがべったり付いた状態で出てきたりする。そんな経験はないだろうか?
「大掃除で机を動かしたら隙間から出てくる文房具10年連続ナンバーワン」というありがたくない称号も持っているぐらいだ。会社だろうと自宅の机だろうと、基本的にふせんは無くなるもの、と考えておいた方が良い。
例えばボールペンならペン立て、ホッチキスは机の引き出し、などモノにはそれぞれ“いつもの場所”というものがある。で、使ったあとはそのままいつもの定位置に戻せば紛失騒ぎは起こらない。カンタンな理屈である。
ところが、ふせんはなぜかそれができずに常に見失ってしまう。なぜか?
①いま使うために剥がした方に意識がいくため、元のふせんの存在を忘れがち。
②サイズが小さく、定位置が決めにくい。
③消耗品という意識が強いためか、扱いが雑。
この3つがポイントになっているような気がする。
そこで使ってみて欲しいのが、カンミ堂の設置型フィルムふせん「SUTTO」だ。
ロールふせんとボードがセットになっており、折りたたみスタンドで自立する特殊な形をしている。
このロールふせんは12㎜ごとにミシン目が入っており、好きなところでカットして使う(1ロールで12×42㎜×70枚分)。通常のふせんのように細長く切ってもいいし、たっぷりコメントを書き込むときは幅広に使ってもいい。
ボードに貼り付けた状態で書き込みをしたら、ロールから必要なだけ引っ張り出してカット……というのが、基本的な使い方だ。
で、この「スタンドで自立する」というところで、まず問題の①元のふせんの存在を忘れる、というのが解消できるのだ。
ふせんそのものが立つので、ポイと適当に置いても非常に目立つ。これなら使った後の片付け忘れがかなり防げるはずだ。また、通常のふせんのように、いつの間にか机と壁の隙間に転げ落ちている、といったトラブルも減るだろう。
というか、そもそもSUTTOは片付ける必要があまり無い。引き出しに入れたりペントレーに収めたりせず、机の上に立てておけばそれでいいのだ。
サイズも程良いので、立てておいても邪魔にならない場所……PCのモニター横とか、ペン立ての脇といったところに置ければ、使う時に見失うこともないだろう。これで②の定位置決まらない問題もクリアだ。
さらに、消耗品だから扱いが雑になりがちという問題③も大丈夫。消費したロールふせんは補充できるので、使い捨てにしなくて良いのだ。
また、ボード自体は裏に滑り止めシートが貼ってあり、それなりにキチンとした製品感がある。これならサクサク使い捨てにしようという気にはならないだろう。
ちなみに交換用のロールふせんは、同じくカンミ堂のペン型ふせん「PENtONE(ペントネ)」と同型。ストックしてあるロールふせんが、ふで箱用として使えるPENtONEと、卓上で使えるSUTTOの両者で共有できるのがありがたい。
ここまでは「紛失しない」点ばかり述べてきたが、実際に使ってみると、それ以外にもいろいろと便利なポイントがある。
まず、ボードが非常によくできている。裏面の滑り止めに加えて、ふせんを貼り付ける面はしっとりしたデスクマットのような素材で、ペン先をうまく受け止めてくれるのだ。おかげで、ボードを手に直接持って書いても、しっかりと筆圧をかけて筆記ができるようになっている。
また、立てて置けることで、ふせんをToDoリストやスケジューラーとして使うこともできる。朝に一日の予定を書き込んだら、用件が終わる度に引き出す。外出する時は、予定を切り取って手帳のスケジュール欄に貼って持ち出せばOK。
というか、いちいち手帳に貼らなくても、スタンドの部分をフック代わりにしてベルトから直接吊り下げて持ち歩くという荒技もありだ。
設置型のふせんを持ち歩くというのもどうかと思うが、他にもアイデア次第で面白く使えそうな気がしている。じっくり使い込んでみるとおもしろそうだ。
[その2 若い世代で大流行? 新たなふせんの使い方]
「付箋ノート」が流行中! ついには「付箋ノート専用ふせん」まで登場
いま、中学生・高校生にふせんがバカ売れしているという。中高生というのは、元からふせんを使う頻度が高いものだが、それでも学校近くの文房具店などでは、ここ数年目に見えて売れているとのこと。なぜかというと、学生の間でふせんを使った勉強法……「付箋ノート」が流行っているからである。
■ふせんに情報を書き込んで貼る「付箋ノート」術とは?
この「付箋ノート」勉強法における大事なポイントはひとつ。「ノートに書かず、ふせんに書いて貼る」ということだ。ノートはあくまでもふせんの台紙であり、勉強の内容は全部ふせんに書き込むのだ。では、なぜノートではなく直接ふせんに書くのか。理由はいくつかある。
その1)ふせんはノートより小さい
つまり、1つのパラグラフを小さい面積に収めて書くには、要点をきっちりまとめる必要がある。「板書した内容を整理してふせんに書いて貼る」を繰り返すことで理解度が高まるのだ。
その2)ふせんは貼って剥がせる
情報の追加があった場合、ふせんであれば貼り替えや貼る場所の移動でいくらでも対応できる。また、間違いがあったら剥がして新しく書き直したものを貼ればいい。デジタルっぽく編集できるのもふせんノートの強みだ。また、英単語をふせんに書き出して、憶えられなかったものは別のページにまとめて貼り直して再勉強、なんて使い方もある。
その3)ふせんは色がきれい
1色のペンで書いたノートは、後から見返す時に「どこまで読んだか」が分からなくなりがち。パラグラフごとに色を変えるなどしたカラフルな付箋ノートは、そういった目のすべりも防いでくれる。
■付箋ノートを作るための文房具まで登場!
「そんなにいいなら、ちょっと試してみるか」と思った方。いまから始めるなら、オススメの文房具がある。ふせんノート専用のふせん「付箋ノートが作りやすいふせん」と、専用ノート「付箋ノートが作りやすいルーズリーフ」だ。
製品名以上でも以下でもない、ド直球きわまりないふせんとルーズリーフである。まず、ふせんの方だが、一般的なふせんとどこが違うのか?
並べてみると一目瞭然で、サイズがちょっと小さくなっている。数値でいうと、正方形タイプで70×70mm。一般的なふせんが75×75mmなので、天地左右それぞれ5㎜小さいということだ。これをそれぞれA罫(罫線幅7㎜)のノートに貼ってみるとこんな感じ。
付箋ノートが作りやすいふせんが罫線の間にぴったり収まるのに対し、一般的なふせんははみ出してしまう。対して、専用ふせんはサイズがすべて7の倍数でできているので、どう貼っても罫線にぴったり合うのだ。
もちろん、長方形ふせんのサイズも70×14mm、70×28㎜と7の倍数で揃えられているので、罫線をガイドにして貼ればぴったり。実のところ機能としてはこれだけで、サイズ以外は普通にふせんである。ただ、このサイズ的なピッタリ感が思った以上にノートの紙面をスッキリさせてくれるのだ。
一方の付箋ノートが作りやすいルーズリーフも、もちろん基本的には普通のB5サイズA罫リーフだが、罫線にちょっとした工夫がされている。まず、罫線の端にガイド線が入っており、ここにふせんのカドをあわせることで、曲がらずまっすぐ貼ることができるのだ。
さらには、左右にも70mm幅をきれいに2列揃えるためのガイドが入っているので、縦方向にも見た目がズレなく、整ったノートになる。ふせんノートは、一度貼ったふせんを貼り直したり移動させているうちに貼り位置がずれて見た目が汚くなってしまいがちだが、このルーズリーフのガイドがあればその心配もない。
ふせんノートは見た目のスッキリさが重要なだけに、キレイが続く専用ふせん&専用ノートの組み合わせは、それだけで「勝ち」なのだ。
こんな感じで、学生さんの勉強法としてブームとなっている付箋ノートだが、もちろん社会人のノートに転用してもメリットはある。資格試験の勉強はもとより、プロジェクトの進捗をふせんで管理したり、会議の議事録をふせんに書いて編集したりと、使い道は多いだろう。
[その3 ふせん・・・のように使えるアイデア品]
“デカいふせん”的に使える! 変幻自在の「バタフライボード」はユルく使ってこそ面白い
一昨年、クラウドファンディングにおいて、目標金額30万円に対して853%の256万円を集め、みごとに製品化を達成した文房具がある。どこでも使えて持ち運べる展開型ホワイトボード「バタフライボード」(実売価格3780円)だ。正確にはふせん、とはいえないかもしれないが、ふせん的な使い方ができるということでここで紹介したい。
■接合部が小さいため書くときに邪魔にならない
透明のケースから取り出したバタフライボードは、A4サイズが4枚(8ページ)で一体となったノート型のホワイトボード。クラウドファンディングが成立した時は無地のみだったが、昨年の3月に薄色の5㎜方眼も発売された。
ボード同士はマグネットでくっついているので、少し力をいれて引っ張ってやると、パカリとはずれる。この接合部がマグネットというのがミソで、まず、見開きA3にした時に中心に邪魔なものがない。
すでにリングノート状のホワイトボードは市販されているが、見開きにすると当たり前の話だが中央にリングがくる。これはやはり見づらいし、描きづらい。対してバタフライボードは2箇所のマグネット部があるだけで、見た目にはほぼフラットなA3ボードとして使えるのだ。
この見開きA3を2枚並べると、最大でA2のボードとして使えるということになる。また、ノート状態のままでも、ページを引っ張り外して別のページの後ろに持ってくる、といったページ順変更が簡単にできるのも面白い。
■ビジネス用よりもベタに使ったほうが面白い?
さて、このバタフライボードの使い道だが、メーカーは「アイデア誘発ツール」として提案している。個人で使う時は「描いて消しできるアイデアスケッチノート」として、大人数になると「大きく広げてミーティング用のホワイトボード」として使おう、ということのようだ。
ただ、筆者個人の感覚でいうと、そういう意識高い系のビジネスツールとしてよりも、以下のようにもう少しベタに使った方が面白いような気がするのだ。
①マグネットで貼り付くボードふせんとして
4枚綴りだからといって、それをまとめて一度に使う必要はない。むしろバラして使った方が便利な場合もあるだろう。本品には小さくても強力なネオジム磁石が内蔵されているので、これにメッセージを書いてスチールラックやパーテーションにパチッと貼り付ければ、大判のふせんのように使うことができる。
使い終わったら、はがして4枚セットに元通り。何度でも書き直せて貼り直せるので、気軽に使い倒せるはずだ。家庭でも、なにか伝えたいことがある場合は、冷蔵庫や玄関ドアに貼ればメッセージボードになる。
②立体のメッセージボードとして
広げたり折り返したりが自在な機能を活かして、バタフライボードを文字通り立体的に使うのも面白い。例えば、ノート状態から真ん中を折り返して三角に立てると、メッセージボードとしての表示性がぐっと上がる。
用途としてはいささか趣味性が高くなるが、フリマに参加するときなどは、プライス表示板として本品を使うとなかなか便利だろう。もちろん、コミケなどのオタクイベントにも相性は抜群である。
めくったり入れ替えたりも自由なので、「休憩中」や「すぐ戻ります」などメッセージを複数用意しておくのもいいし、急な価格変更にも対応しやすい。また、見開いてA3にしてもしっかり自立するので、大きくドーンと表示したいメッセージを書いてもいい。
使い方はいろいろと考えられるが、こういう面白いアイテムは「ビジネスに活用して仕事の能率を上げよう」とか、意気込んで使うと、使いこなしきれず息切れすることもある。適当に使って、ついでに便利だったらもうけもん、ぐらいの感覚で遊んでみた方が楽しいのではないだろうか。
以上、いっぷう変わったアイデア文房具でした。これらはユニークなだけでなくとっても実用的! 仕事場に取り入れるだけでデスクワークが少し楽しくなるかもしれません。
文・撮影/きだて たく
[Profile]
きだて たく
1973年京都生まれ、東京都内在住。フリーライター/デザイナー。 小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の子がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文房具を持ち込んで自慢すればいい」という結論に辿り着き、そのまま数十年、何一つ変わることなく現在に至る。自称世界一の色物文具コレクション(3000点以上)に囲まれながらニヤニヤと笑って暮らす日々。ウェブサイト「デイリーポータルZ」では火曜担当ライターとして活躍中。
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