「ビル・マーレイ・クリスマス」 Netflixで配信中(2015/12/4~)
アンチクリスマス派でも思わず見入ってしまう
猛吹雪のせいで全ての交通手段がダウンしてしまったクリスマスイブの夜。スペシャルショーがあるというのに、招待したセレブ達が誰も来られない! テレビの生中継もあるっていうのに……どうする!? ビル・マーレイ!
ソフィア・コッポラ(監督・脚本)&ビル・マーレイ(主演・脚本)というと、そう「ロスト・イン・トランスレーション」のコンビ。これは当たりの匂いしかしないでしょう!
最高の夜になるはずだったのに、猛吹雪に加え、イライラ度MAXな現場、番組のためならヤラセまでやりかねないスタッフ、停電、プライドだけ高いバカなプロデューサー! 別れそうなカップル!……ああ、もう !!
果たしてジョージ・クルーニーやポール・マッカートニー、教皇フランシスコ(笑)などのスペシャルゲストたちは会場にたどり着けるのでしょうか!?
ニューヨークの老舗ホテルを舞台に繰り広げられる一夜のドラマは、まるでビリー・ワイルダー作品(”一番面白かった頃の三谷幸喜作品”と言った方がわかりやすいかも)を見ているような上質さで、私(バブル期、恋愛市場主義に洗脳された”黒歴史”を抱えている中年女子)のようなアンチクリスマス派でも思わず見入ってしまうほどです。悔しいけど(笑)。ビル・マーレイが自らに扮し、ジョークを飛ばしたり歌ったり、小粋な雰囲気を醸し出しているのもとてもいい感じ。
ビル・マーレイは日本でいうとビートたけし!?
ビルは伝説のコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」などで活躍した元コメディアンで、味わいのある俳優として活躍するほか、映画監督を務めるなど多彩な才能の持ち主なのですが、変なコスプレをしてテレビに出演するなど、日本でいえばビートたけしとの符合が多い感じです。だた、レディ・ガガと友だちだったり、フラッと一般人のパーティに参加したり(その後の皿洗いも手伝ったり!)というプライベートでもキュートっぷりを炸裂させて、若者に大人気なところなどはメジャーなのにカルトっぽいタモリに近いのかも。
なぜかアメリカではマーレイとクリスマスは一体化していて、彼の顔とクリスマスモチーフをあしらったセーターやカードが売られているほど(「ゴーストバスターズ2」や「3人のゴースト」がクリスマスものだったからでしょうか)。なので、この企画はなるべくしてなった企画という事なのですね。
オシャレ番長・ソフィア・コッポラらしい作品
本編に話を戻すと、この「ビル・マーレイ・クリスマス」はかつてのアメリカでは定番だった、テレビの年末バラエティショーにオマージュを捧げているそうで、「ハンナ・モンタナ」や「セックス・アンド・ザ・シティ2」のマイリー・サイラスがミニのサンタドレスで(露出度が高いのにチャーミングで、エロくないのがポイント!)歌い踊るショーのシーンもクラシカルで華やか、まるで50年代黄金期のMGMミュージカルのようでうっとりです。
ブラックミュージックを取り入れたり、フランスの人気バンドPhoenixが登場したりと(ちなみに劇中でマーレイと歌っている「Alone On Christmas Day」はザ・ビーチボーイズ未発表曲のカバーだとか)、カビ臭くないのはさすがオシャレ番長・ソフィアですね。
「あー、クリスマスってやっぱ楽しいかも」とヒネたオトナ心も改心させられる1本です。
ソフィア・コッポラとビル・マーレイファンはもちろん、往年のグランドミュージカルや東宝「無責任シリーズ」(植木等主演)が好きな人にもおススメ。56分とちょうどいい短さなのも年末ボケの頭にはうれしい限り。クリスマスの新しいマスターピースになりそうな1本です。
監督・脚本:ソフィア・コッポラ
共同脚本:ビル・マーレイ、ミッチ・グレイザー
出演:
ビル・マーレイ
ジョージ・クルーニー
マイリー・サイラス
ポール・シェイファー
エイミー・ポーラー
ジュリー・ホワイト
ディミトリ・ディミトロフ
マイケル・セラ
クリス・ロック
デヴィッド・ヨハンセン
マーヤ・ルドルフ
ジェイソン・シュワルツマン
ジェニー・ルイス
Phoenix
フレデリック・ムーラン
ラシダ・ジョーンズ
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文/上杉久代:イラストレーターなどとして活躍。最近の日本エンタメ界には山城新伍成分が足りないのではないかと危機感を抱いている中年女子。