視力の低下や失明は、決して他人事ではありません。突然の事故や病気、老化などでも起こりうるので、「自分は関係ない」と言い切れないものです。
いまは医療技術の発展によって、レーシック以外にも視力回復の道はありますが、科学技術も視力をサポートしてくれる時代になりました。なんと、失われた視覚を補ってくれるような視覚支援ツールが次々と開発されているのです。
本稿では、驚きの最新技術を駆使してつくられた画期的なツールを紹介。どんなテクノロジーがあるのか、見ていきましょう!
【その1】有機ELが視野の欠損を補ってくれるゴーグル「eSight」
最初にご紹介する視覚支援ツールは、カナダのeSight社の「eSight」。高解析のカメラが内蔵されており、ゴーグルの内側の有機ELスクリーンに見たものが映し出されます。投影される映像を調整し、視力や視野の欠けた部分を補う働きをしてくれる最先端のウェアラブルデバイスです。
手元を見るとき、テレビを見るとき、そして遠くの景色を見るときなど、シーンに応じて焦点を合わせることができるうえ、24倍まで映像を拡大したり、コントラストや色彩を簡単にコントロールできる仕様になっているとのこと。
実際に使った目の不自由なユーザーからは、「eSightのおかげで勉強習慣が変わり、大学に合格することができた」「もう治療法がないと何度も宣告されていたが、eSightを使って暗がりで月が見えたとき、感動で息をのんだ」といった体験談が寄せられています。
「eSight」の公式サイトに正確な値段を掲載していませんが、American Federation for the Blind(米国盲人連盟)には1万5000ドルと書かれています。日本円にして、約165万円。いずれ、このようなゴーグルが日本で導入される日も来るのではないでしょうか。
【その2】人工網膜から情報を脳に伝達するサングラス「The Argus(R) II」
続いて、アメリカの医療機器メーカーであるセカンド・サイト社が開発し、FDAの認可を得たのがインプラント式の人工網膜「The Argus(R) II」。
「The Argus(R)II」を利用するためには、まず人工網膜を目に移植。そして、専用のサングラスから取り込んだ景色を腰に装着した装置に送信します。その装置から網膜内にわずかに残された神経細胞に信号を送り、視神経を通じて脳に情報を伝達できるようになる、という仕組み。
日本でも研究が進んでおり、類似の技術の実用化が見込まれているようです。
【その3】小型化&実用化に向けて研究中のゴーグル「Oxford smart specs」
最後の「Oxford smart specs」は、オックスフォード大学の研究室が開発中のスマートゴーグル。視力がわずかでも残っていれば使用できる可能性があるといい、今後の実用化が期待されているとのこと。
ゴーグルの内側のレンズがスクリーンになっており、ゴーグルに内蔵されたカメラで撮影された映像が投影されます。画像はかなり荒いのですが、装着することで、目の前の人の表情や、物の輪郭がわかるようになる可能性も。
現在、汎用性を高めるため、低コスト化に向けての研究を進め、ゆくゆくは普通のメガネのように自然に装着できるような形状を目指すとのことです。
今回は、ゴーグルによって視覚を補ったり、視神経を通じて脳に信号を送ったりといった最新の視覚支援技術をご紹介しました。失った視覚をテクノロジーで補う時代がもう目前まで来ていることを予感させますね。