ネットニュースのなかには、時々「これ、ホント?」と突っ込みたくなるような怪しいニュースが混ざっていますよね。大げさなタイトルにつられてクリックしたら、全然違う内容だったり、怪しげな情報だったり。人は確かなニュースより、確からしいニュースに心を揺さぶらされ、「あのニュースにはあんな裏事情が!」なんて、誰かに伝えたくなるもの。
とはいえ、例えばFacebookのタイムラインにはそれらしく作り込まれた偽物、フェイクニュースが混ざっている可能性があります。
いま、色々な国でウソを巧みに織り交ぜたフェイクニュースが、読み手の思想をねじ曲げ、政治や人間関係の土台がグラグラと揺らぐという現象が問題視されています。しかし、これから目に入ってくるニュースの質が変わるかもしれません。Facebook社がフェイクニュース対策を打ち出し、大きな話題となっているのです!
フェイクニュースにだまされないための10のコツ
昨年、アメリカでドナルド・トランプ氏が正当な選挙を経て大統領になったことは、大きな衝撃を与えました。その際、フェイクニュースを黙認したことで投票者の選択に少なからず影響を与えたFacebook社の責任が問われることに。
そこで昨年12月、CEOのマーク・ザッカーバーク氏は、自身のFacebookページに「我々は、ニュース記事を書いたりシェアすることはないが、単なるニュース配信業者ではないことを認識している」と投稿し、フェイクニュース対策を講じることを表明していました。
今回、英国の総選挙を目前にして打ち出したのが、新聞でフェイクニュースの危険を読者に警告するキャンペーン「Together we can limit the spread of false news」(みんなでフェイクニュースの拡散を制限しよう!)です。
ユーザーを啓発するために、「フェイクニュースにだまされないための10のコツ」を発表し、新聞広告に掲載しています。
その内容は、
(1)見出しを疑う
(2)URLを確認する
(3)記事のソースをチェックする
(4)記事のフォーマットに不自然な点がないかチェックする
(5)写真を注意深く見る
(6)記事の日付をチェックする
(7)記事の根拠を確かめる
(8)記事質を精査するために他の記事もチェックしてみる
(9)ジョークである可能性を考える
(10)意図的にふざけているニュースなのかをチェックする
というもの。
つまり、目に入るすべての情報を、いったんかみくだいて信じるに値する情報かどうか吟味するひと手間が必要だというわけです。当たり前すぎる内容ではありますが、自分のふだんの行動に置き換えたとき、「しっかりと実践できているか」と問われるとなかなか難しいもの。情報リテラシーが未熟な青少年にも教えるべき内容ですよね。ただ、キャンペーンは主に新聞の誌上で行われており、新聞を読まずにインターネットだけで情報収集している層まで届くかどうか……。
海外の反応でよくわかる既存メディアへの不信感
今回のFacebook社のキャンペーンに対するユーザーの反響は様々。たとえば、「そんなこといったら、去年のEU離脱の選挙のときに政府が垂れ流したニュースだってフェイクだったよ!」「広告掲載されている新聞だってフェイクニュースをのせているじゃないか」「フランス選挙の前に3万のアカウントを停止したっていうし、本気だね」「Facebook社と取引のある会社が優遇されたりしないのか?」など。
既存のメディアや政府、Facebook社に皮肉めいたことを言いながら、それぞれの持論を展開しているようです。フェイクニュースがはびこる背景に広がる既存メディアへの不信感というのは、こうした反響からも透けて見えますね。
とはいえ、Facebook社が発表した10のコツは、インターネットでの情報取集での基本ともいえるもの。Facebook社としては、このようなキャンペーンは利益に直結しない仕事ですが、それだけフェイクニュースを深刻にとらえはじめた証とも言えそうです。
アメリカの名コラムニスト、ニコラス・G・カー氏は、インターネットが日常に溶け込み始めた2005年のコラムで「アマチュアを尊び、プロに不信感を持つ」という風潮を察知し、警鐘を鳴らしていました。感情や危機感を揺さぶるようなニュースが多いなか、日本でもこのようなキャンペーンが少しずつ広がっていくことで、確かなニュースが確からしいニュースを駆逐する日が来るかもしれませんね。