いま、自動車はこれまでの約100年の歴史において、自動運転へ向かう最大の転換期に差し掛かっている。各自動車メーカーやサプライヤーがその実現へ向けた技術でしのぎを削るなか、自動車部品メーカーである東洋電装と群馬大学が、産学連携による自動運転に関する取り組みを開始したと発表。現時点での経過を報道陣に公開した。
産学連携の狙いとは?
群馬大学は、これまで2016年10月から群馬県桐生市において自動運転車の公道実証実験を開始。同年12月には同大学内に「次世代モビリティ社会実装研究センター」を設置し、公道実証実験などを介して関連企業、自治体などと社会実装を積極的に展開中だ。2017年度内には大学としては国内最大の、完全自律型自動運転に特化したオープンイノベーション型研究開発施設を整備する予定。
一方の東洋電装は、主に自動車の操作用スイッチや運転制御用のセンサーなどの開発を得意とするサプライヤーで、例えばホンダ車向けのコンビネーションスイッチ(ステアリングコラムから出ているウインカーやワイパーなどのスイッチユニット)はほぼすべてが東洋電装製となっているという。
同社開発本部部長の高畠成友さんは、群馬大桐生キャンパスで行った記者会見で「自動運転が実用化によって現在の自社製品が不要となる可能性もある。自動運転車にとって必要な製品は何か、その研究を進めていきたい」と群馬大学と行う共同研究の狙いを話した。
実験車両にはさまざまな機器を搭載
記者会見後、群馬大学が所有する自動運転車両へ体験試乗することができた。実験車両は2代目(NHW20)プリウスで、ルーフには全方位カメラやGPS、全方位レーザーなどが取り付けられ、トランクにはコンピュータ本体、ジャイロセンサー、100V電源インバータを搭載する。
一方、車内には自動運転のためのスイッチ類がダッシュボード上にあるのとモニター、キーボードが備えられていた程度。乗車している限り、特別なクルマであると意識することはほとんどない。人の代わりに車両を動かしている部分、例えばステアリングは、車両側の電動パワステを利用しているという。
一旦停止後の動きは見事! 課題はステアリングの切り方か
最初の区間はドライバーが運転していく。そして、途中からドライバーがステアリングから手を離す。万が一のために手をステアリングに添えているものの、標識や信号も読み取ってクルマは自動的に操舵し、加減速をしている。その動きは思ったよりもスムーズだ。その様子をまずは動画でご覧いただこう(注目は動画開始1分ごろからの運転!)。
特に感心したのが、見通しの悪い交差点から出るときで、一旦停止線で停まった後、左右の見通しの利くところまで少しずつクルマを出していく。その動きはまるで人間が左右の安全確認をしているかのようだ。ただ、交差点を曲がるときのステアリングの切り方はかなりカクカクとした印象を受ける。これには、ちょっとビックリ! 見ている方も大丈夫か? と手に汗握ってしまった。
その原因について、同乗した群馬大学 次世代モビリティ社会実装研究センター 副センター長の小木津 武樹さんによれば、「曲がっていくラインにクルマを乗せようと、細かく修正を加えながらステアリングを切っていくためカクカクしてしまう。今後は自動車関連メーカーとの技術も取り入れてよりスムーズな動きになるよう調整していきたい」と話した。
自動運転はその主導権獲得へ向けて世界中が走り始めている最先端の分野。それぞれの企業には得意/不得意の分野があり、研究機関である大学と連携するのはそれを解決していくのにも大きな役割を果たす。今回の連携が“チーム・ジャパン”として大きな貢献を果たすことを期待したい。