デジタル
2016/3/8 15:35

【西田宗千佳連載】ヘッドホンは完全なる“ワイヤレス”の時代へ

「週刊GetNavi」Vol.40-1

wgn40

米国ではワイヤレスのヘッドホンが主流

今年なにがヒットするかと聞かれたとき、挙げることにしているのが「Bluetoothヘッドホン」だ。ワイヤレスで音楽を聴けるヘッドホンは珍しいものではないが、本当に「定着しているか」というと、昨年までは首をかしげる状況だった。ハイレゾ対応機も含めた高級モデルの普及により、金額ベースでの市場規模は上がっているものの、売れるのは相変わらずケーブル接続タイプが多い。

 

ところが、アメリカでは状況が異なる。ソニーは今春より、新オーディオブランド「h・ear」を展開。欧州・日本では昨年秋に発売済みのものだが、最大のパイを持つアメリカでは4か月遅れての展開となる。

 

ではなぜ展開が遅れたのか? ソニーのオーディオ・ビデオ製品事業を担当するソニービデオ&サウンドプロダクツ社の高木社長は、次のように説明する。
「アメリカ市場はワイヤレスが主流。“ワイヤード”の商品だけで無理やり導入するのではなく、“ワイヤレス”の製品群が用意できるまで待ちました」

 

アメリカでいま一番売れているのは、Apple傘下のBeatsが販売する「Beats Studio Wireless」である。それに引きずられる形で、ほとんどの売れ筋商品がワイヤレスになり、逆にハイレゾは認知すら進んでいない。ほとんどの人が、スマホからBluetoothで音を飛ばし、ヘッドホンやスピーカーで聴く楽しみ方をしているわけだ。

 

日本でもヘッドホンは完全ワイヤレスの時代へ

日本でも、2015年以降に定額制のストリーミング・ミュージックサービスが増えた結果、いままで以上にスマホで音楽を聴く人が増えた。その結果として、スマホと一緒に使うと快適な「ワイヤレスのヘッドホン」に対するニーズが増えるだろう……と筆者は予測している。

 

そして、テクノロジー的にそれを後押しするだろうという観点で予測しているのが「完全ワイヤレスヘッドホン」の普及だ。現在、日本で売られているヘッドホンのほとんどは「ワイヤレス」と謳いつつ、ケーブルを排除しきれずにいる。右耳と左耳に音を伝えるために、双方をケーブルやバンドでつないでいるからだ。ただそれだけのことではあるが、本当の意味で「ケーブルから自由」にはなっていなかったのである。

 

だが、2015年末、いよいよ「完全ワイヤレスヘッドホン」が登場した。EARIN社の「EARIN」がそれだ。耳栓のように小さなイヤーピースの中に無線通信回路とバッテリーが入っていて、ケーブルがまったくない。筆者も愛用しているが、「これだけのことで、こんなに自由な感覚を得られるのか!」という驚きがある。

 

EARIN以外にも、海外ではいくつかの完全ワイヤレスヘッドホンが市場に登場しており、16年には大手も製品化するとの噂を耳にしている。過去のヘッドホンからは隔絶した快適さが知れ渡ることで、日本でのワイヤレスヘッドホン普及に拍車が掛かるかも知れない。

 

では、ワイヤレスヘッドホンに問題はないのか? 音質は向上するのか? そしてなぜ海外ではワイヤレスヘッドホンが素早く普及したのか? その辺はウェブ版で解説していこう。

 

 

週刊GetNavi、バックナンバーはこちら