以前、北海道に牧場の取材に行ったことがある。そのとき、牧場の敷地内に小さな足跡がたくさんあった。牧場の方に尋ねると、アライグマだという。
アライグマは厄介な動物
詳しく話を聞くと、その地域では野生化したアライグマが繁殖し、農作物を荒らしたりしているそうだ。生態系への影響も出ているため、年間200頭ほど捕獲しているが、それでも全然追いつかないという。
アライグマは動物園でしか見たことはあったが、どういう動物なのかあまり知らなかった。そこで調べてみたところ、かなり厄介な動物であることがわかった。
まず、気性が荒い。凶暴な性格の個体も多く、他の動物を襲ったりすることもあるようだ。そのため、生態系への影響が出ているのだろう。
また、アライグマ回虫、狂犬病など多数の病原菌を有している。アライグマ自体は菌に対する免疫力が高いので問題ないのだが、動物だけでなく人間にも感染する病原菌を持っているため、非常に危険なのだ。
その上繁殖力が高く、すぐに増えてしまう。運動神経が高いため捕まえるのも一苦労。見た目はかわいいが、アライグマがどれだけ厄介な動物なのかおわかりいただけると思う。
アライグマが食べ物を洗う理由
そんなアライグマだが、最大の特徴は食べ物を洗う仕草をすることだろう。名前の由来にもなっている。では、なぜアライグマは食べ物を洗うのだろうか? きれい好きなのだろうか?
実はそうではない。『なぜ?どうして?動物のお話』(今泉忠明・監修、こざきゆう・著/学研プラス・刊)に、その理由が書かれている。
もともとアライグマは、水辺に住む動物で、魚やザリガニなどをつかまえて食べます。
水辺でえものをねらい、前あしでおさえたり、引き上げるようすが、あらっているように見えるだけで、食べ物をきれいにしているわけではないのです。(『なぜ?どうして?動物のお話』より引用)
確かに、野生のアライグマが獲った獲物をわざわざ川で洗ってたら、逃してしまう可能性が高くなるのでそんなことをする必要はない。洗っているのではなく、獲物を獲るときの習性からあのような行動をしているのだ。
アライグマはクマでもタヌキでもない
ちなみに、アライグマは「クマ」という名前がついているがクマの仲間ではない。見た目はタヌキに似ているが、タヌキはイヌ科、アライグマはアライグマ科で全然別な種類だ。アライグマはどちらかというとネコに近い。
名前はクマなのにクマではなくて、タヌキに似ているが全然別な種類。そして食べ物を洗っているように見えて実は洗っているわけではないという、なんともややこしい動物、アライグマ。
もしどこかで野生のアライグマを見かけても、決して近づいたりしてはいけない。襲われるだけでなく、病気をもらってしまう可能性がある。アライグマは、動物園で見るのが一番安心安全なようだ。
(文:三浦一紀)
参考文献:「なぜ?どうして?動物のお話」
著者:今泉忠明(監修)こざきゆう(著)
出版社:学研プラス
「なぜ?どうして?科学のお話」の姉妹編。イヌ・ネコ・キリン・コアラ…動物たちのからだのびっくりや、おもしろい行動が楽しく読める。ほかに感動実話、動物を守る仕事のコラムなどもあり、知識だけでなく、動物たちを慈しむ心も育てる一冊。
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