たくさん汗をかいてもニオわせない“究極のデオドラント剤”と話題の花王「ビオレ/メンズビオレ 薬用デオドラントZ」。今年2月の発売以降、4か月間で販売数380万個(※)を突破するほど、売れ行きは好調だ。そのヒット要因について、デオドラントZのマーケティング担当者に話を聞いた。
※2017年2月13~6月11日 花王ビオレ・メンズビオレ累計出荷個数
制汗・デオドラント剤市場では最後発――だからこそ新しい技術発想が必要だった
ボレロの音楽に乗せて、飛び散る汗とともに踊る渡辺直美さん。そのキレキレなダンスと、「たくさん汗かいても、1日ずっとニオわせないZ」というコピーが、鮮烈な印象を残す「ビオレ 薬用デオドラントZ」のCM。そのインパクトは大きな反響を呼び、今年2月の発売以来わずか4か月間で、販売数380万個を突破した。この商品の誕生ストーリーとヒットの要因について、マーケティングに携わっている花王・スキンケア事業ユニットの大屋日向子さんはこう話す。
「日本ではスキンケア商品というと、洗顔料や保湿剤などの化粧品がまだまだ主流ですが、欧米など海外では、体臭や汗のニオイを防ぐデオドラント剤の売り上げが、大きな比率を占めています。『ビオレ』というブランドを今後グローバル化していく事業戦略的な部分から、デオドラント製品に着眼したというのも、企画開発に至った理由のひとつ。ただ、日本の制汗・デオドラント剤市場はすでに飽和状態で、後発組が同じような商品を出しても勝ち目は低い。そこで、日常的に制汗・デオドラント剤を使用している消費者の満足度調査を行ってみると、『自分は汗っかき』という意識が高い人ほど、従来の制汗・デオドラント剤に満足していないことがわかったんです。多くの従来品で用いられている制汗技術は、汗腺にフタをして汗を抑えるというもの。ところが、非常に多くの汗をかいた場合には限界がある。そこで、これまでとはまったく違うアプローチによる技術の研究をスタートさせたんです」
デオドラントZの大きな特徴は、汗を止めるのではなく、“かいた汗を瞬時に蒸発させる”というもの。しかも、製品に含まれる汗瞬間ドライパウダー(基剤)が肌に留まるから、たくさん汗をかいてもさらさらの状態をキープできるのだ。
「汗が出てくる生理現象を否定しないところも“肌にやさしい”を謳う『ビオレ』らしいですよね(笑)。そもそも汗自体は無臭。肌の上にいる菌が汗の中に含まれる成分を分解してニオイが発生するんです。成分は汗に溶けにくく、汗をかくと殺菌力が弱まってニオイにつながるという弱点がありました。そこで、汗に溶解できる『汗殺菌スタミナ技術』を開発。たくさん汗をかいてもニオイ菌への殺菌作用が続くので、長時間のニオイ抑制に成功しました。さらに、汗を吸収して蒸発させる新発想の技術を組み合わせたのがデオドラントZです。朝つけただけで1日中ニオわせないデオドラント商品ですが、実はこれもビオレならではの弱酸性なんですよ」(大屋さん)
渡辺直美さんが汗かき踊る! その斬新なビジュアル展開も挑戦だった
汗に罪はなし。そんなやさしさも感じられるデオドラントZだが、冒頭でも紹介した広告展開には、花王らしからぬ斬新さがあった。
「後発商品を出すには、インパクトも重要な要素。まじめなイメージを持たれてきた当社ですが、開発段階から、社内のキーワードとして『花王っぽくないものを』というのがありました。渡辺さんを起用した広告のビジュアル展開でも、その殻を打ち破れたと思います。渡辺さんの影響力は大きかったですね」(大屋さん)
ビオレ・メンズビオレいずれも同じ技術を取り入れているデオドラントZ。しかし異なる点もあり、男性に向けたメンズビオレはわき毛に絡まりにくく、肌までしっかり届く処方になっているのだ。男性の購買数は女性に比べてまだまだ少ないが、女性が自分用にビオレ、夫や息子用にメンズビオレを購入するケースも多いのだとか。スメルハラスメントという言葉も定着しているこの時代。男もデオドラント意識を強く持つべし!
取材・文/田所佐月
<製品情報>
「ビオレ/メンズビオレ 薬用デオドラントZ」
〔医薬部外品〕
ビオレ・メンズビオレともに、足の指先までまんべんなく塗り込めるエッセンスタイプと、手を汚さずムラなく塗れるロールオンタイプを用意。無香性のほかに、ビオレにはせっけんの香り、メンズビオレにはアクアシトラスの香りもある。