覗けば深い女のトンネルとは? 第36回「女性が占いと少女マンガに求めるもの」
みなさん、占いは好きですか? 一般的に男性よりも女性のほうが占い好きという印象がありますね。和久井は期間限定で好きです。とあるときだけめちゃくちゃハマります。……それは片想いをしているとき。
好きな人ができると、もうその人のことが知りたくて知りたくて、でも上手く話せないから、わからないことは占いで埋める! つまり、占いに頼る心理は、「わからないことをなくしたい」です。彼の気持ちがわからないから知りたい、将来どうなるかわからないから知りたい、ということ。
占いアプリの項目を見てると、めちゃくちゃ面白いです。【号泣必至!】とか【彼との最終結末】とか、なんとなく衝撃的そうなタイトルがズラズラ並んでます。泣くような未来が待ってるのか、結末って墓に入るときなのかとか、いろいろツッコミどころはありそうですが、とりあえず衝撃的な文句のほうがウケがよいようです。最近は「不倫者限定」とか「片想い限定」という占いもあって、条件を先に指定してくるので「そりゃ当たるだろうな」と思います。
占いアプリの便利なところは、自分の情報と、相性を占いたい相手の情報を登録できるところ。気になる彼との相性を、いろんな占いで試すことができます。で、いちばん心地いいことが書いてある占いを信じればいい。
しかも、相性を占いたい相手の情報を複数登録できるんです。AくんとBくんとCさんのうち、もっとも相性のいい人を選ぶとか、デートに誘うとかできるわけです。占いって一見夢見るトキメキガールな感じだけど、けっこう打算的です。
そしてどの占いを読んでも、たいてい悪いことは書いてありません。「彼はあなたのことが気になっていますが、恥ずかしがって口に出せないだけです。思い切ってこちらから声をかけて」とか「まだ意識はしていませんが、だんだんと気になってくるはずです。積極的に話しかけて」とか。そうやってポジティブ思考で能動的になれと促したら、たいていのことは上手くいくでしょうなあ。
とはいえ、わかっちゃいるけど、いいこと言われると気分がいいんですよね。それが占いの一番の効果なのではないでしょうか。
引き替え、対面の占いに行くといいこと言われないこともしばしばあります。以前行った台湾の占いでは「孤独に耐える人生です」とか言われるし、「彼との相性を占ってくださいッ」と言ったら占い師に「ホントに付き合ってるの?」とか聞かれるし。占い師にそんな不穏なこと言われたら心配になるじゃないか! 本人に確認しちゃったよ。やっぱり占いはいいこと言われてなんぼな気がしてます。
同じような効果をもたらしてくれるものがあります。それが少女マンガです。女性向けの、女性が描くストーリーなので、女が心底嫌悪するような展開はありません。例えば、いくえみ綾先生の描く男性はダメ男が多いけど、「でも許せちゃう」キュートなキャラです。こういう微妙なラインをついてくるんですよね、大作家って。
現実は、他人の気持ちは見えないし聞こえないからわからないけど、少女マンガではト書きに気持ちが書いてあるし、行動が明快なので、片想いのマンガでも「わからない」不安はないんです。王道パターンの場合も多いですから安心して読める。「ここは裏切られないだろう」という予測が立ちます。少年マンガで、主人公がどんどん前進して強くなって成長していく達成感や安心感と同じです。
占いも少女マンガも「わからない(気になる)ことがわかる」ことで、気持ちの安定を図ってくれるんですね。
恋の始まりで占いにハマる和久井ですが、相手ときちんと話し合いができて、疑問点がないときは占いに走りません。こういうときは、いい恋愛ができている証拠なんですよね。
最後に、とても印象深いマンガの話を。山岸凉子さんの「黒鳥」というバレエ漫画の一節です。
とある部族で予言者をしていたおじいさんは、侵略者に追われる日々を送っていた部族の人たちに「いつか救世主が来る」と言っていました。しかし救世主は来ず、おじいさんはみんなから迫害されてしまいます。そうして彼はこう言うのです。
「予言でいいことを言ってはいけなかった。それが現実になっても当たり前、逆に叶わなかったときには恨まれる。だから予言は悪いことを言うのがいい。悪いことが起これば予言が当たったことになり、起こらなければ予言者のおかげで避けられたことになるからだ」
和久井は、占いは一種の精神安定剤だと思っているので、テキトーにいいこと言ってくれるのが好きですが、なるほど、この考えは占いの神髄って感じです。