「週刊GetNavi」Vol.58-1
みなさんが使っているディスプレイの「縦横比」はどうなっているだろうか? 多くの人の場合、大半が「16:9」なのではないだろうか。この16:9という縦横比は、テレビがデジタル化して以降、もう15年近くにわたって定番であった。それ以降、気付いてみれば、PCも16:9もしくは16:10のディスプレイが基本になり、スマホでも、16:9のディスプレイを縦長に持って使うことが増えた。
しかし、その常識も、もうすぐテレビだけに残るものになるだろう。PCやスマホのディスプレイが、どんどん「16:9」から離れていっているからだ。
そもそも16:9が増えたのは、「横長」で映画館に近い表示がテレビで標準化されたためだ。DVD以降のコンテンツは16:9を基準に置いており、放送も16:9である。そのコンテンツが流用されることの多いPCやスマホでも、16 :9に近い縦横比の方が見やすく、製造面でも有利……とされてきた。
だが、である。
テレビ以外の機器で16:9に固執する意味は、あまりない。
文書作成作業の多いPCでは、より縦に多くの情報が表示できて、紙の書類の縦横比に近い4:3、もしくは3:2のほうが良い。電子書籍を読む機会の多いタブレットも、4:3に近いほうが使いやすい。そのため、AppleはiPadで一貫し4:3の画面比を採用し、マイクロソフトもSurfaceシリーズにて、4:3もしくは3:2の画面比を使っている。
ハイエンドスマホは18:9へ急速に移行中
スマホにおいては、大型画面のハイエンド機で「16:9」離れが加速している。サムスンの「Galaxy S8」シリーズは「18・5:9」を採用している。これは、画面サイズを大きくしつつ、本体の横幅を狭くし、持ちやすくするためである。
ジャパンディスプレイは経営方針説明会にて「ハイエンドスマートフォンのディスプレイは、急速に16:9から18:9に移行している」(同社・東入來信博社長)としており、サムスン以外のスマホも、ハイエンドでは16:9以外になる可能性が高い。本記事を執筆している8月半ば段階では噂に過ぎないが、次世代iPhoneも、ハイエンド機種にて18:9のディスプレイを採用する……と見られている。
様々な画面縦横比の製品が増えていく
結局、ディスプレイサイズが16:9に固定されているのは量産効果の関係が大きい。だが、PCやタブレット、スマホでも、差別化が重要なハイエンド製品から、「価格より使いやすさ」を考え、より適切なパネルサイズを選択する流れになっている。
ディスプレイパネルメーカーも「とにかく価格と量産性優先」だった時代は終わり、「付加価値があるものを適切な量産性で実現」するようになり、製品メーカー側の希望を汲み取ったパネル生産が重要になってきた。
結果的に、ディスプレイといえば16:9だった時代は終わり、バリエーション豊かな画面縦横比の製品が増えてきたのである。
では、どんな用途にどんなディスプレイが使われていくのか? 特にスマホ用はどんなトレンドになるのか? そのあたりは次回のVol.58-2以降で解説する。
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