東京・田端にあるユニバーサルシアター「シネマ・チュプキ・タバタ」が9月1日でオープン1周年を迎えました。これを記念して、メディア向けに「ガールズ&パンツァー 劇場版」特別上映会が開催されました。
ユニバーサルシアターとは、視覚や聴覚などの障がいを持つ方々も誰でも一緒に映画を楽しめる施設。上映される作品は、最新作のロードショウ作品ではなく、スクリーンサイズも通常の劇場ほど大きくはないですが、一般の映画館にはない魅力のある映画館となっています。海外ではすでに多く展開されているようですが、日本では「シネマ・チュプキ・タバタ」が初の劇場とのこと。
実際にどんな設備が備わっているかというと、各席にはイヤホン音声ガイド用のイヤホンジャックが用意されており、映画館の音響と同時に音声ガイドを聴けるようになっています。また、日本語の映画でも日本語の字幕が表示されていたり、車椅子用のスペースを用意していたりするほか、メインの劇場とは別に防音設備の整った親子鑑賞室なども設置。席数は15席で、ほかに車椅子スペースがあり、補助席を使用すると20名までが鑑賞できるようになっています。
こういった説明をしてしまうと、障がい者向け、もしくは専用の映画館として見られてしまうことも多いそうですが、障がいのない方でも楽しめる映画館になっています。
こだわりの音響が楽しめる「フォレストサウンド」
このシネマ・チュプキ・タバタには、もうひとつ特筆すべき魅力があります。それは“音響”です。小さな映画館なので、シネコンの大型劇場と比べてしまうと音響機材は見劣ってしまいますが、そのチューニングには「ガールズ&パンツァー」をはじめとする数多くのアニメ作品の音響監督を務めた岩浪美和監督が担当しています。その名も「フォレストサウンド」。7.4.1chの360度から音に包まれる感じはミニシアターのレベルを凌駕し、大型劇場に勝るとも劣らない迫力のサウンドを楽しめるようになっています。
今回の上映会でも、音響監督が自らチューニングを施した映画館で、その作品を見られるという贅沢な環境で映画を楽しむことができました。特に、使用機材のなかでは重低音を担当するウーファーでもっとも高価なものを使用しているということもあり、ガルパンの「センシャラウンド」(※)の良さが最大限に発揮されています。
※:作品中に登場する戦車の音をより迫力たっぷりに再現するためのサウンド
ガルパン以外でも作品ごとにチューニングをし直していたり、岩浪音響監督自ら機材のセッティングをしているなど、まさに制作者の意図がすべて反映している映画館になっています。
また、音声ガイドについてはシネマ・チュプキ・タバタでの上映を目的とした録り下ろしで、ガルパンの秋山優花里役を務めた中上育実さんが担当。視覚障がい者のためのガイド音声なのですが、障がいを持たない人であってもありがたいガイドになっています。
そもそもガルパンは登場人物が多く、前知識なしに初めて見ると混乱してしまいそうになります。また、作中で登場する戦車も、マニアでもない限りどれがどの車両かはわかりません。音声ガイドは、こういった人名や戦車名、地名などを解説しながら、物語の状況なども説明してくれます。実際にシネマ・チュプキ・タバタで同作品を一般公開したときには、まず初めに音声ガイド付きで視聴し、次にセンシャラウンドをより堪能するためにガイドなしで視聴したお客さんもいたとか。中上育実さんの録り下ろしの音声ガイドというだけで、ファンをして聴かない理由はありませんね。
まるごと貸切も可能
シネマ・チュプキ・タバタの3つめの特徴が、映画館まるごとの貸切サービスも行っていること。映画を上映することはもちろん、ミニコンサートや朗読会など、さまざまな目的で借りることができます。映画上映の場合は、シネマ・チュプキ・タバタが契約している映画をそのままかけることもできますが、仲間同士で集まって見るのであれば好きな素材を持ち寄って上映することも可能。利用料金は1時間7500円とリーズナブルなので、全15席を埋められれば、2時間の映画を上映しても1人たったの1000円で楽しめてしまいます。
海外では母国語であっても字幕をつける作品が多いそうですが、邦画では日本語字幕を用意している作品はほとんどないとのこと。シネマ・チュプキ・タバタではオリジナルの字幕や音声ガイドを用意しているので、そういった意味では唯一無二に映画館といえます。今後はシネマ・チュプキ・タバタのようなユニバーサルシアターが国内でも増えていくのではないでしょうか。田端近辺にお立ち寄りの方はもちろん、この劇場を目的として遠方から訪れるのもアリだと思いますよ。
シネマ・チュプキ・タバタ http://chupki.jpn.org/
©GIRLS and PANZER Film Projekt