覗けば深い女のトンネルとは? 第42回「深夜のダメ恋図鑑」
「深夜のダメ恋図鑑」という少女マンガのバイブルがあります。
女3人集まって、自分たちの恋バナを報告し合う物語です。登場する男性たちはかなりどうかというレベルばっかりで、彼らに対して彼女たちがバリバリとっちめていきます。この、登場する男性たちの所業がもう、あるあるなところがめちゃくちゃ面白いです。
この作品は、恋愛系の知見が多い女性ほど楽しめます。女性の権利やDV系の弁護を中心に活動している弁護士さんに紹介したら絶賛してました。
男性のあれやこれやに腹わた煮え繰り返りつつ生きてる女は、少なくないと思います。
だけどなかなか本人にはその不満を言えないものです。惚れた弱みの場合もあれば、その場ではモヤモヤするだけで自分の気持ちに気づかなかったり、指摘するほど愛情がない相手だったり。
この作品は、こうしたモヤモヤをガツンと男性に言い放つ爽快さがあります。「こんなふうに言ってやったら気分がいいだろうな」と思うことを次々と実践してくれます。
作品で、女の家に入り浸り、生活費も出さないうえに家事も手伝わず、料理には文句をつけるクソ男の話があります。とうとう堪忍袋の尾が切れて女が男を追い出すと、彼は土下座をして彼女に許しを乞うんです。
それに対して女が放った言葉は、
「ソイツの土下座にどれほどの価値が……?」
です。
いや、マジでそれですよね。土下座に価値があると思えるのは、それ以前にやる本人の価値をかなり高く見積もっているからです。土下座するほうもされるほうも、そこを見誤ってはいけません。でも件の弁護士さんによると、いるらしいですよ、浮気したりDVしたあとに土下座する男性。
この作品の根底には、男性の女に対する上位意識への批判があります。
自分の立場を顧みず他人を評価する人は少なからずいるものですが、なにしろ男性は格差社会に生きているので、知らず知らず女に対するマウンティングぐせがあるように思います。
和久井にも経験が(山ほど)あります。
例えば、付き合ってる男性から「冷蔵庫が汚い」と馬鹿にされたことがあります。その人は実家住まいで、家事一切ダメな方なんです。確かに和久井んちの冷蔵庫は綺麗じゃないと思いますが、生活力のない奴に人の生活云々を言われたくないです。
和久井はなるべく思ったことを伝えることにしているので、
「あなたは自活をしたことがないのでしょう? 自分の経験のないことで人を見下すのは良くないと思う。てかめっちゃ腹立つ」と伝えました。
いや、もっときっつい言い方したかもしれないけど。だって自分で自分の世話をしたことない人にとやかく言われたくないし。
彼は普段はたいへん謙虚な人なので、それ以来、和久井の生活に偉そうに評価をしなくなりましたが、そんなリベラルな精神を持つ人でも、無意識のうちに女を上から評価してもいいと思っていたわけです。指摘をされるまで、自分のしたことがどんな意味を持つのかわからなかったようです。
だから、「深夜のダメ恋」に出てくる男性たちの行動が決して誇張ではなく、「いっぱいいるだろうなあ」ということが簡単に想像がつきます。
Amazonのレビューが1と5に真っ二つなのも興味深い作品です。
個人的には、この作品を読んで、自分を振り返り、反省点を見つけ出す客観的視点がある男性は、とっても人間的魅力があるだろうなと思ってます。