2017年の紅葉シーズンがやってきた。今年こそ、一眼カメラできれいな紅葉を撮ろうではないか! ここまで、紅葉撮影に必要な機材とカメラ設定、そして最適な天候&光、露出の選択を紹介してきた。最後は4つの実例を見ながら、ここまで学んできたことをトータル的に解説する。
【実践1】
紅葉を前景に取り入れて、彩りと奥行きを出す
形のよい山容を生かしつつ、ナナカマドを入れて秋の湖水風景として撮影した。赤く色づいたナナカマドを前景に捉えることで、紅葉の彩りが強くなるだけでなく、風景としての奥行きや広がりが生まれる。
このように広角レンズで広い風景を撮影するときは、手前のモチーフに近づくことが重要だ。モチーフに近づいて大きく見せると、画面に核となるポイントを作ることができ、作品の存在感が増す。この場所でナナカマドを入れずに撮影すると、下の写真のように平面的、かつ単調な写真になってしまう。
さらに、このとき山のピークを画面の右に配置し、ナナカマドを左側に見せることで、画面内でモチーフが片寄らないようにフレーミングしている。山とナナカマドが左右にバランスよく見えるポジション選びも欠かせない。
もし水面を生かしてシンメトリー構図を作りたいなら、広角ではなく望遠レンズで切り取るといい。広角で広く撮ると、木々のひとつひとつが小さくなって平面的になりがちだが、望遠なら映り込んだ木々の造形美を生かせる。
【実践2】
ホワイトバランス「曇天」とプラス1補正で、明るく鮮やかな紅葉写真に
紅葉の色を狙いどおりに引き出すには、ホワイトバランス(WB)の設定が重要だ。紅葉撮影では、WB「オート」にすると色が濁ったり、色味が片寄ったりするので注意したい。WB「太陽光(晴天)」にすることで、紅葉の自然な色味を引き出せる。
ただし、「太陽光」モードは現場の光を反映させられる設定がゆえに、曇天や雨天時には青みがかって、紅葉の色が弱くなってしまうことがある。それが曇天や雨天らしさとなればよいのだが、紅葉の色をストレートに引き出したいときには不向きである。ここでは、曇天や雨天時に紅葉の暖かみのある色を生かすために、「曇天」モードにして撮影した。
さらに、曇り空を背景に見上げて紅葉を撮影しているので、明るい曇り空の影響によって露出がアンダーにならないよう、プラス1補正している。また、薄暗い森のなかでシャッター速度が遅くなると判断し、三脚を使用。これらの設定と準備によって、曇天だったがシャープかつ、華やかな黄葉の色彩を捉えることができた。
【実践3】
空と紅葉の露出差を埋めて、空の階調を引き出す
朝日・夕日に染まる紅葉は光による効果が加わってドラマチックだ。順光や斜光を受ける紅葉は比較的均一な光なので問題ないが、朝焼けや夕空を背景にした逆光の場合は、明暗差が大きいので撮影が難しい。
紅葉に対して背景の朝焼け空(または夕空)のほうが明るいため、紅葉に露出を合わせれば空は露出オーバーになり、空に露出を合わせれば紅葉が露出アンダーになってしまう。このように明暗差が大きいと、階調補正機能だけでは対応できない。
大きな明暗差がある場面では、上部がND(光量のみを少なくするフィルター)、下部が透明になっているハーフNDフィルター(下写真)が役に立つ。NDと透明部の境界がグラデーションになっており、境目が目立ちづらいソフトタイプと呼ばれるものがおすすめだ。ND部が朝焼け空に重なるように位置を調整して撮影すれば、上の写真のように朝焼け空と紅葉をどちらも自然な明るさで仕上げられる。
【実践4】
紅葉のライトアップは、三脚を使って低感度で撮る
紅葉のライトアップは昼間とは違った幻想的な美しさがある。ISO800前後に感度アップしても、シャッター速度は数秒から10秒近くになってしまうので、ブレを防ぐための三脚とレリーズは欠かせない。
無風状態なら望遠レンズでアップにすることも可能だが、広角や標準レンズで風景的に狙ったり、上の写真のようにシルエットになった紅葉の樹形を生かしたりするような撮り方がおすすめだ。
空が美しい青色に染まる薄暮の時間帯が、紅葉ライトアップ撮影のベストタイムである。日没後30分から1時間が目安だ。この時間帯は闇夜の漆黒の空とは違って、紅葉ライトアップを爽やかなイメージに仕上げられるという魅力がある。
この際、強い光源があると露出がアンダーになりやすいので、露出を何段階かばらして撮影しておくとよいだろう。周囲が暗く、背面モニターが通常よりも明るく見えるため、モニターで適正露出と思っても、実際にはアンダーということもあるのだ。