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2017/10/16 18:30

オーディオ市場で進む2極化現象――オーディオテクニカ新製品でも如実にその傾向が

2016年に発売されたiPhone 7の影響を受け、ワイヤレスオーディオの需要が増加しています。iPhone 7は、iPhoneシリーズで初めてヘッドホンやイヤホンを接続する汎用端子であるステレオミニジャックを搭載せず、従来のイヤホンを使用するためには付属の変換アダプターを利用しなければなりません。そのため、アダプターを介さずに接続できるLightning端子搭載タイプや、Bluetoothを利用するワイヤレスタイプのヘッドホン・イヤホンに注目が集まっているのです。

↑iPhone 7(上)とiPhone 6s(下)
↑iPhone 7(上)とiPhone 6s(下)

 

先日、多数の新製品を発表したオーディオテクニカのラインナップを見ても、ワイヤレス化の波は顕著になっています。交換ケーブル類を除いた新製品10モデルのうち、ワイヤレス対応製品は8モデル。そのうち2モデルは、従来の有線接続タイプの製品をワイヤレス化するためのアダプター類となっており、いかに同社がワイヤレス製品に力を注いでいるかがわかります。

↑ワイヤレス製品のシェアは急速に増加している
↑ワイヤレス製品のシェアはiPhone 7の登場以降、急速に増加している

 

一方で、有線タイプの2モデルは、シリーズのフラッグシップ機や人気機種の限定モデルなど、主に音質にこだわりの強い層がターゲットに向けた高価格帯の製品となります。このほか、発売中の製品をバランス化(※)するための交換ケーブル6種もラインナップされており、有線タイプ=音質にこだわるオーディオファン向け、ワイヤレスタイプ=手軽に音楽を楽しみたいライト~ミドルユーザー向け、という2極化がより顕著になっています。

※:一般的なヘッドホンやイヤホンでは、左右のチャンネルの信号をL(+)、R(+)、L/R(-)の3つ分けて伝送しているが、これをL(+)、R(+)、L(-)、R(-)の4つわけて伝送することをバランス化するという

 

さっそく、今回発表されたオーディオテクニカの新製品を見ていきましょう。

 

幅広いラインナップのワイヤレスタイプ

ワイヤレスタイプの注目製品は、際立つ重低音が特徴の人気シリーズ「SOLID BASS」から登場した、これまでのワイヤレスヘッドホンのイメージを塗り替える「ATH-WS990BT」と「ATH-WS660BT」の2モデルです。

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↑ATH-WS990BT(実売予想価格2万5000円前後/11月10日発売)

 

↑ATH-WS660BT
↑ATH-WS660BT(同1万5000円前後/11月10日発売)

 

従来、Bluetoothオーディオは、有線タイプに比べて音質面で不利とされ、特に低音の迫力が不足しがちとされてきました。しかし、今回登場したSOLID BASSシリーズの2モデルは、大口径のφ53mm”ディープ・モーション”ドライバーを搭載するなど重低音にこだわった音響設計を取り入れ、ワイヤレスながら存在感のある重低音を実現しています。

 

上位モデルのWS990BTは、周囲の騒音の影響を低減するノイズキャンセリング機能も搭載。車内のアナウンスなど、一時的に周囲の音を聞きたいときに便利なヒアスルー機能も備えています。

↑ATH-WS990BT
↑ATH-WS990BTはノイズキャンセリング機能を搭載

 

初めてワイヤレスタイプの製品を使う人には、エントリークラスのヘッドホンタイプの「ATH-S200BT」とイヤホンタイプの「ATH-CK200BT」も用意。いずれもカラーバリエーションが豊富で、長時間再生にも対応するなど、使いやすさにこだわった仕様となっています。

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↑ATH-S200BT(同7000円前後/10月27日発売)、ATH-CK200BT(同5000円前後/10月27日発売)

 

このほか、スポーツ向けの「SONIC SPORT」シリーズより、イヤーハンガーを備え安定した装着感を実現したワイヤレスイヤホン「ATH-SPORT70BT」「ATH-SPORT50BT」の2モデルも発売されます。

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↑ATH-SPORT70BT(同1万3000円前後/11月17日発売)、ATH-SPORT50BT(同7000円前後/11月17日前後)

 

有線モデルをワイヤレス化するアダプターも

さらに、これまで使ってきた有線接続タイプのヘッドホンやイヤホンを、ワイヤレス化するためのアダプター2種も登場しました。同社のリケーブル規格「A2DC」に対応したイヤホンのケーブルと付け替えるだけでワイヤレス化することができる「AT-WLA1」と、ヘッドホンアンプ内蔵型の「AT-PHA55BT」が用意され、自分の持っているアイテムに合わせて選ぶことができます。いずれも高音質・低遅延のコーデックAAC/aptXに対応するほか、PHA55BTはハイレゾ相当の高音質がワイヤレスで楽しめるLDACにも対応しています。

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↑AT-WLA1(同1万2000円前後/10月20日発売)

 

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↑AT-PHA55BT(同1万5000円前後/11月10日発売)

 

単に手持ちのヘッドホン・イヤホンをワイヤレス化するためだけでなく、最新の高音質規格を利用するために導入してもよさそうですね。

 

24万円のフラッグシップモデルに注目

有線接続タイプは、同社の開放型ヘッドホンの新しいフラッグシップモデルと位置付けられる「ATH-ADX5000」と、2014年発売の人気モデル「ATH-MSR7」をブラッシュアップした「ATH-MSR7SE」が登場。

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↑ATH-ADX5000(同24万円前後/11月10日発売)

 

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↑ATH-MSR7SE(同3万5000円前後/10月20日発売)

 

ADX5000は、硬質樹脂成型のバッフル一体型φ58mmドライバーや、抜けのよい自然な音場を実現する「コアマウントテクノロジー(PAT.P)」を採用。六角形のメッシュが印象的な特殊ハニカムパンチングハウジングなど、デザイン性と機能性を両立したこだわりの詰まった仕様となっています。バランス接続用交換ケーブル「AT-B1XA/3.0」(同4万円前後/11月10日発売)も同時発売されます。

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↑バッフル一体型の58mmドライバーユニット

 

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↑特殊ハニカムパンチングハウジングが印象的

 

このほか、同社のリケーブル規格「A2HD」に対応した製品をバランス化できる交換ケーブル3種が、それぞれ4.4mm端子/2.5mm端子搭載で発売されます。実売予想価格は仕様によって異なり、1万2000円~1万7000円前後。10月20日発売です。

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↑バランス用交換ケーブルのラインナップ

 

同社では、若い層にもっとワイヤレス製品に親しんでもらうため、カフェなどでワイヤレスオーディオを体験できる新プロジェクト「Wireless Journey Project」を提案。同プロジェクトのイメージキャラクターである謎の美女が登場するティザー動画が披露されました。この美女の正体は、後日明かされるとのこと。

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↑新プロジェクト「Wireless Journey Project」のティザー動画

 

今後もワイヤレス化が進むと見られるポータブルオーディオ市場。一方で、バランス再生など音質にこだわるユーザーは有線タイプを支持し続けると予想されており、そのようなオーディオ市場の2極化が新製品ラインナップに反映された、今回のオーディオテクニカの発表会。いまだ音質面でアドバンテージのある有線タイプですが、ワイヤレス技術がさらに発展し、有線タイプと同等の音質を実現できるようになれば、将来的にはワイヤレスタイプが市場を独占する可能性もありそうです。