ミラーボックスを省くことで小型軽量化を図ったミラーレス一眼の第1号機の発売からまもなく10年目を迎える。現在は国内外合わせて10社以上がミラーレス一眼を発売。CIPAの統計によると、レンズ交換式カメラ市場のなかでの一眼レフとミラーレスの割合は、年々ミラーレスが高くなっており、2016年には総出荷金額ベースで約29%に達している。まずは、そんなミラーレス一眼の歴史を誕生から振り返ったうえで、これからミラーレス一眼が向かう方向を占ってみよう。
【~2008年/ミラーレス前夜】一眼レフでのライブビュー撮影が可能に
1990年代~2000年代前半のデジタル一眼レフは、フィルムカメラと同じように光学ファンダーを覗いて撮ることしかできなかった。そんななか、2004年にフルタイムライブビューを可能にした初の一眼レフ、オリンパスE-330が発売。以後、一眼レフでのライブビューが一般化した。
【2008年】マイクロフォーサーズがミラーレス第1号
ミラーレス一眼は、イメージセンサーが常に動作する、ライブビュー状態で使うことが前提であり、そのためには発熱や消費電力を小さく抑える必要があった。それを可能にする低消費電力センサーが開発されたことで、2008年にパナソニックから世界初のミラーレス一眼、ルミックスG1が登場。翌年にはオリンパスからもミラーレス一眼のE-P1が発売された。
【2009~2012年】各社からミラーレス一眼が続々と登場
第1号機の発売以降、さまざまなカメラメーカーや家電メーカーがミラーレス一眼の分野に参入し、数多くの製品が登場。そのほとんどのメーカーは、ミラーレス用に独自のレンズマウント規格を新たに開発・採用しての参入だった。
【2012~2016年】ミラーレスカメラの実用性が向上
2012年以降もミラーレスの普及は進んだ。主なユーザー層は、コンパクトカメラからステップアップする人や、一眼レフのサブ機として使用する人たちだ。そのため2010年代前半はエントリークラスやミドルクラスの製品が中心だった。その後、さらに高性能化が進み、2013年には初のフルサイズミラーレスα7/α7Rが登場。中級者以上がサブではなくメイン機として選ぶケースも増えてきた。その間、ミラーレス一眼の弱点であったAF速度や連写速度などの課題も徐々にクリアされてきた。
■AFの高速化/像面位相差AFを採用
ミラーレスで一般的な「コントラストAF」は、ピントが合った位置が最も像のコントラストが高くなるという現象を利用。レンズを動かしてコントラストの高い位置を検出する。そのためピントは正確に合うが、AFを速くするのは難しい。一方、一眼レフで使われている「位相差AF」は、いわば三角測量に近い方法で被写体を2点から見たときの位相のズレを検出する方式で高速なAFが可能だ。そこで、イメージセンサー上に位相差検出用のセンサーを複数置いてAFを行う「像面位相差AF」を採用する製品が増加。快適なAF速度と動体追従性を実現している。
■連写速度の向上/電子シャッターで超高速連写を実現
ミラーレスでは、電子シャッターを使うことで高速連写ができるモデルが増えている。一眼レフのメカシャッターのようにミラーやシャッター幕を物理的に動かす必要がないので、10コマ/秒クラスの超高速連写ができる製品も少なくない。
【2016~2017年】中判などの高画質機もミラーレス化が進む
2016年以降は、独自センサー採用のシグマsd Quattroや富士フイルムとハッセルブラッドが手がけた中判ミラーレスなど、一段上の画質を備えた機種も登場。特に大型のセンサーを採用した中判カメラは、ブレが目立ちやすくカメラの内部振動によって画像がぶれてしまうケースもあるため、ミラーボックスがないミラーレスは最適といえる。加えて、一眼レフより設計の自由度が高く、小型化できる点も中判カメラを設計するうえでの魅力だ。
このほか、ソニー α9などのように電子シャッターや高速読み出しが可能なセンサーを用い、超高速シャッターや高速連写を実現したカメラも登場。今後、画質と速度の両面で一眼レフを超えるカメラが登場することを予感させる。
【ミラーレス一眼のこれから】デジタルならではの付加価値に期待
ミラーレスカメラは9年間で急速に進化し、もはやどの製品を選んでも大きく外すことはなく、クラスに応じた満足感が得られる。画質もスピードも操作面も、一眼レフに追いつきつつあるといっていい。当面の課題はバッテリー持久力くらいだろう。今後も、画質やスピードといったカメラとしての基本部分の高性能化はさらに進むだろうが、このまま単に画素数や連写速度などのスペックを高めるだけでは十分ではない。これからはユーザーに欲しいと思わせる魅力や価値をいかに加えるかがカギになる。幸いにして、センサー以外の主要部分がメカで構成された一眼レフとは異なり、ミラーレスはデジタル化された部分が多いので、まだまだ技術革新の余地はある。あっと驚くような新機能や新製品に期待したい。
プロ用一眼を凌駕するミラーレス一眼