ライフスタイル
2017/10/29 16:00

ワガママをきいてくれるのは「相手にとって自分が特別だから」ではない

覗けば深い女のトンネルとは? 第46回「他人を大事にすることは自分の幸せにつながる」

 

恋人と別れた理由や離婚について聞くと、「彼を甘やかしすぎた」と語る女友達がけっこういます。Belindaの「あたしゃあんたの母親でもフロイトでもねえんだよ」という曲もあることだし(詳しくは連載第40回を参照)、少なくない話なんだろうな、と思います。

 

パートナーを甘やかした友人たちによると、浮気をされたり、電話がひっきりなしにくるようになったり、働かなくなって金銭を要求されるようになったりと、いろんなことが起こるようです。

 

浮気の場合は、心がよそに移ったというわけではなく、ホントに「浮気」で、バレたり自発的にゲロッたりしても「許してくれると思った」と言うのだとか。

 

……甘えてますね。

 

でも和久井にも身に覚えがあります。まだ人との付き合い方がわからなかったころ、人付き合いが不安で仕方がなかった。そして友達にワガママを言うことで、自分の価値を確認しようとしていたところがあります。やたらお願い事をしたり、愚痴を言ったり。心を許せば許すほどワガママになり、大きなワガママを聞いてくれればくれるほど、彼女たちにとって自分は「それでも付き合う価値のある人間なんだろう」と自信を保とうとしました。

 

でも、そうじゃない。人の価値って「どれだけ自分を大切にしてくれるか」ですよね。どんなに見た目がチャーミングでも、社会的に立派でも、愚痴ばっかりだったり、自分を見下したり、ないがしろにする人を大事にしようとは思いません。

 

和久井は一方で人に嫌われて、一方では大事にしてもらい自信がついて、ようやく「他人を大事にすることは自分の幸せにつながるんだ」と思うようになりました。

 

自分を押しつけて相手を怒らせたり、距離を置かれたりしたあとの自己嫌悪ったらありません。謝ろうにも、もう遅い。「ごめんなさいを言えるうちは幸せなんだ」と痛感したこともあります。相手を否定せずに自分の意志はちゃんと伝える、という深いコミュニケーションにはスキルが必要ですが、それを手に入れさえすれば不安は吹き飛びます。

 

パートナーに尽くす人も、そんなふうに考えているのかもしれません。縁があって時間をともにすることになった相手には、自分と一緒にいることで成長してほしいし、辛いなら楽になってほしい。

 

でも自分の幸せも大事です。相手を思いやりたいけれど、あまりに自分に負荷がかかったり、ないがしろにされるようなら、相手への誠意と自分の幸せとのバランスに悩みます。落としどころはどこだろうって。でも、やれることはやったと思えば、相手に未練は残りません。

 

いつもパートナーに優しくするのは、すべてを許しているからではなく、自分が後悔しないためかもしれません。

 

「アロマチック・ビターズ」(桜沢エリカ)というマンガ作品があります。40代のセレブ主婦・英(はな)と30代女子・小優美の恋愛模様を通して、男と女、恋愛の不条理、結婚、離婚、仕事といった女性の人生を考えさせる物語です。

 

英さんは家庭内離婚状態ともいえる夫のために毎日朝食を作り、夫に隙を見せません。しかし夫は若い女性を妊娠させ、離婚を切り出してきます。そのとき英さんは「女の影を見て見ぬ振りするのも、食べない朝食を作り続けるのも、すべて愛情だと思ってた」と泣きました。だけど「オレたちの間に愛情なんてもうなかっただろ?」と言っていた夫は、若い女性との関係にストレスを感じ、英さんのところへちょくちょく戻るようになるのです。

 

そうして「オレたち20年一緒にいてほとんどケンカしなかっただろ? オレにとっておまえは誰よりも気が合う親友なんだよ」と悪びれもなく言います。それに対し英さんは「それは私が耐えていたから。自分のことしか考えないあなたに合わせて暮らすほうがラクだと思ってたからよ」と思うのです。未練たっぷりの夫に引き換え、英さんの心はカケラも夫にありません。結局、別れを切り出したのは夫だけど、捨てられたのも夫です。

 

人から「お前なんかイラネ」って判断されるのは悲しいことです。言われてからじゃ遅い。自分の要求ばかりしていないか、ちゃんと「ありがとう」「ごめんなさい」を言っているか、自分勝手をしていないか、相手を尊重しているか、ちょっと振り返ってみるのは、相手のためではなく自分の幸せのために大事だと思うのです。

 

パートナーを甘やかしちゃった女友達に「そんなダメンズに最後まで誠意を尽くしたのはどうして?」と聞きました。答えは「意地かな」です。とことん大人になって、一段上のステージに居続けるため。最終的な進路を決めるのは、自分自身で居続けるためです(見限られたら受動的にならざるを得ないからね)。

 

ちなみにダメンズ経験のある女友達は、みんなめちゃくちゃステキなパートナーを見つけたり、仕事で活躍したりしてキラッキラしてます。苦労から学ぶことは幸せへの第一歩なんだなあ。まだまだ苦労が足りないと思う和久井です。