ソニーのスマートフォン、Xperiaシリーズの2017年秋冬新製品「Xperia XZ1」が発表されました。今回はその特徴を、過去機種の「Xperia Z」シリーズと比べながら明らかにしたいと思います。
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ソニーのXperia Zシリーズは2014年秋冬モデルである「Xperia Z3」から日本の大手3キャリアが揃って取り扱うようになりました。Xperiaが尖ったハイスペックスマホを求めるマニア層だけでなく、より広いユーザー層に浸透しはじめたのはちょうどこの頃からだったように思います。
以降、2015年の夏モデルとして発売された「Xperia Z4」から、同年の秋冬モデルである「Xperia Z5」まで国内のXperiaといえばソニーが誇る先端技術を詰め込んだ「Zシリーズ」が定番モデルとなってきました。当時は大手キャリアでスマホを買うと契約期間の“2年縛り”が存在していた頃だったので、いまごろちょうど「買い換え時」を迎えている方も多いのではないでしょうか。使い慣れたXperia。最新モデルがどれぐらい進化しているのか見ていきましょう。まずは本体のデザイン、サイズ感から。
①【サイズ】これまでよりもやや長いが持ちやすい
写真をご覧いただくとわかるように、Xperia XZ1(以下:XZ1)は縦方向のサイズがXperia Z5(以下:Z5)に比べるとやや長くなっています。Z5とほぼサイズが変わらない「Xperia Z4(以下:Z4)」「Xperia Z3(以下:Z3)」も隣に並べてみました。
スペックの外形寸法で比較すると、XZ1は約73W×148H×7.4Dmm、Z5は約72W×146H×7.3Dmmとなり、厚みはほぼ変わらず。やはり縦方向には2cmほど長いようです。XZ1では前機種のXperia XZsと比べても、約50%ほど内蔵スピーカーの音圧を上げるため内部の容積を多めに確保したことも影響しているのかもしれません。でも確かにその効果は動画を鑑賞する時など、とても聴きやすくなったスピーカーサウンドにしっかりと表れています。
本体の厚みについては実機に触れてみると、むしろXZ1の方が薄くなったような手応えがあります。両サイドのエッジをラウンドさせた「ループサーフェスデザイン」の効果によるものかもしれません。同じ約5.2型/フルHDのディスプレイが、片手持ちでより操作しやすくなったようにも感じられます。
とても薄型の筐体ですが、その堅牢性については背面から両サイドまで一体の押し出し成形によるバスタブ構造のメタルフレームを使っているので、実は「Xperia史上・最高強度」を実現しています。フロントガラスにもコーニングの強化ガラス「Gorilla Glass 5」を採用。Z5、XZ1ともに防水IPX5/8相当&防塵IP6X相当のスペックなので、水濡れにも強く設計されています。
本体のカラーは、背面にガラスパネルを使い全体に光沢感が強めのZ4/Z3に比べて、Z5から背面がメタル素材になっています。色合いも落ち着いた印象。Xperia Xシリーズからは、フロントベゼルも背面・サイドと同じ色に統一されています。実はXZ1の「ムーンリットブルー」はソニーのワイヤレスヘッドホン・イヤホン「h.ear」シリーズの最新モデルにも同じ色を揃えています。
②【使い勝手】SIMとSDカードスロットが別に
細かなところではSIMカードスロットがSDカードスロットと別々に設けられています。Xperia Z5/Z4は一体型のスロットだったので、SDカードを交換しようとするとSIMカードも同時に抜かなければならず、そのたびに端末の再起動が必要でした。SIMカードを出し入れしなければならないため、細かな傷が付いて接触不良が発生するとSIMカードの再購入が必要になる場合もあります。実際に筆者もXperia Z5 Premiumを使っていた頃に、ハイレゾの楽曲を入れたSDカードをしょっちゅう差し替えていたので、SIMカードを1年半で2回ほど買い換えました。ですので、別々のスロットは大歓迎です。
③【カメラ】暗いところでもきれいに撮れる
カメラ機能についてはXperia XZ Premium、Xperia XZsの世代から搭載されているメモリー積層型のCMOSイメージセンサーを中核とする「Motion Eyeカメラシステム」のおかげで、高品位な写真が簡単に撮れます。被写体の動きを自動検出して、最大で4フレームぶんの画像をバッファリングしながら、シャッターボタンが押される直前の画像を記録する「先読み撮影」、最大960fpsの「スーパースローモーション撮影」などがその代表的な機能です。
XZ1からはさらに被写体となる人物の「笑顔を自動で検知」して、決定的瞬間の前後を逃さず記録できるように先読み撮影機能がパワーアップしています。動いている被写体にフォーカスを合わせ続けながら連写ができる機能も追加されています。
単眼カメラユニットのスマホで、人物や食べ物、自由造形(置物など)を3D撮影して、手軽に3Dアバターや3Dプリンターで出力できるオブジェが作れるアプリ「3Dクリエーター」もXZ1から搭載されています。3Dクリエイターで自由造形の撮影を試してみましたが、撮影そのものに複雑な操作は要らないものの、被写体の回りを360度、撮影している自分がぐるっとひと回りできる環境を整えるのが意外に大変でした。3Dクリエイターに加えて、笑顔検知やオートフォーカス連写の機能は今年の夏に発売されたXperia XZ Premiumにもアップデートで追加されるそうです。
XperiaはZシリーズから暗い場所でも明るく写真や動画が撮れるスマホとして高く評価されていましたが、XZ1はメインカメラのセンサーを大型化して、より多くの光を取り込めるようさらに改良されています。実際に撮影した写真を見比べてもらうと、XZ1では暗部の再現性が上がり、色合いがますます自然になったことがわかります。
【作例】(クリックすると拡大できます)
④【画質】HDR対応で動画がきれい
動画視聴については、XZ1のディスプレイがHDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)対応になったことで、より人間の目で見る明暗のコントラスト、豊かな色合いに映像が近づいています。HDR表示の実力を確かめるために、Netflixで配信されているHDRコンテンツを見比べてみました。Netflixの作品検索に「HDR」と入力すると、現在視聴できるHDR作品がリストに並んできます。
ディスプレイ設定の「明るさの自動調節」をオフにして、輝度を最高レベルに上げたうえで、映像モードは「スタンダード」、高画質処理系の機能は設定をオフにしています。XZ1では明るい部分のピークが破綻せずに、被写体のディティールを残しています。暗部の階調表現も優秀です。色はHDR機能の有無によるものというよりも、Z5のディスプレイが全体にマゼンタが強い印象を受けました。
⑤【音質】ハイレゾ再生はもちろん音質もアップ
続いてオーディオ機能を比べます。その前にZシリーズの「ハイレゾ対応」の歴史を振り返ってみましょう。ヘッドホン端子から最大96kHz/24bitまでのハイレゾ出力が可能になったのはZ3から。当時再生できるファイル形式はFLACとWAV、ALACでした。USBオーディオ出力の場合は192kHz/24bitまで。USBケーブルでポタアンなどにつないでハイレゾ再生が楽しめるようになったのはXperia Z2からでした。圧縮音源も192kHz/24bit相当のハイレゾ品質にアプコン再生ができる「DSEE HX」はZ3から搭載されたフィーチャーでした。
Z4から、Bluetoothワイヤレス再生もハイレゾ相当の音質で楽しめるソニー独自のコーデック「LDAC」に対応しました。ヘッドホン端子からのハイレゾ出力は192kHz/24bitに到達して、再生できるファイル形式にAIFFも加わりました。ヘッドホン端子に接続された機器に合わせて音質を最適化する「自動最適化」の機能も本機以降から追加されています。
Z5はオーディオ再生のパフォーマンスに大きな変更がなかった代わりに、現在も販売されているハイレゾ対応のノイズキャンセリングイヤホン「MDR-NC750」が同時期に発売されました。
XZ1では先に触れたとおり内蔵スピーカーの容積がアップしています。2016年の秋冬モデルとして発売された「Xperia XZ」から、イヤホン出力もアナログ回路の見直しをかけて音質・音圧がパワーアップしています。
以上の歴史を踏まえたうえでZ3からXZ1まで音質を聴き比べましょう。リファレンスのイヤホンにはAKGのハイレゾイヤホン「N30」を使っています。まずZ3からZ4の段階で明らかに音場の広がりと奥行き感が増しています。192kHz/24bit音源の実力がフルに引き出せることも大きなポイントです。Z4とZ5の比較では中低域の彫りが深くなって、音像がタイトに引き締まりました。さらにXZ1をZ5と聴き比べてみると音の印象がさらに鮮明になっています。オーケストラやジャズのビッグバンドを聴いてみると、元もと高い解像感に加えて、さらに微細な音も明瞭に浮かび上がらせる余裕が生まれた手応えも得られました。
ただ、いまの最新ハイレゾスマホの中で特に高音質と言われている“グランビート”「DP-CMX1」やLGの「V30+」など、アンプを強化しているモデルに比べると音の厚みではやや力不足を感じてしまいます。特に電車の中などアウトドアで音楽を聴くときにはボリュームのゲージ全体を「10」とするなら、8から9ぐらいの位置にまで音量を上げないと聞こえづらいこともよくあります。ノイズキャンセリングイヤホンやヘッドホンを組み合わせれば良いのかもしれませんが、多くのユーザーが普通のイヤホンを使った場合も快適に音ものコンテンツが楽しめるように、そろそろウォークマンに搭載しているフルデジタルアンプ「S-Master HX」の搭載もぜひ実現してほしいと思います。
最後にXperiaはXシリーズになってから、内蔵バッテリーの長寿命化にも目を向けたスマート充電機能「いたわり充電」が加わっていることにもひとこと触れておきたいと思います。カメラや動画・音楽再生の機能は強化されるほどバッテリーも消費するものなので、その点から見ても変わらない使い勝手がキープできているところはさすがといえます。
特筆するような新機能こそないものの、全体的に機能が強化された今度のXperia XZ1は、これまでZシリーズを使ってきたXperiaユーザーにとって買い換える価値のある端末に仕上がっているのではないでしょうか。Xperia Z3~Z5を使っている方は、ぜひ店頭で実機をチェックしてみて下さい。
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