天気のいい休日など、動物園に行きたくなることがある。普段の暮らしでは目のすることがないライオンやトラ、クマなどの大型動物を見たり、うさぎやモルモットなどの小動物と触れ合ったり。
最近では、保護犬のいるカフェに行くこともある。人なつこい犬たちと一緒に過ごしていると、心が優しくなる感じがする。
動物園の動物たちは幸せなのか?
僕らは、動物園に行って動物たちを見てあーだこーだ言いながら癒やされたりする。
しかし、「野生の動物をこんな狭いところに閉じ込めてかわいそう」と言う人もいる。
そういう声を聞くと、確かになとも思う。元来、動物は自然界にいてそれぞれの生活をしている。一方、動物園の動物たちは日がな一日狭い檻で過ごしている。狩りをしたり、全速力で走ったりするようなことはない。
自分が動物園の動物の立場だったら、どう思うだろう。毎日退屈なのだろうか。
でも、僕は面倒くさがりでだらしないので、別に一日中家にいてもなんとも思わないし、ご飯が定期的に出てきたり、掃除もしてもらえるのだから、ある意味幸せなんじゃないだろうかと思ったりもする。
愛情深い飼育員さんがいるから動物たちは幸せだ
『新版 人に育てられたシロクマ・ピース』(高市敦広・著/平野敦子・構成/学研パブリッシング・刊)は、日本で初めてシロクマの人工飼育を行った愛媛県立とべ動物園の高市敦広氏と、そのシロクマ、ピースのふれあいを描いたノンフィクションだ。
ピースは、生まれてすぐに母シロクマの育児放棄により、高市氏が育てることになる。高市氏は、自宅に連れ帰って家族とともに懸命に飼育。暑さに弱いシロクマのために、真冬でも部屋の窓を開け放したまま寝るなど、100日以上をともに過ごした。
その甲斐があって、ピースは280kgの立派なシロクマに成長。てんかんの発作を持っているものの、現在も元気にとべ動物園で過ごしている。
この本のなかに、次のような一節がある。
せまい場所に、動物たちをとじこめておくのは、かわいそうだという人もいるでしょう。ただ、動物園で働くわれわれは、動物園という限られた空間の中で、動物たちの生活をよろよくしようと、毎日がんばっているということも、忘れないでほしいでのす。せまいところにいることが、必ずしも不幸ではないとわたしは信じています。
(『新版 人に育てられたシロクマ・ピース』より引用)
動物園にいる動物たちの気持ちは、僕らにはわからない。しかし、飼育員の方々は動物たちに寄り添って毎日を過ごしているので、僕らなんかよりも動物たちの気持ちはわかるはず。
きっと、動物たちは優しい飼育員に囲まれて生活をしているので、幸せなはずだ。
動物園は幸せの象徴
また、こんな記述もある。
動物園というのは、平和の象徴でもあるのです。たとえば戦争をしている国は、自分たち人間が生きていくだけで精いっぱいなので、動物園などありません。
(『新版 人に育てられたシロクマ・ピース』より引用)
現在、日本には91の動物園がある。水族館は60。この数こそ、今の日本の平和度を表しているのではないだろうか。
平和の象徴である動物園にいる動物たちが、幸せを感じていないことはないだろう。そう考えると、動物園というのは幸せがいっぱい詰まった場所なのだ。
今度の休みは、動物園に行ってみよう。仕事ばかりでガサガサになった僕の心に、うるおいを与えてあげよう。
(文:三浦一紀)
【文献紹介】
新版 人に育てられたシロクマ・ピース
著者:高市敦広(著)平野敦子(構成)
出版社:学研パブリッシング
「私は110日間、完全に母グマになっていました」 愛媛県立とべ動物園の人気者シロクマ“ピース”は飼育員によって自宅で育てられた。ホッキョクグマと人間のふれあいを描いた感動のノンフィクション。“ピース”のかわいらしい写真も満載!
Kindleストアで詳しく見る
楽天Koboで詳しく見る
iBooksで詳しく見る
BookBeyondで詳しく見る
BookLive!で詳しく見る
hontoで詳しく見る
紀伊國屋書店ウェブストアで詳しく見る