GetNavi(ゲットナビ)5月号のロケットニュース24との合同連載「ロゲットニュース24」では「写ルンですとデジカメ写真、プロは見破れるか?」を展開していますが、実は最近、「写ルンです」が再ブームの兆しを見せているのをご存知でしょうか? 「デジタルの時代になぜ?」と思ってしまいますが、その原動力になっているのは、「写ルンです」にこれまであまりなじみのなかった若い世代だと言います。富士フイルム フォトイメージング事業部で、「写ルンです」を含むフィルム事業全般のマーケティングを担当している築地紀和さんに、再ブームの要因を伺いました。
販売のピークは1997年で2015年に下げ止まりの傾向が出てきた
まずは簡単に「写ルンです」の歴史から。それまでのカメラはフィルムを入れ替えて撮る方式でしたが、1986年に誕生した「写ルンです」はそれが不要。知識や設定も不要で、だれでも簡単に撮れる安価なカメラ(正式には「レンズ付きフィルム」)として爆発的なヒットになりました。進化を重ねながらより高画質、より高機能となりバリエーションも増えていきましたが、ご存知の通り、デジカメやスマホの登場でその座を明け渡すことに。でも、具体的にはいつごろ世代交代となったのでしょうか?
「フィルム全体としての販売数ピークは1997年です。そこから年々減少していき、やがてメインの購買層は学校の指定ということで利用する小中学生や、機械に慣れない高齢の方々中心に。しかし、V字とまではいかないものの2015年ごろから下げ止まりの傾向が見られはじめたんです。理由はいくつか挙げられますが、なかでもSNSの発達が大きいと考えています」(築地さん)
↑「写ルンです」本体だけでなく、DPE(フィルムの現像、焼き付け、引き伸ばしを意味する言葉)にも進化が。2000年にはプリントではなくデジタル化するサービスがはじまり、好みのカットだけを現像したり加工したりできるようになりました
人気のカギを握るのは若いカメラ女子にあり
試しに、写真をメインとしたSNSである「インスタグラム」をチェックしてみると、2万9371件(3月21日時点)ものハッシュタグがあるなど、かなりの盛り上がりをみせています。そして、「写ルンです」の購買層をみてみると20代の女子が顕著に増えており、確かに「インスタグラム」のユーザーは20代女性が多いといわれています。しかし若い女性は、なぜスマホではなく、あえて「写ルンです」で撮った写真をSNSにアップするのでしょうか??
「『インスタグラム』や多くの画像加工アプリには、デジタル画像をアナログな雰囲気に加工できる機能がありますが、とはいえもとはデジタル。『写ルンです』の独特なやわらかさや淡いニュアンスなどは、やはり本物でないと出せません。そこで『リアルなアナログ感を出したい』という方や、SNSを表現の場としてこだわりを持っている方などは『写ルンです』を愛用し、発信していただいているのではないかと思います」(築地さん)
↑左の2枚が「写ルンです」、右が「iPhone6」で撮った写真。比べてみると精細さ、彩度、色の寒暖や濃淡などがかなり違います
彼女たちは写真SNSの流行により新たに登場した“カメラ女子”といえる存在ですが、SNSのほかにも若いカメラ女子に「写ルンです」がウケている理由がありました。それは有名人からの影響からだと築地さんは言います。
「たとえば奥山由之さん。世界一、『写ルンです』を使っていると公言しているプロの写真家さんです。奥山さん自身が20代ということもあってファンにも若い世代が多いと思うのですが、影響はかなり大きいでしょうね。また、ミュージシャンのBENIさんも『写ルンです』の愛用者です。『写ルンです』をPVで使用したり、自身のSNSで発信したりするほどで、先日コラボパッケージの『写ルンです』も限定販売させていただきました。BENIさんも若い方に強く支持されるアーティストなので、『写ルンです』の再ブームに大きな影響力を持っていると思います」(築地さん)
30周年を迎えて新展開が続々と予定中!
↑今年、30周年を迎えた「写ルンです」。4月8日には5万本限定でアニバーサリーキットが発売されます
ここ数年はカメラ量販店やネットが主な販路だったそうですが、最近は再ブームということで大手の雑貨店や書店などからの取り扱い希望が舞い込んでいるとか。富士フイルムとしては、同社のインスタントカメラ「チェキ(正式名称は『instax』)」の次は「写ルンです」が来る! と言われていたそうですが、ちょうど今年で30周年を迎えるということで、アニバーサリーキットの発売が決定。また、誕生日である7月1日などに向けて、ほかにも企業コラボをはじめとする企画を考えていきたいとのことです。これからも目が離せません!