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2016/3/27 13:00

世界唯一無二! Excelで驚異の絵を描く堀内辰男、その正体に迫る

 

世の中には、卓越した才能を持つ人間がいるが、下記の絵はそのなかでも突出したものではないだろか?この勇壮かつ繊細な風景画、いったんどんなツールで描かれているかわかるだろうか。

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ペンでも筆でもない。「Excel」である。あの、表計算ソフトのオートシェイプ機能を中心に活用し、この絵を描き上げる男、それが堀内辰男さん、74歳だ。

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堀内辰男さん

「いやね。定年するちょっと前。部下がパソコンで作った資料なんかをみると、『なんでこんなきれいにグラフとか作れるのかなぁ』って思ったんだよ。私もね、定年後にパソコンでも使えないと、第二の人生で活躍できる場がないんじゃないかと思って、買ってはいたんだ。でも何に使えばいいかわからない。そんなときにその資料をみて、“こういうのが作れるなら、パソコンで絵も描けるんじゃないか、って”思ったんだよ」(堀内さん)

 

堀内辰男さんは、現在74歳。定年を迎えたある日、パソコンで、しかもExcelという表計算ソフトで“絵を描くこと”を始めた。パソコンもほぼ初心者。さらに、絵は「学校の授業でやったくらい」と、こちらもほぼ初体験だったという。しかし、絵を描きたいならほかに便利なソフトがごまんとある。それがなぜ、Excelという答えに至ったのだろう。

 

「そりゃ定年で収入なくなって年金暮らしになるんだから、専用ソフトなんて高いもの買えない。母ちゃんに迷惑かけらんないから」と笑う。しかし、一方では硬派な信念も持ち合わせていた。「定年で、会社という看板がなくなって、一人の人間になるわけ。会社という看板があれば、仕事も楽にできちゃうわけだけど、これからは違う。裸の自分を見つめ直したとき、俺は何ができるんだって。伊能忠敬は実業家で成功して、49歳で隠居してから、初めて日本地図作りに挑戦したんだよ。50歳からだよ? 俺もそういう挑戦をしたかったんだ」(堀内さん)

 

堀内さんは、Excelを触っているうちに、オートシェイプという図形描画機能で“絵が描ける”ということに気が付いたという。「最初は一株の君子蘭(くんしらん)から描き始めたんだ。デッサンなんて習ったことないから、とにかく花を手にもって、右手にはマウス。それで、自分が見ているものそのものに輪郭を近づけていったわけ。Excelは頂点を修正できるからね。とにかく見ているものと同じ輪郭を再現することにこだわった」

 

スタートにあたって、自身で目標を決めたという。最初の3年は、とにかくたくさん花などの生物を写生して、PCに慣れる。次の3年は、最初の3年でたまった素材、3~400のものを組み合わせて「絵」にしてみる。そして最後の3~4年は、パーツを貼り合わせて「作品」と呼べるものをたくさん作り、絵らしい絵をモノにする。この夢の設計図をしっかりと守り、堀内さんは、2006年にパソコン画大賞を「城址の桜」という作品で得る。以下がその作品だ。

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「城址の桜」

絵心とは“配置”と“心”

しかし、これだけの作品である、誰もが到達できるような領域には思えないし、そもそも堀内さんには“絵心”というものがあったのではないか。そう聞いてみた。

 

「違うんだよ。パソコン画は、“絵心”がいらない。いま俺は館林でパソコン画のスクールをやってるんだけど、生徒はおばあちゃんが中心で、俺みたいに絵なんてやったことない人がほとんどなわけ。それでもね、教えれば誰でもどんどんうまくなるんだよ。だってさ、後から好きなだけ直せるんだから。そりゃ俺みたいな大きな絵を描くには、根気が必要だけど、モチーフをみたまんま描くのは誰でもできる。むしろ、絵心がない人のほうが、先入観がないぶん、成長するのが早い。そしてちゃんと上手く描けるから、みんな確実に達成感を得られるんだ」(堀内さん)

 

デッサンなんか知らない。輪郭なんか後から直せばいい。その精神で描かれたパソコン画は、「これは“絵”ではない」など、展覧会などでも批判があったという。しかし、筆者は、堀内さんの絵を見て感動した。既存の“絵”のルールからは逸脱しているが、出来上がった作品はまさしく絵。絵描きの門外漢が起こしたイノベーションである!

 

「正直言うと、俺自身“絵心”っていうのがなんなのか、よくわかんなかったんだけど、14年やってて少しだけ見えてきたんだ。要するに“配置”なんじゃないか、って。空間的配置に味を出せば絵になる。料理なんか時間的な配置だよな。いつどのタイミングで調味料入れるか。まあそういうものにはマニュアルがあるだろうけど、マニュアルだけでは届かない感覚があるんだ。剣道でも柔道でも、“型”ってあるでしょ。あれもマニュアルだよ。でもね、マニュアルだけやってても試合には勝てないっじゃない。どうしてもマニュアルでは届かない隙間があって、それが“心”なんだよ」(堀内さん)

 

感動した。

 

Excelで出せる色は、RGBの組み合わせで256の三乗。絵具と違い限りがある。しかし、その問題に対し、堀内さんはこう語る。「透過性を調整し、絵を重ねていくことで、ピタっと現物と同じ色が出る一瞬がある。その瞬間は感動だよね」と堀内さんは語る。その精神は、完璧に画家だろう。

 

今後も堀内さんの絵に注目し続けたい。

 

堀内辰男さんのホームページ http://www2.odn.ne.jp/~cbl97790/