街中でApple Watch、Android wearを身に着けた人々が自然と世の中に浸透したと言えるでしょう。ノキアは12月15日、「Steel HR」を国内にて発売しました。「Steel」シリーズはアナログ文字盤を搭載しつつスマホと連携するスマートウォッチ。同機は文字盤にディスプレイを新搭載し、心拍数などをリアルタイムにモニターできるのが特徴です。実勢価格で2万5000円程度、とスマートウォッチにしては手ごろなことも魅力の一つ。今回は同機を約1週間使用してみたので、その使い勝手をお伝えします。
外観はアナログ時計の良さを生かしている
まずは、Steel HRの外観をチェック。文字盤はアナログで、上下には新搭載された円形ディスプレイと、活動量の目標達成率を記すサブダイヤルが並びます。ガーミンが12月27日より発売する「vivomove HR」などもそうですが、アナログ文字盤のスマートウォッチにディスプレイ表示を組み合わせるのは、今季のトレンドと言えるでしょう。
指針とインデックスはシンプルなバータイプを採用。風防は縁に寄った箇所がやや丸みを帯びており、曲面はベゼルへと滑らかにつながっています。円形のケースのベゼル部分には、5分おきに数字が刻まれていますが、自己主張しない控えめなデザインに抑えられている点は好印象。
ケース背面には、光学式の心拍センサーを搭載。測定時には緑色のLEDライトがピカピカ光ります。ケースのサイズは36mmモデル(直径36.3mm、ケース部39g)と40mm(直径39.5mm、ケース部49g)モデルの2種類を展開。カラーバリエーションは前者が白と黒、後者が黒のみとなります。なお、ケース部も50 m、5ATM相当の耐水性を備えており、水中でも使用できます。
バンドはシリコン製。非常に柔らかく、着け心地は軽め。肌に触れる面には、小さな凹凸があり、ムレを防止。留め具は一般的な尾錠タイプになっています。
初期設定の難易度は“普通”
いざ、腕に装着――となる前に、まずは初期設定を済ませなくてはなりません。同梱されているスタートガイドに従って、スマホから専用アプリ「Health Mate」をインストール。アプリを起動したら、使用端末に「Steel HR」を選び、画面指示に従ってペアリングを実行します。同期やアカウント登録のために少々手間がかかるので、時間に余裕があるときに行いましょう。
初期設定が完了したら、ディスプレイが点灯。そのまま腕に装着して、使用していきます。心拍数を測定できるため、装着位置は手首の骨から1cmほど上の部分が理想。タイト過ぎず、ブレない程度にバンドで固定するといい感じに。
余談ですが、筆者はノキアに買収される前の「Withings」の体重計を利用していました。同アプリで使用するアカウントはそれと同一のものでOK。以前にWithings製品を使ったことがある人、あるいはいまも使い続けている人は、同アプリ内にログを引き継げます。
ディスプレイで心拍数を確認可能
ディスプレイに表示される項目について確認しましょう。項目を列挙すると、「日付」「心拍数」「ステップ(歩数)」「移動距離」「消費カロリー」「アラーム(の設定時間)」「バッテリー残量」の7つとなります。
使い方はシンプルで、リューズを押すと次の項目が表示される仕組み。切り替えの順番は片方向のみなので、一つ前に戻るといった操作はできません。「日付」以外の項目はなしにすることもできるので、必要最低限の項目のみを表示するようカスタマイズしておくと、ストレスなく使用できるでしょう。
なお、項目が切り替わる際には「アイコン」→「数値」という順番で表示されます。そのため、数値情報を視認できるまでに、約1秒の間が存在。例えば、心拍数の項目を表示させる場合、「ハートマーク」→「心拍数の値」のように切り替わるので、素早く情報を確認したいときには、少しもたつく印象を受けました。これはディスプレイのサイズが限られているため仕方ないですね。
また、ディスプレイには、常に情報が表示されているわけではありません。Steel HRをしばらく放置しておくと、ディスプレイは暗転して、黒い丸になります。カラーバリエーションとしては36mmモデルが白・黒、40mmモデルが黒のみとなっているので、黒丸の存在も考慮して選択するとよいかも。
精度にこだわらなければ運動のログもとれる
スタートガイドを読んだところ、リューズを長押しすると、「ワークアウトモード」が起動するとのこと。細かい説明は一切ないので、恐る恐る試してみます。
リューズを1~2秒間長押しするとブルッと振動があり、ディスプレイの表示が「経過時間」と「心拍数」に限定されました。2項目は両方同一画面に表示されますが、片方が大きめに。リューズを押すと、大小が入れ替わる仕組みです。
運動の検出は、運動後に自動で行われます。全種目を検証したわけではありませんが、「ウォーキング」「ランニング」「スイミング」などのワークアウトのほか、「卓球」「バレーボール」「ダンス」など数十種のアクティビティも自動で検出可能。よく判別できなかったアクティビティは「その他」に分類されました。ちなみに、中には「ボクシング」などもあり、“腕時計を付けたまま利用する人がいるのだろうか”と疑問に思うことも多々……。
さて、実際に検証してみたところ、ディスプレイのサイズは、ワークアウト中に経過時間と心拍数を確認するには、やや小さく感じました。汗ばむ程度の軽いランニングなら問題ないですが、高強度のエクササイズを行う人には物足りないサイズです。
心拍数の誤差については、Life Fitness社製のトレッドミルでランニングした際に、マシンとSteel HR間で2~3bpm程度に収まっていました。カジュアルに運動のログを残したい人にとっては、十分に実用的だと思います。もちろん、装着方法によって誤差は上下するのでご留意を。
こうした運動のログは「Health Mate」アプリで確認可能。ランニングマシンで10分走ったときには、ほぼ正確にログが残っていました。カロリー消費量の計算も現実的な数値だったので、ある程度参考になるはずです。
一方、水泳を行った場合、クロールは水泳と認識されましたが、平泳ぎは検出されず。また、プールから出て移動する徒歩がアクティビティとして検出されてしまい、水泳中の運動と併せて「その他」として統合されてしまうこともありました(※ごく一部の施設を除き、国内の一般的なプールではウェアラブルデバイスの使用が許可されない場合が多いのでご注意ください)。泳いだはずの距離も明らかに多く算出されてしまっており、精度にはやや疑問も残ります。
多種目の自動検出自体は手間がかからず便利ですが、種目によっては測定精度にあまり期待しない方が良いかもしれません。
とはいえ、「心拍数を常にモニターできる」のは、種目を問わずに参考になること。ログもアプリから確認可能。平均値とピーク(最大値)を知ることができるので、運動強度を後から確認するには役立ちそうです。
通知は一部アプリのみ
Steel HRは、スマホからの通知を連携します。しかし、対応アプリはごく一部。具体的には、「着信」「メッセージ」「カレンダー」の3つのみとなり、LINEの新規メッセージなどは反映されません。
通知時にはバイブレーションが作動します。ややくすぐったく感じるような、キレのある振動が特徴的です。
普段からスマホをカバンに入れて持ち歩く人や、スケジュールをカレンダーアプリで一貫して管理している人は相性が良いでしょう。一方、TwitterなどのSNSや、株価・ニュースなどをいち早く手元で確認したいという人にとってはやや物足りないかもしれませんね。
こんな人にオススメ → 都市部でカジュアルに運動を楽しむ人
一言でスマートウォッチと言っても、Appleの「Apple Watch」を始め、Googleの「Android Wear」搭載スマートウォッチ、文字盤がアナログでスマホと連携するいわゆる「コネクテッドウォッチ」など、様々な選択肢が存在します。
Steel HRは「文字盤はアナログが良い」という時計が好きな人、「軽いジョギングをたしなむ」ように軽めの運動習慣がある(あるいは身に着けたい)人、そして「心拍数などのデータを手元で確認したい人」にオススメできる一品。価格も比較的手ごろで、手を伸ばしやすいと言えます。一方で、ワークアウトの測定精度や多機能さの面では、限界があるのも事実。測定精度や多機能さを求める人にとっては、GPSや電子マネー決済機能を搭載するApple Watchや、筋力トレーニングの測定などもできるAndroid Wearなども併せて検討してみると良いでしょう。