アメリカのラスベガスでは、世界最大のエレクトロニクスショー「CES」が開催されています。今年のイベントはAIアシスタントの話題で持ちきりですが、ポータブルオーディオも負けていません。ゼンハイザーやAKGのフラグシップモデルなど、ハイエンド系の注目製品を一気にご紹介していきましょう。
ゼンハイザー 密閉型のフラグシップモデル「HD 820」
2009年に発売されたゼンハイザーのフラグシップヘッドホン「HD 800」は、いまは珍しくなくなった10万円を超える“高級ヘッドホン”の先駆者であり、レジェンド的なモデル。2016年には本機のエンハンスモデルである「HD 800 S」が発売され、2018年には本機のドライバーユニットをベースにした、密閉型フラグシップモデルの「HD 820」が登場します。アメリカの販売価格は2399.95ドル(約26万円)になります。アメリカでの発売時期は初夏ぐらいになる見込みです。
HD 800 Sのサウンドをそのまま密閉型にしたというヘッドホンは、ハウジングに強化ガラスをカーブさせたカバーを採用。イヤーカップ内部の音の響きをコントロールしています。ブースで実機を試聴してみたところ、高解像で力強く開放的なサウンドを楽しむことができました。聴感上のバランスがフラットでありながら、すべての帯域の音が鮮やかに聴こえてきます。ゼンハイザーの担当者によれば、音質はまだ最終段階まで仕上がっていないとのこと。発売される頃にはどんなスゴい音が聴けるのでしょうか。とても楽しみです。
AKGから最上位Nシリーズのフラグシップイヤホン「N5005」
AKGが現在展開するラインナップの中でも最上位ラインのNシリーズに、トップエンドのイヤホン「N5005」が発表されました。アメリカでの販売価格は999.95ドル。ハーマンインターナショナルの担当者に日本国内での展開を尋ねたところ、発売時期は3月頃、価格は10万円前後で検討しているそうです。なお本機が発売された後も、現在のフラグシップである「K3003」は販売を継続します。
9.2mmのダイナミック型とクアッドBA型という4ウェイ・5ドライバー構成。5つもドライバーが入っているのにハウジングがとても小さく、ふだんはN30を愛用している筆者が身に着けてみても違和感を感じないほど装着感は良好でした。ブラッククロームの仕上げもスタイリッシュ。
サウンドは現在最上位の「N40」の華やかな中高域の雰囲気をそのままに、透明度の高い中低域を厚み、クオリティともに一段とリッチにしたような感覚です。ボーカルの鮮明な定位と立体感に圧倒されました。
試聴の機会が限られていたので、N40やN30にも搭載されているアコースティックチューニングフィルターは「リファレンスサウンド」で聴いていますが、フィルターはN40よりもさらに1種類多い「Bass Boost/Reference Sound/Semi-High Boost/High Boost」の4種類を同梱しています。
3.5mmアンバランス端子のほか、2.5mmバランス端子のリケーブルを同梱。本体側はMMCX。本機をワイヤレスイヤホンとしても楽しめるようにBluetooth対応のドングルケーブルも付いてきます。ワイヤレス再生は最長8時間対応。キャリングケースや多種イヤーチップも同梱されてきます。豊富な同梱品と音楽再生の実力を考えれば、プレミアムグレードのイヤホンのなかではかなりコストパフォーマンスの高さが感じられるイヤホンです。
ユーザーに合わせてカスタマイズできるベイヤーのテスラヘッドホン
ベイヤーダイナミックは独自の高磁力テスラドライバーを搭載したハイレゾヘッドホン「AMIRON HOME」のワイヤレスバージョン、「AMIRON WIRELESS」の試作機をCESに展示しました。ベイヤーダイナミックの担当者は「まだコンセプト段階の製品なので価格や発売時期は未定」と語っていましたが、かなり最終製品に近いレベルまで作り込まれていました。
ワイヤレスオーディオのコーデックはハイレゾグレードのaptX HDや、低遅延なaptX LL、iOSデバイスとの組み合わせに最適なAACをサポートしています。同担当者によれば「ピュアオーディオのリスニングだけでなく、様々なホームエンターテインメントをこれ1本で楽しめるようにしたかった」ため、様々なコーデックに対応したのだといいます。なおケーブルによる有線リスニングはハイレゾ対応です。
会場でiPhoneにワイヤレスでつなぎ、つないでラテンジャズの楽曲を聴くことができました。抜けが良く立体的な空間、シャープな音像の再現力に、さすがテスラドライバーならではの余裕が感じられます。右側のイヤーカップがタッチセンサーリモコンになっていて、音楽再生やハンズフリー通話のコントロールも快適。日本で発売されたテスラドライバー搭載ヘッドホン「AVENTHO WIRELESS」も対応しているスマホアプリ「MIY(Make it yours)」を使って、ヘッドホンによる音の聴こえ方をユーザーの聴覚に合わせてパーソナライズすることも可能です。
B&Oのノイキャン+ワイヤレスヘッドホンがアップデート
北欧デンマークのオーディオブランド、B&Oのヘッドホンのフラグシップモデルが最新モデルにアップデートされました。なお、ブランドの名前もB&O PLAYから、ホームオーディオ製品と徐々に統一しながら元のルーツである「B&O」へ切り替わるそうです。
現行のフラグシップモデルからアラウンドイヤーの「H9」は「H9i」に、オンイヤーの「H8」が「H8i」に生まれ変わります。「i」のアルファベットには「individual(個性)」などの意味が込められているそうです。本体色はブラックとナチュラルの2種類。H9iが499ドル(約5万5000円)、H8iが399ドル(約4万4000円)になります。日本での発売も来月頃に実現しそうです。
デザインはディティールをブラッシュアップして、イヤーカップをスリムに、ハウジングの外形を少しだけ大きくしています。イヤーカップの内側の容積にゆとりを持たせて密閉性も高めました。
H8に搭載されていたタッチパネルコントローラーはH8iではボタンタイプのリモコンに変更され、機能をオンにすると一時的に再生中の音楽をストップして外の音を取り込む「トランスペアレンシーモード」が追加されています。
H9iは前機種と同じようにタッチパネルコントローラーを設けています。充電式のバッテリーパックを着脱できるようにしています。またイヤーパッドも着脱交換ができるので、経年劣化にも強く、長く愛用できるヘッドホンです。
本体にはノイキャン用に2つ、クリアなハンズフリー通話用に2つのマイクを乗せています。CESの会場で試聴してみたところ、ノイズキャンセリング機能は周囲に大きな音で鳴っている音楽も聞こえなくなるほどの効果。サウンドはH8/H9のナチュラルバランスから、やや中低域の力強さを加えてメリハリの効いた音に仕上げているようでした。
ヘッドホンのほかにも、現在国内でも販売好調の完全ワイヤレスイヤホン「E8」の限定カラーバリエーションモデルが展示されていました。価格や発売時期は未定ですが、アパレルやインテリア系のショップなど通常とは異なる販路で展開されるそうです。オールブラック、オールホワイトの艶やかな色合いが物欲を刺激します。
ほかにもJBLからは、最上位シリーズの「EVEREST」にGoogleアシスタントを搭載するワイヤレスヘッドホンとイヤホンが発売されます。ラインナップはヘッドホンがアラウンドイヤーの「JBL EVEREST 710GA」とオンイヤーの「JBL EVEREST 310GA」。イヤホンが「JBL EVEREST 110GA」になります。ヘッドホンは右側イヤーカップの表側にセンサーが内蔵されていて、手を触れた状態で音声コマンドを入力すると答えを返してくれます。
JBLのほかにもソニーが発売中のヘッドホン・イヤホン「1000X」シリーズがソフトウェアのアップデートによってGoogleアシスタント機能を内蔵することも発表されています。今年は同様にAIアシスタント対応のポータブルオーディオが一気に増えそうです。