【きだてたく文房具レビュー】机上にスペースを創り出す棚
オフィスのデスクは、だいたい幅1200㎜×奥行き700㎜というあたりが標準的。この面積で広々と仕事ができるかというと、まずそんなことはない。
まずPCとキーボードにマウス、モニターがあって、下手するとノートPCも1台あって、資料を並べてペン立てを置いて……となると、あとはA4の書類を広げたらデスクの表面は見えなくなる、という感じだろう。
せめて、もうちょっと広い場所で余裕を持って仕事ができれば……と思ったとき、まず手がけるべきは新たな“土地開発”、いや“開拓”だ。1200×700㎜程度のデスクトップはもう限界なんだし、もっと手つかずの場所……天井まで広がる“タテの空間”を新たに宅地造成するべきなのだ!
そういう意欲に溢れたオフィス環境改善アイテムが、キングジムから発売されているので、ぜひ紹介したい。
液晶モニター上空を小物スペースに活用
かつてPCのモニターがブラウン管だった時代(15年くらい前)、奥行きのあるモニターの上は、クリップケースや卓上カレンダーなどの小物置きスペースとして機能していなかっただろうか。いまや、薄い液晶モニターがベーシックになってしまったせいで、ブラウン管モニター上にあった小物たちは行き場を失ってしまったのだ。
じゃあそのスペースを復活させればいいじゃん? ということで発売されたのが「ディスプレイボード」だ。液晶モニターの上にセットするだけで、500㎜×168㎜(幅200㎜タイプもある)という広い面積の小物置きスペースが出現してしまうのだから、まさにかつて失われた土地の再発見ツールである。
取り付け方は簡単で、まずボード手前のフチを液晶モニターの上辺に引っかけるように載せたら、あとはアーム2本を曲げてモニター背面に突っ張るようにセットするだけ。これで、安定したフラットな棚が出来上がり。
アーム先端の接地部分は上下左右に動くので、iMacのように背面が湾曲しているタイプのモニターにも、安定して取り付けることが可能だ。
ボード自体は幅500㎜タイプで耐荷重1kgまでなので、デスク上でかさばっていた小物あれこれを載せるぐらいなら、まず問題はなし。
着座状態で手を伸ばすのには少し高い位置に天板が来るので、できれば、椅子から立ち上がったときに手にするもの、もしくは単に視線を向けるだけのものを配置するのがベストだ。筆者はスマホやPC作業用のメガネ、卓上カレンダーなどを置いている。
さらに広大な面積を空中に生み出すには?
筆者にとってディスプレイボードは、もはやこれなしではデスクトップの土地運用が立ち行かないぐらいの存在だが、欠点がひとつある。
液晶モニターはデスクに1台しかないので、これ以上の増設が難しいということだ。
そういう苦情がキングジムに寄せられたかどうかは不明だが、それじゃあという感じで昨年末、新たに発売されたのが、空中に増設可能な棚「マグトレー」だ。
吸着部に強力な磁石を内蔵し、スチール面に貼り付けられるため、パーテーションやスチールラックの側面、デスク引き出し面などにバンバンと棚が増やせるのである。
天板の面積は320㎜×230㎜と、ありがたいことに書類を入れたA4クリアホルダーをそのまま平置き可能。
さらにネオジム磁石のパワーで、耐荷重はなんと3kg。これなら書類を入れたリング式ファイルを空中に並べて立てておく、なんて使い方もできるだろう。
磁石は吸着部の上辺に集中しているので、しっかりと貼り付く一方、外すときは下から軽く持ち上げるだけで取り外せるようになっている。
また、漏れた磁力を利用して、クリップをまとめて貼っておけるクリップポケットも付いており、置いた資料を整理するのに外したクリップをひとまずここにくっ付けておく、なんて使い方もOKだ。
オフィス内であれば、ホワイトボード脇に貼ってマーカーやイレーサーを置いたり、受付近くに貼って呼び出し用の内線電話を設置したり。アイデア次第でいくらでも“土地”が簡単に生み出せるのは、とにかく便利のひと言である。
マグトレー、ディスプレイボードとも数千円と、少々お値段はするが、しかし都会の狭小オフィスで棚の分の面積が“無”から生み出せるのだと考えれば、ハッキリ言ってまったく高くはないはずだ(なんなら、面積あたりの地価を計算してみるといい)。
そういう意味では、こういった空間の有効活用系アイテムは今後もっと注目されるジャンルになるだろう。
【著者プロフィール】
きだてたく
最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。