私にとってはじめての腕時計は高校にあがるとき両親が買ってくれたセイコーのメタルバンドで文字盤がブルーのものだった。とても気に入り10年以上も愛用した。1980年代後半からはカジュアルなスウォッチに夢中になり、ニューモデルが出るたびに買ってコレクションしたものだ。
その後、大枚をはたいてカルティエを手に入れた。すでにアンティークモデルになっている茶色の革ベルトのカルティエだが、メンテナンスをしながら今も正確に時を刻み続けている。一流ブランドの腕時計を身に着けたことで得るものは大きかったように思う。仕事上では名刺交換の際、相手がチラリと私の左腕を見ると対応がよくなったように感じることが増えた。やはりビジネスシーンでは“いい腕時計”が不可欠になることをその時に知ったのだ。
西郷どんはロンジンを愛用していた!
ところで、一流ブランドの時計を日本ではじめて身に着けたのは誰なのだろう? というのが気になっていたが、それを教えてくれる一冊に出会った。『最新版 腕時計パーフェクト入門』(ウォッチナビ・編/学研プラス・刊)だ。
この本には腕時計にまつわる偉人、著名人の知られざるエピソードが載っていて、これがとてもおもしろい!
西郷隆盛が愛用していた懐中時計はスイスの名門ロンジン製だったのだそうだ。写真撮影機など欧米技術に造詣の深かった藩主の島津忠義から明治維新の功績を称えられ金無垢懐中時計が贈られたと伝えられている。1869年から製造されたロンジンの初期の懐中時計で日本最古の同社モデルだったという。現在は個人所蔵品となり、残念ながら一般公開はされていないそうだ。
パテックフィリップの日本人顧客第1号は?
また、ジュネーブにあるパテックフィリップ本社の顧客台帳にある最も古い日本人の顧客名は、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜の弟で、水戸藩最後の当主だった徳川昭武だという。昭武は1867年にナポレオン3世の要請を受け、将軍の名代としてパリ万博へ参加し、そのままパリに留学。その間に欧州を歴訪し、スイスに立ち寄った。このときパテックフィリップ本店を訪ね、イエローゴールドの懐中時計2点、ローズゴールド製1点を購入したと記録されているそうだ。
さらに本書には、昭和天皇がシチズンの懐中時計を愛用していた話、オークションで落札されたアインシュタイン愛用のロンジンの話、エルヴィス・プレスリーが愛用したハミルトン“ベンチュラ”の話も紹介されている。
一生ものの腕時計を見つけるために
さて、時計ブランドを一挙に見たい! 自分に似合う腕時計はどう選べばよいのか? メンテナンスの方法は? など、腕時計の基本のすべてを教えてくれるのが本書だ。
世界には多くの時計ブランドがあるが、この本では製品の紹介だけでなく、それらの歴史、哲学まで教えてくれる。
時計業界を牽引する巨大グループの存在をご存じだろうか? たとえば、スイス時計業界を支えるのが“スウォッチグループ”で、オメガ、ロンジン,ブレゲ、スウォッチ、ティファニー、ハミルトンなどがここに属する。“リシュモングループ”はカルティエを核とするグループで、ダンヒル、ピアジェ、ヴァンクリーフ&アーペルなどが属する。
“LVMHグループ”は高級ブランド市場を牽引する複合企業で、ルイ・ヴィトン、ブルガリ、タグ・ホイヤー、ゼニス、ディオールなどが属している。このほかにも、フランク・ミュラーが率いる個性派集団の“ウォッチランドグループ” アメリカ資本の“モバードグループ” などがある。
これとは別にグループには属さずわが道を進むブランドもある。家族経営のパテックフィリップ、オーデマピケなどがこれ。ロレックスについては公益財団法人という特殊な経営体制を敷いているため、今後もグループに属するなどの話題が出てくる可能性はほぼないそうだ。
本書には78ブランドの腕時計が一挙に紹介されている。それぞれのブランドの歴史、定番モデルなど知っておきたい情報が満載だ。
腕時計の基本をすべてマスター
さらに、この本では、どうやって機械式時計が正確に時を刻むのか? という原理から詳しく解説している。時計の仕組み、種類、買い方、使い方、ケアの仕方、機能の維持、保管法など知っておきたい基本知識を徹底レクチャー。加えて、時計を語る上で欠かせない時計師、デザイナー、カリスマたちの偉人列伝も読み応え十分。巻末にある時計用語391語の腕時計キーワード大事典もとても役に立つ。
【著書紹介】
最新版 腕時計パーフェクト入門
著者:ウォッチナビ編集部(編)
出版社:学研プラス
腕時計専門誌「ウォッチナビ」総力編集。腕時計の仕組みやスペックなどの基礎知識からメンテナンス法、最新モデルを掲載したブランド名鑑まで、時計に関するトピックを余すところなく掲載。腕時計キーワード大事典付き。コレ一冊で腕時計のすべてがわかる!
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