日本は地震大国だ。近年では2011年3月11日の東日本大震災が記憶に新しい。それより前にも、阪神淡路大震災や関東大震災といった大規模な地震があり、日本の歴史が大きく変わった。
なぜ「地震予報」がないのか?
過去に数多くの大地震に見舞われている日本だが、我々が地震に対してできることはとても少ない。せいぜい非常時に備えて物資を揃えておくことくらいだろう。
そこでふと思った。なぜ、これだけ地震の多い日本で、地震予知の技術が確立されていないのだろうかと。
これだけの地震発生データがあるのだし、それなりに研究もされてきていることだろう。科学も進んでいるはずだし、「●月●日●●で震度3の地震が発生します」といった予想、いわゆる「地震予報」をするくらいできそうなものだ。
地震を予知した事例はゼロ
しかし、実際には地震の予知というのは不可能に近いようだ。
『確率と統計がよくわかる本』(矢沢サイエンスオフィス・編著/学研プラス・刊)は、社会と密接した存在の「確率」と「統計」についての読み物集。身近な現象を取り上げて、そこに確率と統計がどう関わっているのかについてわかりやすく解説している。
確率・統計が役に立つという話だけではなく、人をだます道具としても使われているという話も多い。
本書に「地震発生確率が“無意味”なわけ」という項目がある。ちょうど地震について考えていたので、興味深く読んだ。
実際に、これまで地震を科学的に予知したという事例はゼロということ。日本でも地震予知を国が行っている(現在は地震予測という表現になっている)が、「30年以内に震度6以上の地震が起こる確率は50%」といったような、正直何の役にも立たない情報しか得られない。
なぜ地震予知はできないのか。その理由のひとつが、地震のメカニズムが完全にパターン化されていることだ。大地震の原因は「プレートテクトニクス」とされている。地球上にあるプレートの位置が動き押し合った結果、断層がずれて大地震となる。
この原理自体は知られているものだが、これがいつどこで起こるのかがわからないのだ。
いたるところに存在する断層のなかのどの断層に加わっている圧力がいつ限界を超えるかは、どれほど地中に穴を掘って調べてもわかりようがない。
(『確率と統計がよくわかる本』より引用)
それでも、地震の研究者は先ほど述べたように、何十年先の間に大地震が何%の確率で起こるというような見解を出す。1%でも地震が来ると言っておけば、予想は当たったことになるからだ。
アメリカUGSGの見解は「地震予知は不可能」
アメリカの「USGS」(アメリカ地質調査所)は、1960年代に地震予知が可能かどうかの研究を行った。その際、地中3600mの穴を掘り、そこに汚染水を流し込むなど、人為的に地震を起こす実験を数多く行い、予知できるかどうかの可能性を探ったようだ。
これにより、地震発生のメカニズムのヒントにはなったが、実際に予知できるかどうかについては「不可能」と判断。それ以降、アメリカでは地震予知研究は行われていないということだ。
地震は、ランダムかつ複雑な要素で起こるもの。これを日時と場所をピンポイントで予知するのは、原理的に不可能なことのようだ。
地震の長期予想は何の意味もない
現在、日本には「地震調査研究推進本部」というものが設置されている。そこでいろいろな確率が公表されている。「今後30年以内に震度6以上の揺れに見舞われる確率」というような図があるが、「30年以内」というのがどうもよくわからない。
2003年に発表されたものだが、明日地震が起きるのか、来年なのか、2030年なのかがわからなければ、無意味だと思うのだ。せめて1週間や1ヶ月単位で予測してもらわなければ、実用的なデータとは言えないだろう。地震はいつ起きるのかわからない。そう思うしかない。我々にできるのは、いざというときのために備えておくことくらい。
天災は忘れたころにやってくる。
この言葉を肝に銘じておくのが、一番だろう。
【著書紹介】
確率と統計がよくわかる本
著者:矢沢サイエンスオフィス(編・著)
出版社:学研プラス
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