「もうダイソンはコード式クリーナーを作りません!」。ダイソンの創業者であり、チーフエンジニアのジェームズ・ダイソン氏はこう高らかに宣言しました。そう言わしめたコードレスクリーナーの新製品「Dyson Cyclone V10」(ダイソン サイクロン ブイテン、以下V10)とはどういう製品なのか? ジェームズ・ダイソン氏が来日し、自らプレゼンを行った発表会に参加してきました。
↑ジェームズ・ダイソン氏
「コードレスでコード式と同じパフォーマンス」がミッション
V10の開発に向けた最初のブリーフィングでダイソンのエンジニアが与えられたミッション。それは、「コード式と同じパフォーマンスを発揮するコードレスクリーナーを作りましょう。それができるだけの技術をわれわれは既に持っているのだから」だったそう。モーターから本体形状、ヘッドまで、ありとあらゆるパーツを見直した結果、制作したプロトタイプは2500体以上にものぼるとのことです。
↑エントリーモデルのDyson Cyclone V10 Fluffy
5100億円以上を投じてモーターを大幅に改良
まずは、心臓部であるモーター。ダイソンはこれまで日本円にして5100億円以上をモーターの開発に投資してきましたが、その集大成といえるのがダイソンデジタルモーターV10(以下、DDM V10)です。前モデルのV8に比べて重量が約半分の125gと軽量化に成功。にもかかわらず、回転数はダイソン史上最高速の毎分12万5000回転にアップしています(V8は225g、毎分11万回転)。
↑DDM V10を持つジェームス・ダイソン氏。こんな小さいモーターが毎分12万5000回転のパワーを持っています
モーターの部品には衛星など航空宇宙工学に使われる素材を採用し、軽量化と剛性の両立を実現したとのこと。また、制御基板に圧力センサーを搭載し、使用場所の高度・気圧等を把握・分析、異なる環境下でも性能が変わらないよう微調整する機能も搭載しました。なお、DDM V10の開発には10年かかったそうです。
↑DDM V10のカットモデル。8極設計で、1秒間に最大1万6000回電流を切り替えてインペラーを駆動させます
主要部を直線状に配し効率的な空気の流れを作った
本体形状も大きく変更されました。従来はパイプに対して直角にサイクロン部分が配置されていましたが、V10ではパイプ、モーター、サイクロンを直線上に配置しています。同心円状に配置された14個のサイクロンの内部の空気は最高時速193kmに達し、7万9000G以上の遠心力を生み出します。これにより、大きなゴミから目に見えない微細な粒子までを空気から分離し、捕集するのです。
↑上が従来モデルで下がV10。パイプ、サイクロン、モーター、フィルターを直線的に配置することで、無駄なく効率的な空気の流れを作ります
バッテリーパックの改良で運転時間が60分に延長
バッテリーパックも改良されています。7セル構造でV8より小型・軽量化されたにもかかわらず、稼働時間は60分に伸びています(モーターヘッドを使用しない場合)。
「われわれのトリガー方式がここで重要になってくる。トリガーを離せばスイッチが切れることで無駄な電力を消費せず、かつ、バッテリーセルが冷却され、本来の性能を回復する時間を与えてくれる。これにより、実際の運転時間はさらに30%ほど伸ばすことができる」(ダイソン氏)
トリガーを握っている時間は1回あたり5秒程度。それを繰り返すことでバッテリーの無駄使いがなくなり、モーターヘッドを使用しない場合では最長80分まで運転時間を伸ばすことが可能だといいます。
形状の改良でゴミ捨てや家具の下の掃除もより簡単に
ゴミ捨てもより簡単になりました。本体からホースを外し、クリアビンの横の赤いレバーを操作することでワンタッチでゴミ捨てが可能。ゴミ箱に向かって直線的に操作できるので、周りにゴミを撒き散らすことなくスムーズに捨てられます。
↑腕の動きから一直線にゴミを捨てられるので、ゴミ箱から外すことなく、ストンと捨てられそうです
↑本体下にぶら下がっていたクリアビンがなくなってので、ソファの下にもヘッドが入りやすくなりました。ヘッドは90°回転するので家具の隙間も掃除もカンタン
V10のサイズ/質量は、幅250×長さ1232×高さ245mm/2.48kg。価格は、通常モデルのDyson Cyclone V10 Fluffy(フラフィ)が7万5384円(税込、直販ストア先行販売限定特価・以下同)。ヘッドやアタッチメントなど付属ツール10個が同梱された最上位機種のV10 Absolutepro(アブソリュートプロ)が9万9144円。
↑上位機種に付属するアップトップアダプターは自在に曲げられるので、高いところの掃除もラクラクです
「すべての掃除機に取って代わる」と語る納得の仕上がりに
「非常にパワフルで使いやすいコードレスクリーナーが完成した。われわれはこれがクリーナーの未来形と考えており、これがすべての掃除機に取って代わるだろう。V10の登場をもって、コードのついたすべてのクリーナーに別れを告げる」と、ダイソン氏は自信に満ちた笑顔を見せました。
掃除するたびにコードを伸ばしてコンセントに差し込み、大きな掃除機本体を後ろに引き連れて家中を掃除して回るキャニスタータイプよりも、さっと取り出せてさっと使えるコードレススティックは確かに便利です。以前は、コードレスは吸引力が弱いという弱点がありましたが、それをダイソンが打ち破り、ここにきてさらにバッテリー問題も解決しました。
↑ハンディ使用時。クリアビンがぶら下がっていないと重心が安定して、むしろハンディ時が使いやすく感じました
現在、国内市場におけるスティックタイプの台数構成比は4割弱で、キャニスタータイプと拮抗しています。また、スティックタイプのうち7割がコードレスとなっており、既にコードレススティッククリーナーは成長著しい分野です。V10の登場によって、コードレススティッククリーナー市場の拡大がさらに加速することは間違いないでしょう。
協力:楽天市場
ダイソンはEV(電気自動車)分野への参入も表明していますが、V10による小型パワフルモーターとロングライフバッテリーの発表はその試金石となりそうです。今後の動きから目が離せませんね。