東京電力グループのなかで電力・ガス小売事業を行っている東京電力エナジーパートナー(以下東電EP)と、エネルギー業界で注目を集めるパネイルの2社が新会社「PinT(ピント)」を設立。4月24日に行われた記者会見では、IT技術とエネルギーを融合し、電気やガスを全国販売する事業を展開することを発表しました。新会社設立の狙いは何なのか、一般家庭にはどういったメリットが提供されるのか、詳しく見ていきましょう。
ユーティリティ3.0の先駆者として新しい時代を切り拓く!
パネイルは、大手IT企業・DeNA出身の名越達彦氏が2012年に設立した勢いのあるスタートアップ企業。太陽光発電業者のマッチングサイトからスタートし、電力自由化を期にAIとビッグデータを利用した電力流通プラットフォーム「パネイルクラウド」を提供しはじめたことで大躍進を遂げました。
このパネイルクラウドによって、従来非常に煩雑な手作業が多かった電力小売事業のオペレーションを一気に簡略化。電力の使用量を計測するスマートメーターのデータをクラウドで取り込み、電力小売事業者が電力の需給を管理することが容易になりました。
今回の東電EPとパネイルによる新会社設立は、両者のメリットが合致した結果とのこと。
東電EPの常務取締役・田村 正氏は「株式会社PinTの設立により、これまでサービスをお届けできなかった全国のお客様にサービスをお届けできるようになりました。総合エネルギーサービス企業として活動の幅を広げ、多様化するお客様のニーズに対してスピーディーに対応する、これがPinT設立の我々の思いでございます」とコメント。
また「東電EPが持つ電気事業のノウハウと、パネイルさんのベンチャー企業ならではのスピードと卓越したIT技術を融合することで、これまでにない価値をお客様に提供してまいります」(田村氏)と、記者会見で新会社のメリットを強調しました。
一方で、パネイル代表取締役社長の名越氏は「パネイルは、パネイルクラウドを研究開発して実証実験を積み重ねてきた会社です。私たち技術者としては、日本で一番大きな顧客網をもつ東電EPさんにシステムを使っていただくことは本懐であり、また、これからユーティリティ3.0の世界を実現するなかでより弾みがつくのかなと思います」とコメント。
「ユーティリティ3.0」とは、急速に普及する分散型電源や蓄電池、デジタル技術などのテクノロジーを活用し、他業種のプラットフォームと融合するエネルギー事業の新形態のこと。ますます進化するエネルギー技術の分野で先行するため、両者が手を結んだ形です。
新会社・PinTの代表取締役社長に就任した田中将人氏は、ITとエネルギーを融合させるPinTのコンセプトについて、「私たちPinTは、電気を“モノ”として量り売りする会社ではなく、お客様の料金以外のニーズにも幅広く“ピント”を合わせて、お客様に新しい価値を提供して電気でできる“コト”を販売したいと考えています。また、ユーティリティ3.0の先駆者として新しい時代を切り拓いていきます」と抱負を述べました。
6月1日開始予定のサービス「PinT でんき」は使えば使うほどお得!
ではこの新会社PinTの設立で、私たちにとっては具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。いまのところはっきり見えているのは、2018年6月1日から全国(※沖縄県を除く)で開始予定のサービス「PinT でんき」です。これは、毎月の電気料金の総額に応じた割引「PinTアカウント割引」が適用されるお得な電気料金プラン。
基本単価は各地域の電力会社の電気料金プランですが、金額に応じて段階的な割引が適用されます。具体的には5000円までの部分は1%、5001円~2万円までの部分は3%、2万1円~5万円までの部分は5%、50001円以上の部分は7%の割引が受けられます。
また、電気の使用場所が複数ある場合には、1つの電気料金としてまとめ払いが可能な点も注目ポイントです。たとえば自宅と単身赴任先や、自営業者の自宅と事務所などをまとめることができ、電気料金の総額も増えて割引額も大きくなります。
また、2018年5月1日からは不動産管理会社向けサービス「PinT with 賃貸」も開始予定。不動産管理会社向けに入退居時の部屋の電気契約の切り替えや複数の建物での電気料金の一括支払いがスムーズになるという内容です。こちらは、一般家庭には直接のメリットはないかもしれませんが、同社が掲げる“新しい価値の創出”が端的に表れたサービスと言えるでしょう。
さらに電気だけでなく、都市ガスの販売についても、2018年度中に関東エリアで提供できるように準備を進めているとのこと。将来的には電気とガスのセット割も期待できそうです。
設立されたばかりの新会社PinT。IT技術とエネルギー事業を融合させることで、電力自由化の激しい競走のなかで新風を巻き起こせるか、注目です。