今さらながら、FacebookおよびTwitterと本気で取り組む気持ちを固めた。
Facebookはフムフムの執筆に不可欠なので仕事中心で展開しているが、Twitterには個人的な内容にちょいちょいプロモーションめいた文章を織り込んで書いている。
SNSとの距離
SNSという媒体はどこかイキった感じが出てしまう。そう思い込んでいるところがあったので、なんとなく距離を置いていた。世の中に向けてしょーもないことをアピールしても意味がないと感じていたのも事実だ。気が変わったきっかけは、知り合いの編集者のひとことだ。
「書いた文章を読んでもらってはじめて存在を知ってもらえるのだから、つぶやきでも宣伝でも、アカウントがあるならどんどん書いたほうがいい」
そう言われた。
書き甲斐のなさ
実は、半年ぐらいブログをやっていた時期がある。書き始めた頃は毎日閲覧数を確認して、月ごとの数字を見て喜んだりへこんだりしていたんだけれど、徐々に「書き甲斐のなさ」みたいなものを感じるようになり、さらに面白くないと思われることが怖くなり、そういう感覚が積み重なって更新が滞りがちになり、結局やめてしまった。
筆者にとって書くという行いは仕事なので、苦にはならない。ただ、オフの時間にも書くとなると強迫観念めいたものが生まれ、発信する楽しさを純粋に感じられなくなってしまったのだ。
編集者からかけられた言葉で、ちょっと考え直した。ブログと違って文章は長くなくてもいいし、ウケを心配する内容でもない。今のところはFacebookもTwitterも楽しめている。ただ、プロモーションのツールとして使いこなすまでには、まだしばらく時間がかかるだろう。
Lineアカウント乗っ取り事件
そんな中、衝撃的な事件が起きた。発端は、うちの奥さんが仲良くしている友だちから来たLine。「ちょっとお願いがあるんだけど」という言葉から始まって、返信する前に「近くのコンビニでビットコインキャッシュポイントカードかてきてくれないかな?」という文章が続く。
「かてきてくれないかな」っていう言い方はすごく変だ。それに、彼女はビットコインとは無関係のライフスタイルを送っているはずだ。すぐに電話をかけて知らせたら、ほかの友だちからもメールやメッセージがあふれるように来ている状態にあることがわかった。
ご存じの方もたくさんいらっしゃると思うが、Lineのアカウントを乗っ取ってビットキャッシュポイントをはじめとするプリペイドカードを買わせ、その番号を聞き出してせしめるという詐欺らしい。
アルファブロガーの独白
筆者はコンピューターにものすごく詳しいわけではない。だから、こういうことがあると「FacebookやTwitterは大丈夫なのか?!」とバタついてしまう。せっかく火をつけ直すことができたSNS熱。発信することの意味までいぶかるところまで逆戻りしそうだ。
そういう筆者が考えさせられた一冊が『ソーシャルもうええねん』(村上福之・著/ウィズワークス・刊)だ。SNS特有の“甲斐のなさ”とか、Line詐欺の根底にあるに違いない“つながっている人に対する安心感”への盲信についての思いも綴られている。
著者の村上さんは、飛び込み営業のような形でCNET(ネットメディア大手)でのブログ連載を勝ち取った、ツイッターで1万2千人のフォロワーを持つ書き手だ。ただ、そんな村上さんでも最初のうちはアクセスが全くない状態がしばらく続いたという。
それでもとにかくブログを書き続けた村上さんは、連載開始3年後の2011年、アルファブロガー・アワード(多くの読者を抱え、大きな影響力を持つブログの書き手に与えられる賞)を受賞する。
本書の基本的な体は、村上さんの5年分のブログを一冊にまとめたものだ。まえがきに、こんな一文が記されている。
そんな僕の「5年分のブログ」を今回、本にまとめました。時代背景に合わない記事を抜いて、多くの加筆をしました。読んでいただくとこの5年の間に浸透してきた「ソーシャル」の危うくて信用できない感じが、よくわかると思います。
『ソーシャルもうええねん』より引用
危うくて信用できない感じ。筆者が漠然と感じていたのも、そういうものなのかもしれない。発信者目線からのSNSサービス年代記という感覚でとらえると実用本というジャンルになるのだろうが、ベースにあるのは、実はきわめて人間くさい要素なのだ。
村上さんは、日曜日の夜に「富士そば」という立ち食いソバ屋さんで一人、290円の盛りソバを夕食にすることが多かったようだ。ソバをすすりながら、片手で持ったスマートフォンでつぶやく。
何の意味があるでしょう? 僕は、今後、人生で何度、一人で富士そばで夕食を食べるのでしょうか? そして、何度、意味のない電気信号を太平洋を往復させるのでしょうか?
『ソーシャルもうええねん』より引用
アルファブロガー・アワードを受賞した人でさえ、“甲斐のなさ”に襲われる瞬間があるのだ。
SNSちょっといい話
ちょっと萎えかけたところで信じられないような話を知ったのは、奥さんの友だちのLineE乗っ取り事件当日だ。タレントのマイケル富岡さんが、以下のような文章を添えてご自身のInstagramに妹さんとのツーショット写真をアップしている。
運命って 人生って すごい… 先日 はじめて妹に会いました。snsに投稿した父のお墓の写真がきっかけで アメリカに妹2人がいる事が分かりました。兄ちゃんを見つけだしてくれた妹ローリー。新しい家族です。感謝です。
マイケル富岡さんInstagramより引用
なんか、大きな可能性を感じる。SNSと本気で取り組む気持ちがまた強まった。
(文:宇佐和通)
【文献紹介】
ソーシャルもうええねん
著者:村上福之
出版社:ウィズワークス
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