長い地球上の歴史において、絶滅した動物が多数いる。その原因のほとんどが、人間によるものだ。
人類誕生以前の地球は、巨大な動物が繁栄していた。巨大な動物ほど活動範囲が広くなり、食料の確保が楽になる。また、敵に襲われることも少なくなる。つまり、巨大な動物は生き残るのに有利なのだ。そのため、地球では何度も巨大動物が進化を遂げていた。マンモスやサーベルタイガーなどがその例だ。
人類の進化が他の動物を絶滅させた
しかし、この現代においては、それほど大きいとはいえない人類が繁栄している。大きな動物が生き残るのに有利なはずだが、今の地球はそうではない。
地球の長い歴史において、何度か大きな転換期があった。氷河期などはその例だ。自然の脅威の前では、身体の大小は関係ない。むしろ、大きな動物のほうが影響を受けやすい。
だが、氷河期以降も絶滅してしまう動物がいる。その理由のほとんどは、人類の手によるものだ。
人間は身体こそ大きくないが、高い知能を持つ。巨大動物とは比べ物にならないくらい小さな身体だが、槍や弓などの武器を開発することで、効率よく動物を狩り、食料を確保する手段を得た。
そう、動物が絶滅する理由のナンバーワンは「人類による狩り」なのだ。
消えたもうひとつの人類
人間の祖先となるホモ(homo)属が地球上に現れたのは250万年前。最初に反映したのはホモ・エレクトス。アフリカで出現し、ヨーロッパからアジアに広がっていった。北京原人などはホモ・エレクトスだ。
アフリカに残ったホモ・エレクトスから進化した種族が、ホモ・サピエンス。これは現代の人類のグループの祖先だ。そして、もうひとつの種族がいた。それがホモ・ネアンデルターレンシス。いわゆるネアンデルタール人だ。
ここでひとつ注意したいことがある。ネアンデルタール人は現代の人間の祖先ではない。なぜなら、途中で絶滅してしまっているからだ。
ネアンデルタール人は、槍を主な武器とし接近戦による狩猟を行っていた。一方、ホモ・サピエンスは槍を遠方に投げる器具、投槍器を発明。これが約4万年前。同時に弓も開発した。
ネアンデルタール人の槍による接近戦と、ホモ・サピエンスの投槍器や弓による遠距離戦。どちらが有利はか一目瞭然。ネアンデルタール人はホモ・サピエンスとの戦いに敗れ、約2万7000万年前、地球の歴史上から消えたのだ。
人類の繁栄は他の生物の犠牲の上にある
我々人類が、今日のように繁栄しているのは、他の生物を食べてきたからだ。地球上から絶滅した動物を紹介している書籍『謎の絶滅動物たち』(北村雄一・著/大和書房・刊)のあとがきにこのような記述がある。
人類はほかの生物を食べて滅ぼすか、あるいは食べるための家畜とした。そうして数を増やしてきた。つまり、私たちがやっていることは、ほかの生物を食いつぶして滅ぼし、我々自身へと変換する作業なのだ。
(『謎の絶滅動物たち』より引用)
このまま歴史が続いていくと、そう遠くない時期に地球は人間だけの星になる。他の生物の命を体内に摂取することで生きながらえた人間は、人間だけになったとき、どうなるのだろうか。
(文:三浦一紀)
【文献紹介】
謎の絶滅動物たち
著者:北村雄一
出版社:大和書房
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