昨今、ジビエブームもあって、さまざまな鳥獣の肉が食卓に上がるようになってきました。今回紹介するのは、ヘルシーで健康にいいことから注目を集めるダチョウ肉。鮮度のよいものを正しく調理すれば、生食も可能なお肉なのです。今回は実際に自宅で食べる機会を得たので、いったいどんな味だったのか、以下で詳しくレポートしていきます!
ボクシングのチャンピオンも愛食するほどのヘルシーさを誇るダチョウ肉
世界最大の鳥、ダチョウ。動物園でよく見かけるこの鳥の肉は、非常にヘルシーなうえ、地球にもやさしい新食材として近年注目を集めています。
ダチョウ肉がどれほどヘルシーなのか、牛肉と比較してみると、カロリーは5分の1、脂質は60分の1、コレステロールは3分の2という分析結果があるほど。ダチョウは筋肉質な動物なので、ほかの食肉と比べて脂が少ないのです。またダチョウ肉は、ダイエットや筋肉増強に効果があるクレアチン、カルニチンも多く含有しており、アスリートからも高い支持を集めています。普段からダチョウ肉を愛食しているというプロボクサーの木村 翔選手は、先日WBO世界フライ級王座を獲得・防衛にも成功しました。
また、ダチョウは病気に強く、少ない餌で大きく育つため、飼育が容易なのが特徴。しかも土壌や水質汚染の原因となる物質を排泄しないため、地球にやさしい動物でもあるのです。
食べるならやっぱり刺身! 部位ごとの味の違いを堪能
そんなダチョウの肉をまずは生でいただいてみましょう。
もも、フィレ、もも、砂肝、レバー、ハツ、ドラムといった部位ごとに味の違いがあり、今回はそのうち、もも、砂肝、レバー、ハツを刺身でを試食してみました。それぞれの味を紹介していきます。
もっともオーソドックスな部位、もも。刺身からステーキまで、どのような料理にも向く万能さが特徴です。筋肉質の赤身はとてもすっきりした味わいで、しつこさがまったくありません。噛みごたえも十分にあり、噛めば噛むほど肉の味が染み出してきます。
「え、これ鳥の肉なの?」と言いたくなるほどクセがありませんから、シカやイノシシといった、ジビエ系の肉が苦手という人にも自信をもっておすすめできる食材です。
そのままでも十分おいしいですが、ごま油や、にんにく・しょうがを入れたしょうゆを少しつけていただくと、また違った旨さを楽しむことができます。
次に箸をつけたのが砂肝。もちろんこれも刺身でいただきました。
普段よく食べている鶏の砂肝から、「硬いのかな?」と先入観をもって食べた筆者ですが、そのやわらかさにびっくり。その独特な歯ごたえを擬音語で表すなら、シャキシャキというのが最も当てはまるでしょう。味はとても淡泊で、なにかをつけていただくなら、ごま油のような味がしつこすぎないものがおすすめです。
さて、続けてレバーをいただきます。
レバーというと、ほかの食肉では、濃厚ながらもクセがあって人によっては食べにくさを感じる部位です。しかし、ダチョウ肉ではその欠点がありません。口当たりはトロトロで、噛みしめていくと追って味が出てきます。レバーらしい濃厚さはありながら、生臭さはまったくなく、食べにくさとは無縁。レバー嫌いの人にも、一度食べてほしい逸品です。
お次は心臓にあたるハツ。この部位は、レバーとは違ったコクの深さが印象的で、「ああ、赤身ってこんな味なんだ」と感じられる余韻があります。コクを楽しんで噛み続けていると、はじめはコリコリとしていた肉が徐々にとろけてきます。そこまで噛んでいれば、肉の味わい深さを十分に感じることができるので、少量でも十分な満足感がありました。
なお、砂肝、レバー、ハツはももに比べてとれる量が少ない希少部位です。入手することも難しいのですが、それだけに食べられたときのうれしさは格別。食べられるお店を見つけるのは大変ですが、それだけの価値があると感じました。
タタキやローストなら、すっきり&ジューシーな味を楽しめる
続けて、ダチョウ料理のバリエーションを紹介しておきましょう。
まずは、もものタタキ。肉の外側に火が通っており、刺身とは異なるズッシリした歯ごたえが印象的です。火を通していることでジューシー感が増しており、こちらのほうが“肉らしい”味になっています。肉の外側と内側で食感が違いますから、それを楽しめるのもタタキならでは。刺身だけにとどまらない、ダチョウ肉の食べ方の幅広さを体感させてくれます。
刺身より味の出ているタタキは、パクチーのようなさわやかな付け合わせと一緒に食べるとより一層おいしくなります。アクセントが加わることで、ダチョウ肉の味がより引き立つのです。
そして、最後に食べたのが、ダチョウの最高級部位、フィレのロースト。今回は、家庭でも作りやすい、しょうゆベースのソースをかけていただきます。
牛肉にも似た歯ごたえと独特のやわらかさを兼ね備えるこのロースト。刺身では淡泊だったダチョウ肉の味をしっかり楽しむことができて、ひと噛みごとに「肉を食べている」幸福感を強く感じます。多く染み出してくる肉汁には刺身では想像できなかったほどの甘みがあり、まさに“ほほが落ちる”感覚。筆者の感覚では、ダチョウ料理のなかでも最も肉らしい味に感じられました。
なお、国内でのダチョウの飼育は、畜産王国の鹿児島を筆頭に広まってきているとのこと。特に鹿児島・鹿屋で生産されるダチョウ肉は、日本で唯一、国際衛生管理規格の「ISO22000」をクリアしていて、生食も可能です。ヒナの生育が難しいなど、量産化にあたって障壁となることは多いそうですが、一般的に味わえる食材になる未来を期待したいですね。
※この記事でのダチョウ肉の生食は、ダチョウ肉専門販売業者の監修のもとで行っています。実際に食べる際は、信頼できる専門飲食店や、ダチョウ肉専門販売業者の指導に従って食べることをおすすめします
ダチョウ肉の価格目安
もも:実売価格680円/100g フィレ:実売価格880円/100g