おもしろローカル線の旅~~関東鉄道竜ケ崎線/東武小泉線~~
全国を走るローカル線のなかには、沿線に住む人以外に、ほとんど知られていない路線も多い。そうした路線に乗ってみたら、予想外に面白い発見がある。そんな「おもしろローカル線」を旅する企画、今回は北関東を走る2つの路線を訪れた。まずは茨城県龍ケ崎市内を走る関東鉄道竜ケ崎線から紹介しよう。
〈1〉関東鉄道竜ケ崎線(茨城県)の旅
路線距離わずか4.5km!! 街は「龍」ケ崎市、路線は「竜」ケ崎線という不思議
関東鉄道竜ケ崎線は、その距離わずか4.5kmという短い路線だ。関東鉄道といえば、取手駅〜下館駅を結ぶ常総線がよく知られている。あちらは51.1kmの路線距離があり、最近は、都心へのアクセスに優れたつくばエクスプレスが、途中の守谷駅を通ることから、沿線の住宅化が著しい。
一方の竜ケ崎線は、始点となる駅が、JR常磐線の佐貫駅。常総線の始発駅・取手駅とはずいぶん離れている。路線距離は短く、駅数が始点・終点あわせても3駅のみである。どうして離れたこの場所に、このような短い路線が走っているのだろう。
龍ケ崎は、古くは陸前浜街道(旧国道6号にあたる)の要衝でもあり、木綿の生産地だった。しかし、常磐線(開業時は日本鉄道土浦線)が、街から遠い佐貫に駅が設けられることになった。そのため佐貫と龍ケ崎を結ぶ鉄道路線を、と1900(明治33)年に造られたのが前身となる竜崎(りゅうがさき)鉄道だった。開業当時は762mmという線路幅だった。
その後に改軌され、1944(昭和19)年に鹿島参宮鉄道に吸収された。路線は1965(昭和40)年、鹿島参宮鉄道と常総鉄道が合併して生まれた関東鉄道に引き継がれ、現在の関東鉄道竜ケ崎線となっている。
面白いのは地元の自治体名は龍ケ崎市と書くのに、路線は竜ケ崎線と書くところ。市の名前に「龍」が使われているのは、龍ケ崎市が生まれた際の官報に載った表記を元にしている。一方の竜ケ崎線は関東鉄道が合併した当時から「竜」の字が使われている。公文書に使われる常用漢字が「竜」の字だったため、この字が路線名として定着したようだ。
乗ったらエッ—−? 吊り革にコロッケが付いている
竜ケ崎線の始発駅・佐貫に降り立つ。JRの橋上駅を下りた先に関東鉄道の佐貫駅があった。この竜ケ崎線、路線距離は前述したように、わずか4.5km。乗車時間は7分だ。途中に入地(いれじ)駅という駅があるのみで、乗ったらすぐに着いてしまう。だが、乗車したときのインパクトは特大。なんと、車内がコロッケだらけなのだ!
車両はディーゼルカー。訪れた日は主力車両のキハ2000形1両のみの運行だった。淡い水色ボディにブルーの帯とブルーの天井、オレンジ色の細い帯がはいる関東鉄道特有の車体カラーだ。
車内には「コロッケがキタ−−」とネームが入るシール式のポスターが貼られる。ほかに「コロッケ アゲアゲ」などさまざまなイラスト入りのポスターが車内を飾る。それら貼り紙よりもさらにインパクト大なのが吊り革だ。なんと、吊り革にコロッケが付いていたのだ。
このコロッケは何なのだろうか。
実は龍ケ崎市の名物グルメが「コロッケ」なのだ。2003年に「コロッケクラブ龍ケ崎」が生まれ、全国のイベントに参加。2014年には、ご当地メシ決定戦で見事に優勝したという輝かしい経歴を誇る。いまも市内ではコロッケイベントが随時、開かれている。
竜ケ崎線の車内の装いも、市外から訪れた人たちに、そんな龍ケ崎名物を伝えよう、という意図があったわけだ。当初は短期間で終了の予定だったらしいのだが、好評なので現在もこの装いで列車が運行されている。
竜ケ崎沿線では、佐貫駅のそば店や、関東鉄道佐貫駅に隣接する観光物産センター「まいりゅうショップ」(冷凍もののみ用意)でも龍ケ崎コロッケが販売されている。筆者もひとついただいたが、ほくほくしていて懐かしの味だった。
レトロふうな途中駅、そして終点の竜ケ崎駅へ
ついコロッケだけに目を奪われがちだが、そのほかの沿線の様子もお伝えしよう。沿線には龍ケ崎市の住宅地が点在する。そして田畑も広がり、北関東らしい風景が広がる。
途中の駅は入地(いれじ)駅の1駅のみ。駅の待合室は最近、きれいに模様替えされ、駅名表示などレトロな文字が入る案内に変更されていた。
起点の佐貫駅から乗車7分で終着駅、竜ケ崎駅へ到着する。街の中心は400〜500m先にあるため、駅周辺は閑散としている。とはいえ、鉄道好きならば、すぐ近くにある車両基地は見ておきたい。留置された予備車両をすぐ近くで見ることができる。