しおちゃんというにゃんこをご存知だろうか。飼い主と完全に会話を成立させる様子を撮影したさまざまな動画が多数上がっている。その会話力は「ご飯」とか「おはよう」に始まり、「お帰り」はもちろん、「お買い物」とか「二人の時間」、そして「むかつく」といった言葉をシチュエーションごとに絶妙のタイミングで、ものすごくかわいらしい声に乗せて繰り出す。
筆者もわんことの会話を成立させながら日々を送っているが、しおちゃんの会話力とボキャブラリー、そして「こう言うと相手が喜ぶだろうな」というような読みの能力に驚くばかりだ。
人語を操るペットさんたち
ほかのにゃんこたちについても調べてみた。すると、ひたすら“Oh, long Johnson”って言い続ける子、飼い主の質問に“Right”や“Yes”とか“No”で返す子、お風呂にいれようとすると人間と同じ形の口で「ノォーッッッ!」と叫ぶ子など、心和む動画がいくつも見つかった。
一方、わんこの発言力もなかなかだ。お風呂に入れようとすると(にゃんこもわんこも、お風呂嫌いタイプは必ずいる)「なんでやねん!」とツッコミを入れたり、飼い主に向かって“I love you!”と叫んで見せたりと、にゃんこたちに劣らない。
愛情ホルモンで身も心も健やかになろう
にゃんこであってもわんこであっても、一緒に暮らしているとオキシトシンというホルモンが分泌されることがわかっている。“愛情ホルモン”という別名がある物質だ。
オキシトシンは脳内ホルモンの一種で、ペットに愛情を感じたり、触れ合ったりすることで分泌が促される。免疫力を上げ、血管や皮膚を修復する作用があると言われている。さらにはナチュラルキラー細胞を増やす働きもあり、これがガン細胞の減少につながるらしい。
今回紹介したい本は、飼っている人にも飼っていない人にも役立つ超実用系辞典だ。言葉=鳴き声や鳴き方だけではなく、多角的なアプローチによって円滑なコミュニケーションを実現するための強力なツールになってくれるにちがいない。
お互いについてよりよく知るための一冊
『ねこ語辞典』(今泉忠明・監修/学研プラス・刊)は、ねこ好きが情熱や思い込みを推進力に書き切ったタイプの本ではない。監修者の今泉先生はお父様とお兄様も動物学者という家系で、専門は哺乳類を主とする分類学と生態学だ。
まえがきに記してある文章を紹介する。
人は言葉を持ち、言葉で気持ちを伝えます。猫の伝え方は、当然それとは異なります。しぐさ、表情、鳴き声、ときには寝姿など、いろいろな方法で気持ちを表しているのです。それらのすべてが、猫が発する「ねこ語」になります。
『ねこ語辞典』より引用
にゃんことの関係においても、ボディーランゲージとか空気を読む姿勢は大切なのだ。
言葉だけじゃ、もの足りない
章立ては以下の通り。
・はじめの予備知識7か条
・表情を読み取ろう
・姿勢から読み取ろう
・しぐさから読み取ろう
・寝姿からわかる猫の気持ち
・鳴き声からわかる猫の気持ち
・行動をチェックしよう
・飼い主さんへの接し方を観察!
・猫どうしのコミュニケーションを見てみよう
筆者が一番気になるのは、「鳴き声からわかる猫の気持ち」だ。この章を読むだけでもかなりの情報を得ることができる。
【ニャー/ニャオ】NYA/NYAO
「ニャー」「ニャオ」と、音の長さや高音、低音など、バリエーションの違いはありますが、一番耳にする鳴き声です。これは、もともとは子猫が母親を呼ぶときの鳴き方。「ここに来て」「おなかが減ったよ」など、子猫は母猫の注意を引くために鳴きます。
『ねこ語辞典』より引用
野性の猫は、大人になるとそれほど鳴かなくなるという。対して飼い猫はいつまでも子猫気分が抜けず、飼い主を母親のように思うので、要求があると鳴いて合図を送るらしい。「ご飯」とか「おはよう」といった人語に聞こえる鳴き声は、このジャンルに属するもののようだ。
行動から読み解く気持ち
本能による行動も、気持ちを読み取るヒントになる。
人の目から見ると不思議に思える猫の行動も、猫なりの理由があります。その理由を考えることで、ねこ語を理解することができます。猫の行動から気持ちを理解するためには、まず、その行動が「本能」によるものなのか、「学習」によるものなのかを判断します。
『ねこ語辞典』より引用
においを嗅ぐ。毛づくろいをする。飼い主の指や手を舐めたりチュパチュパしたりする。そして、スリスリする。にゃんこたちの行動ひとつひとつにもきちんとした理由がある。8項目にわたって解説されるよくある行動についても、知識を整理し、深めることができる。併せて紹介されているQ&Aにも、「なぜ高いところに乗りたがるのか」「夜中に突然走り出すのはなぜか」「テレビを夢中で見るのはなぜか」など、知っているようで知らないにゃんこの行動を理解していく過程で役立つ情報を楽しく読める。
にゃんこ同居の可能性
「なでなでしてたらいきなり嚙みつかれた」「夫婦喧嘩を仲裁する」「飼い主の邪魔をする」といったありがちな行動の理由もわかりやすい言葉で明らかにされる。どの章のどの項目も、にゃんこと人をつなぐノウハウが満載されている。わんこしか飼ったことがない筆者も、すごく前向きに、にゃんこ同居の可能性を考え始めている。にゃんこが加われば、一緒に暮らすみんなのオキシトシン分泌量がさらに増えていくだろう。
筆者は日本語と英語、そしてイヌ語のヒアリングができる。この本でネコ語も勉強した。というわけで、ビギナークラスとはいえ、マルチリンガルということでよろしいでしょうか。
【書籍紹介】
ねこ語辞典
著者:今泉忠明
発行:学研プラス
しぐさから猫のきもち=「猫語」を読みとって、猫ともっと仲良く、幸せに暮らすための本。飼い主さんも、これから飼いたい人も楽しめる1冊です。写真を多用したビジュアルページでは、SNSで人気の猫も登場します。
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