GetNavi WEBをご覧のみなさん、こんにちは。立ち食いそば好きライターの平島です(なんだか某テレビ局の深夜音楽番組みたいな言い回しだ)。ふだんは生活家電を中心にライター活動をしています。趣味で立ち食いそばの食べ歩きをしているのをゲットナビ編集部の現編集長にうっかりしゃべってしまったところ、ある日「立ち食いそばのムックを作るけど、やらんかね」とお話が。それで「立ち食いそば名店100 首都圏編」という本の制作に関わることになりました。
現在、その流れで「立ち食いそば好きライター」を名乗らせていただいていますが、心中では非常に「おこがましい」というか、申し訳ない気持ちでいっぱいです。なにしろそれまではおいしいと評判の店を見つけて「うまいうまい」と言っていただけの人間ですから、味の評価なんて恐れ多い。編集部からは「立ち食いそばライター」にされかけましたが、なんとか「好き」の2文字をねじ込みました。
この連載では、前述の「立ち食いそば名店100 首都圏編」やそのポケット版で紹介しきれなかった店や、その後に出会ったおいしい店を紹介していきたいと思っています。
ネットでは毎日のように立ち食いそばを食べて、その感想をアップしておられる方が何人もいます。そんな達人たちの行動力には及ばないものの、各店のそばのおいしさを少しでも伝えられればと考えています。
……おっと、あり得ない長さの前置きになってしまいました。連載第1回で紹介するのは神田「めんや」です。
「めんや」は都営新宿線の小川町駅とJR山手線神田駅のちょうど中間辺りにある店です。靖国通りと中央通りの交差点を神田方面に向かってすぐの路地を右に入ると、清潔感のある白い看板が見えます。
入口は店の左側で、なかに入ると左手すぐに券売機があります。ここで食券を買って奥のカウンターで注文。受け取ったそばはテーブル席で食し、反対側(店の外から見ると左側)のドアから出る、というのが暗黙の了解となっています。
僕が店に行ったのは11月の雨の日。「めんや」は昼どきには行列ができる人気店ですが、この日は午後3時を回っていたので、先客は2人だけ。雨に冷えた身体が欲しているのは、暖かい天ぷらそばです。
実はこのところ、老舗系のゆで麺をずっと食べていたので、そろそろしゃっきりコシのあるそばが食べたくなっていたんですよね。「めんや」のそばは生麺を使用し、昼どきは少量ずつ茹で置きした麺を提供、繁忙期でなければ茹で立てが食べられます。食券を渡して3分ほど待っていると、待望の天ぷらそば(380円)が出てきました。
丼はやや口が狭く、底が深めです。そこに堅めに揚げられたかき揚げが、見事に屹立しています。
そのかき揚げが倒れないように注意しつつ、まずはつゆを一口。だしは「豊潤」というよりうまみが締まった味わいで、後口もすっきりしています。ほどよい甘みがあってしょうゆのうまみ、辛さとのバランスも秀逸。そばは色白の細麺で、温そばでもしっかりコシが残っています。ツルツルと流れるようなのどごしも「生麺茹で立て」ならでは。この麺に先ほどのつゆが絶妙に絡んできます。
存在感のあるかき揚げは揚げ置きですが、衣にほのかに甘みがあります。具材は玉ねぎ、にんじん、ごぼうを使っていて、玉ねぎの苦みを残した味が新鮮。ちなみにここ「めんや」では「明日葉天」も人気のトッピングです。
卓上には七味のほか「ゆず一味」も置かれ、甘みのあるつゆのアクセントになります。僕もそばを3分の1ほど食べた後にゆず一味をかけたら、あとは完食完飲一直線でした。
店に入ったときは肌寒さも感じていた身体はこの頃にはもうポカポカ。顔にはうっすら汗まで浮かんでいます。外はまだ雨が降り続いていますが、気分はなんとも晴れやか。この満足感がワンコインで手に入るんだから、立ち食いそば屋巡りはやめられません。