「土鍋で炊いたご飯は美味しい」という話はよく聞きますが、家電量販店などでは本物の「土鍋」を使った炊飯器の種類は多くありません。そんななか、2006年から12年にわたって炊飯器の内鍋に「本物の土鍋」を採用してきたのがタイガー魔法瓶です。そのタイガー魔法瓶が、プレス向けに「土鍋ごはん勉強会」を開催するとのこと。土鍋のご飯が美味しい理由や、市場に土鍋炊飯器があまり出回っていない理由についても聞いてきました。
土鍋が「炊飯に強い理由」は「蓄熱性の高さ」「土鍋泡」「遠赤外線効果」の3つ
同社によると、土鍋の炊飯におけるメリットはズバリ3つあるそう。ひとつは「蓄熱性の高さ」。最近の10万円前後する高級炊飯器のほとんどは、内鍋が分厚く重く設計されています。これは、一度取り込んだ熱を逃さず、高温を維持しながら炊飯するため。家庭で土鍋を使った鍋料理をすると、火を消したあともグツグツと沸騰し続けることがありますが、土鍋はこのように「高温をキープ」するのに優れているのです。
ふたつめが「土鍋泡」。土鍋は表面に細かな凹凸があるので、沸騰時に細かく均一な土鍋泡を発生させられます。この「細かな泡」が米の間を優しく通り抜けることで、米の一粒一粒にムラなく熱を伝えます。同社によると、最近の炊飯器は「勢いよく沸騰させる」ことで熱ムラを減らす傾向にありますが、激しい対流は米同士がぶつかって傷がつきやすいのだそう。傷ついた米は、傷口から水を吸ってベチョッとした食感のご飯に炊き上がったり、甘み成分が抜けてしまうこともあるそうです。
そして、最後のメリットは土鍋の持つ「遠赤外線効果」。土素材の持つ遠赤外線により米の中心までしっかり加熱できるので、ふっくらとハリのある炊飯ができるといいます。
土鍋の課題は「形がコントロールしにくい」「IHに対応させるのが難しい」
このように、メリットの多い「土鍋炊飯」ですが、反面、製造が難しいというデメリットもあります。炊飯ジャーは工業製品であるため、大きさなどの誤差をミリ単位で調整する必要があるのですが、陶器は焼成する際に変形するため、形をコントロールしにくいのです。そこで、同社はこの問題を解消するため、3回以上の「焼き」を実行しているそう。
さらに、最近の高級炊飯器は加熱方法にIHを採用していますが、陶器はそのままでは磁性がないのでIHによる加熱はできません。このため、タイガー魔法瓶では銀素材をベースとする発熱体を土鍋にコーティング。この作業も手作業で行っているため、ひとつの鍋ができるのにはなんと約3か月もかかるそうです。なるほど、それだと価格を抑えるのはなかなか難しいですね。
一般的な金属の内釜の2倍以上の高火力を実現
ちなみに、同社の炊飯器の上位機種は土素材で作られた「本土鍋」より熱伝導率が約2.5倍高いといわれる「プレミアム本土鍋」を採用しています。プレミアム本土鍋を採用している炊飯器は、なんと内釜だけでなく「遠赤特大土かまど」と呼ばれる釜を包み込む本体内部までが土素材。この「遠赤特大土かまど」と内釜の両方が発熱することで、鍋底の最高温度は約280度まで上昇します。ちなみに、一般的な金属製の内釜の鍋底温度は約110~130度とのこと。つまり、通常の金属の内釜の2倍以上の火力で加熱できるわけですね。