ライフスタイル
2018/9/5 20:00

コーヒーや老眼鏡、ピッツァまで! でも、イタリアの自動販売機から「なぜか昭和の香り」が。

海外からの訪日観光客が、「日本で驚いたこと」のひとつに必ず挙げられるのが自動販売機。海外にはないの?といえばそんなこともなく、先ごろ広島に設置されて話題の焼きたてピッツァ自動販売機も、実はイタリア製。なんだ、結構ありそうじゃない?ってなところですが、イタリアの自動販売機事情は少々日本とは異なって…。

 

イタリアで最初に自動販売機が登場したのは、1960年代初頭。アメリカ製でしたが、コーラでなくコーヒーの自販機でした。さすが、イタリア。1日に何度もエスプレッソコーヒーを飲む習慣があるだけに、そのニーズの高さが伺えます。また、コーヒー自販機と並んでよく見かけるのが、飲み物とオヤツがセットになった自販機。イタリア人は、老若男女共に空腹感への耐性が極端に低いので(←筆者の経験則による主観です)、こちらもニーズに沿った自販機といえましょう。

↑よくあるある系自販機

 

↑飲み物とお菓子はセット

 

そのほか、老眼鏡や乾電池、哺乳瓶やコーヒー豆、マウスやロト(イタリアの宝くじのようなもの)まで、多少「誰がどんなときに?」と思わなくもない自販機もありますが、まあ、意外と多種多様な商品がラインナップされています。

 

↑老眼鏡の自販機も

 

↑コーヒー豆の自販機も

 

↑よく見るとコーヒーメーカー(カフェッティエラ)まで売ってる

 

↑ロトの自動販売機

 

ただ、設置されている場所がかなり限定的で、だいたい駅構内や車内、空港、学校や病院、オフィスなどの私有地内。日本のように路上にずらりと並んでいる姿なぞ、ほぼお目にかかることはできません。その理由は景観と……、そして何と言っても治安でしょうか。ぶっ壊されてお金を抜かれたり、なんなら本体ごと盗難に合ったりすることだって、想像に難くないでしょう(イタリアに限らず他の諸外国も、きっと似たようなもの)。

 

徹底された在庫管理やメンテナンス(イタリアでは売り切れや釣り銭が出ない、それ以前にお金入れても反応しないなんて、超あるある)や、“冷”と“温”が一台に同居してる(そもそも熱い缶やペットボトルがあることすら想像の外)など、その素晴らしい機能性もさることながら、「のどかに路上に並んでる!」ことに、たいていのイタリア人(およびたいていの外国人)は感動するものです。人通りがない路地だって、真夜中だって、キラキラ輝かんばかりに整備された自販機が平然と並ぶ様子は、日本そのもの。治安の良さはマナーの良さをそのまま体現しているようです。

 

とはいえ、そんなイタリアにも、路上に置かれた自販機がなくもないことは、一応付け加えておきます。ガッツリ鉄柵の向こう側に置かれていたり、大きな鍵がつけられていたり、安全対策はしっかりイタリア流ですが、24時間路上で稼働する自動販売機もあるわけです。そこで売られているのは、タバコとコンドーム!なんとなく、昭和が香ります(そういえば、コンビニ文化が到来する前の日本にも、コンドームの自販機って結構ありましたよね)。

↑24時間いつでも買えるタバコの自販機

 

空腹感の恐怖とコーヒーへの並々ならぬ愛着を抱えながらも、コンビニもなく、路上に自販機もない不便さを甘んじて受け入れているイタリア人にとって、なんでしょうか。タバコとコンドームは、空腹やコーヒーより重要ということでしょうか。

 

 

↑24時間いつでも買えるコンドームの自販機

 

 

いや、それはきっと、どうしたって自力で作れないものだから。なのかもしれません。家に帰ればコーヒーだって、空腹を満たす方法だってあるはずだし。あまり便利な環境にいると忘れがちですが、微妙に不便なイタリアの自動販売機事情から、人間はタバコとコンドームさえあれば、あとは適当にうまく生きていくことができる。そんなことを教わるような気がします。こんなんでもイタリア人は楽しそうに暮らしてますから(笑)。

 

こちらは、壁にきっちり埋め込まれたタバコの自販機。外国人訪日客がよく「機械がしゃべる」ことにも驚くらしいですが、静まり返った薄暗いイタリアの路上で、唐突に話し出すタバコの自販機も別の意味で驚かされます。

 

 

【おまけ】
データで見るイタリアの自動販売機業界の成長率>

2018年4月にイタリア自動流通協会に発表されたデータで見ると、2017年のイタリアの自動販売機設置台数は81万台。フランスの59万台に大きく差をつけてヨーロッパ第1位の設置数です(日本は約490万台)。

 

ちなみに、設置場所の割合は企業内35%、個人オフィス内15%、商業施設13%、学校施設13%、病院11%、役場6%、交通機関4%、レジャー施設3%。売上額は約35億ユーロで、前年からの成長率は+3.5%を示しています。業界の注目度は高く、輸出も急成長。総生産の70%が輸出されており、2017年上半期の売上高2億1300万ユーロ(前年同時期+5%)。輸出先はスイス、ルーマニア、ドイツをはじめ、中国、メキシコなど(対中国の伸び率+214%)。イタリア自動流通協会の会長ピエロ・アンジェリ・ラザッリ氏によれば、「世界に認められる先進的な製造技術。メイド・イン・イタリーがヨーロッパの自動販売機業界を先導する」そう。へー意外です(在住者感)。

 

参考サイト:
https://www.confida.com/
http://www.ansa.it/canale_terraegusto/notizie/in_breve/2018/04/11/commerciodistribuzione-automatica-cibi-bevande-vale-35-mld_65e672df-b1ed-4a1c-bbd9-ce996333a7da.html