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2014/12/19 18:09

モテなかったらなにが悪い!

連載「モテない美学」第1回

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みなさま、はじめまして。私、ゴウヒデキと申します。あれ?と思った方もいるかもしれません。『帰ってきたウルトラマン』に変身する人と同じ名前です。本名です。構成作家と言って、テレビやラジオの仕事をやっております。

さて、このたびは「モテない美学」と題した連載をGetNaviWEBにてやらせて頂くことになりました。世にはびこる「モテ」の概念を叩き壊すべく、戦っていきますので、よろしくお願いいたします。

 

モテなかったらなにが悪い!

私は世間で言う「ノリが悪い」人として生きてきました。生まれてこの方、「ピースサイン」をしたこともなければ、「イエーイ!」と言ったこともありません。私が春思期を過ごした1980年代は、「根明(ネアカ)」至上主義」で、「ピース」で「イエーイ」が猛威を奮っていた時代。明るく、元気であることを強制されている風潮がありました。

 

アメリカ的な明るいノリが「モテる」。それはバブル景気に浮かれていた80年代の気の迷いではなく、90年代に入っても続きました。チーマーおよびヒップホップの台頭です。「ピースサイン」は”手の甲を前に突き出すポーズ”に代わり、80年代の伸びやかな「イエーイ」は、ちょっと鼻にかかった「yeah」に進化。

そんな時代に、私はヒップでもホップでもなく、ズボンを浅く腰で履くこともなく、むしろ無意識に丹田に力を込めようとしていたのか深くズボンを履いていました。より「モテない」沼の深みにはまっていったのです。それが、2000年代に入った頃からでしょうか。女性の皆さんが口々に「店員さんに横柄な態度を取る男が嫌い」と言い出したのを見て、「いよいよ時代が来たな、モテてしまうな…」と感慨深い思いを抱いたものです。

 

ところが、町に出るとどうでしょう。「ビール2つ!」「これ、まだ来ないんだけど!」と、横柄な態度の男性は、大抵が女連れ。多少、男性に行き過ぎた言動が見られても、一緒にいる女性は「ちょっと〜やめなよ〜」と嬉々とした表情でたしなめる程度なのです。

 

一方、「ビールを1杯ください。」と慇懃に頼み、注文した物が来なくてもジッと堪え忍んでいる男性達は、一様に女っ気なし。「男の子って少しワルい方がいいの文化」は、一向に廃れていなかったのです。そのうち「草食系男子」や「恋愛市場」といった言葉が登場し、「ノリが悪い」そして「モテない」ということが、まるで価値ナシと言わんばかりに虐げられる時代が到来しました。「モテない」って罪なんでしょうか?いやいや、そんなことはないはずです。

 

これぞ、「モテない美学」!

そもそも、「モテない」は「モテる」の否定形であることが、不幸の始まりだと私は思います。さも、「モテる」ことこそが人類の王道で、それを手に入れられない者を「モテない」と言っているような感じ。「モテない」がために何かを失っているわけではないのに、いつの間にか喪失感を抱いてしまう理由がここにあります。“モテない”は“モテる”の下に成立している概念なのです。

 

この言葉の呪縛があるがために、「モテるとかモテないとかに興味がない!」と言っても、アナタが今まさに「モテている状態」でない限り、「モテない」と見なされてしまうのです。「僕、関係ないんで…」と通り過ぎようとしても、越すに越されぬモテの坂。部外者ではいられません。では、この“モテの無間地獄“からどうすれば解脱できるのでしょうか?

 

カギは、積極的に“モテない”ようにすることです。服装から言葉遣いまで、どうすればモテるかの情報に溢れた現代ですが、そういった情報を知ったうえで、あえて茨の道を進む。これぞ、「モテない美学」!!積極的にモテない選択をすることで、「モテる者は、モテの道を選んだ者」「モテない者は、モテない道を選んだ者」と、話は生きるスタンスの違いになります。モテない者は晴れてモテる者と対等の立場に昇格するのです!!

アイ・ハブ・ア・ドリーム!仲良く下校していた男友達が、バレンタインの帰り道、女子に呼び出されチョコをもらっているのを待つ間、気にしていないように見せるためだけの壊れた人形のような笑みをぼんやり浮かべる悲しい少年を生み出さない世界を実現するのです!

 

忘れまじ!母親や姉、ときには祖母にまで気を遣わせて、チョコをもらったふがいなさ。ノー・モア・血縁チョコ!!

 

「俺、モテないようにしてるんですよ…」と口に出して言ってみて下さい。どうですか?得体の知れないパワーが湧いて来ませんか?では、具体的にどう振る舞うことが「モテない」道を極めることになるのでしょうか?その一つに、「女性のなんとなくイイかも発言を真に受ける」という方法があります。

 

女性のなんとなくイイかも発言とは…!?

ある時、恋愛番組のオーディションにて。そこには15歳〜18歳くらいの女性が集まっていたのですが、彼女達に「好きな男性の仕草は?」という質問を投げかけました。一同しばらく考えて、一人の女性が「車を停めるとき、バックで運転してるところ」と発言、周りもそれに「あ!それいい!」「いいよね〜!」と同調同意賛同絶賛!

 

その時、私は「おや?」と思いました。違和感。「彼女達は、まだ高校生。彼氏は運転をするのか? 運転をする年上と付き合ったことがあるのか? ひょっとしたら、運転をする男性はお父さんしか知らないのでは?」

 

そこで、「車を持っている男性と付き合ったことありますか?」と尋ねたところ、彼女達の答えは「付き合ったことない。」「では、なぜ、バックで駐車する仕草がかっこいいと?」と詰め寄ったところ、「なんとなく…」という答え。そうなのです。もちろん、そうじゃない人もいるとは思いますが、多くの人は「こう聞かれた場合には、こう答えるのがベスト」というお手本、「そう答えるのがイケてる…」という言葉をまるでTwitterでリツイートするかのように一言一句そのまま口にし、また「そう!そう!」となんとなくRTしているだけなのです。

 

このことがあって、私は、あの「店員さんに横柄な態度を取る男が嫌い」発言もスッと腑に落ちたのでした。あれは、「店員さんに横柄な態度を取る男が嫌い」と言うことで「私は常識人ですよ」という女性側のアピール。つまり、個人的な意見を述べたのではなく、「世間ではこう言うのがカッコイイ!」とされていることを、なんとなく引用しているだけだと思った時、ナァンダと気が楽になったのです。

 

喫茶店や居酒屋で女性同士の会話に聞き耳を立ててみて下さい。女性は、本当に驚くほど、よく恋愛の話をしているものですが、そのうち「あれ?この意見、この前も聞いたことあるぞ…」というフレーズがいくつも出て来ます。それです。それが、「なんとなくイイかも発言」。まずは、1週間聞き流すだけでOKです。

 

さて、我々は、この「なんとなくイイかも発言」を、どんどん真に受けていきましょう。女性の建前バッチコイ!すると、モテずに済みます。そして、いつの日か「モテる」とか「モテない」のない青き清浄の地へとたどり着けるのです。

 

2015年は、羊の皮をかぶって生きていきましょう。モテないと見なされることで味わう苦さを、奥歯ですりつぶしながら……。

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