「週刊GetNavi」Vol.71-1
料金はなるべく下げずメリットを増やす方向に
携帯電話料金を巡る動きが活発化している。そのきっかけは、8月末に入り、菅 義偉官房長官が「携帯電話の料金は4割下げられる」と発言したことだった。8月21日に札幌市内での講演で発言した後、8月27日の記者会見でもあらためて言及した。
菅官房長官の発言は、携帯電話業界にちょっとした騒ぎをもたらした個人の視点なら、携帯電話の料金が下がるのは結構なことだ。携帯電話事業者、特にNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクのいわゆる「大手3社」は業績も好調で、「もうけすぎでないか」という批判もある。一方で、携帯電話事業者から見れば、「4割下げられる、という根拠はどこにあるのか」ということになる。
そんなさなか、KDDIとソフトバンクがあいついで新料金プランを発表した。
KDDIの発表したプランは「auフラットプラン25Netflixパック」。月額5500円で25GB分の通信+1回5分以内の通話がかけ放題という通信プランに、Netflixのベーシックパック(月額800円)、とauビデオパス(月額562円)という映像系サービスの利用料金をセットにした。
そして、ソフトバンクのプランはもっと大胆だった。同社が準備したのは「ウルトラギガモンスター+」という料金パック。月額5980円に50GB分の通信料を含みつつ、YouTube・AbemaTV・TVer・GYAO!・Huluという5つの動画サービスと、LINE・Facebook・インスタグラムという3つのSNSについては、さらに「データ通信量をカウントしない」形にした。しかも、2019年4月7日までに加入した場合、2019年4月のキャンペーン終了時期まで、上記8つのサービス以外、すなわち「すべてのアプリやサービス」のデータ通信量がカウントされなくなる。PCなどをつないで使う、いわゆる「テザリング」で消費する容量も含んでおり、この間は完全な「使い放題」となるわけだ。
どちらも安くはない。しかし、従来の通信料金に比べるとあきらかに「おトク」だ。KDDIは「映像配信の利用料金まで考えるとおトク」という考え方であり、ソフトバンクは「これ以上料金が発生しづらい、安心して使い放題に出来る」という点でおトク度を増している。
別の言い方をするならば、これらの大手は単純に携帯電話料金を下げるのではなく、同じような料金であるが、より消費者メリットが高くなる方向へと舵を切っているわけだ。
彼らがこのような選択をしているのは、事業者として売り上げを落としたくない……という発想が根底にある。だが、それはただの事業者側のわがまま、というわけではない。
現在は、低価格なサービスも存在しており、MVNO(いわゆる格安スマホ)や低価格プランを使えば安く済ませることはできる。結局のところ、「たくさん通信を使いつつ安く」という要請には応えづらいということであり、大手の携帯電話事業者は、「通信をたくさん使ってもらう未来」をベースに、施策を考えているのである。
それはなぜなのか? 携帯電話料金は値下げできる、という意見の根拠は? そうした疑問には、次回のVol.71-2以降で答えよう。
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