乗り物
鉄道
2018/10/21 17:30

【保存版】「鉄道写真」上達を目指すなら「LED表示器」にこだわりたい! 代表的車両の傾向と対策

おもしろ鉄道の世界~~撮影に必要なLED表示器の基礎知識2~~

 

通勤形の電車に今や欠かせなくなりつつある「LED表示器」。カラー化され、文字はくっきり、色も鮮やか。電車の行先を表示するだけでなく、花の絵入りの表示器が登場するなど華やかになりつつある。そんなLED表示器ではあるものの、写真を撮ろうという鉄道ファンには、やや厄介な存在にもなっている。

上手く撮れた! と思ったら正面に表示される文字がまったく撮れていない……という経験をお持ちの方も多いだろう。今回は、鉄道会社、鉄道車両で異なるLED表示器の傾向と対策を探ってみた。インスタ映えする鉄道の写真を撮りたいと思っている方にも役立てていただきたい。

↑JR山手線のE235系電車を200分の1のシャッター速度で撮影。後ろのカラーLED表示器には季節に合わせススキなどの草花のイラストが表示され、利用者を楽しませている

 

【LED表示器の基本】まずシャッター速度に注目することが必要

LED表示器、とくにカラーLED表示器の仕組みは前回の記事でご紹介した。

【関連記事】見慣れた表示がいつのまにか変化していた!? 鉄道車両に欠かせない「カラーLED表示器」の今を追う

 

前回の記事を要約すると、LED表示器自体は約20年以上前に登場し、3色LED表示器からカラーLED表示器と進化して、文字もより見やすく美しくなっている。LED表示器は1秒の何100分の1という短い時間にヨコの行ごと(タテ列ごとに行う表示器もあり)に「点灯」と「消灯」を順番にくりかえしている。つまり、すべてのLED素子が一斉に点灯しているわけではないのだ。

 

点灯と消灯をくりかえすLED表示器だが、人の目には残像効果で1枚のきれいな表示に見える。しかし、カメラは人の目に比べてはるかに高性能なため、設定次第で1000分の1以上という“瞬間”を切り取る。そのため、次の写真のように消灯している一部分が見えなくなる現象が起こってしまう。

↑JR京浜東北線のE233系電車を500分の1のシャッター速度で撮影すると、このような写真に。人間の目では見えているのに、カメラで撮ると文字が見えないことが起こる

 

そこでLED表示器を撮影する場合には、カメラのシャッター速度を、LED表示器が点灯・消灯する速度(すべてのLED素子が点灯して一巡するまでの速度)よりも遅くしてあげれば、表示器を写すことができる。

 

しかし、どのLED表示器も、同じシャッター速度に撮れば良いのかと言えば、そう簡単にはいかない。一部は撮れるが、一部は撮れない。

 

LED表示器を製造するメーカーが複数あり(コイト電工、森尾電気、レシップなど)、それぞれ製造するLED表示器の点灯、消灯のスピードは、各社の商品ごと、また製造した年代で異なっているためだ。そのために、同じシャッター速度でも撮れる、撮れないという現象が起きる。

 

LED表示器がきれいに写るシャッター速度は、大半が160分の1〜400分の1ぐらい。停車している車両はそうしたシャッター速度で撮ればきれいに撮ることができる。しかし、スピードを出して走る車両を遅めのシャッター速度で写すと、今度は車体が次の写真のように流れてしまってきれいに撮ることができない、というジレンマが発生する。

↑シャッター速度を100分の1にして、何もせずに撮るとこのように車両の姿は止まらず流れてしまう。時速80kmで走る電車であれば、1秒に22mも進む。100分の1秒でシャッターを切っても22cmも動いている計算になる

 

だが、諦めるのはまだ早い。ちょっとしたコツを身に付けることできれいに撮れるようになる。ここからは、シャッター速度を遅くした際の撮影方法に触れておきたい。

 

ちなみに、速いシャッター速度で撮影できる、逆に遅いシャッター速度でしか撮影できないという差は、LED表示器の優劣ではない。どちらも人の目には判読できる範囲であり、十分に実用的な性能を持っている。あくまで写真を撮る際に違いが生じる、と捉えていただきたい。

 

【表示器を撮るコツ1】「ズーム流し」という撮影方法を利用する

シャッター速度を100分の1〜400分の1といった遅めに設定しての撮影が必要となるLED表示器。そのままでは、前述のとおり写した車両は写真内で止まらず、流れてしまう。どうしたら、車体を写し止めつつ、きれいにLED表示器が撮影できるのだろう。

 

そこで注目したいのがレンズだ。鉄道写真を撮影する際に、ほとんどの人は単焦点レンズでなく、ズームレンズを利用しているではないだろうか。このズームレンズの機能を活かしたい。

 

ズームレンズには焦点距離を変更するためにズームリングが付いている。このズームリングを操作するのだ。

 

具体的には、近づく車両の動きに合わせてズームリングを回して焦点距離を調整。例えば70mm〜200mmの望遠ズームならば、200mm側からズームリングを回して70mm側に焦点距離を移動させる。こうした撮影方法を「ズーム流し」と呼ぶ。

 

最近のカメラは優秀なAF追従機能が付いているので、この機能を利用すると良い。鉄道車両の頭部分(できれば連結器部分)にピントを合わせるように調整しておけば、まず外す心配がない。正面が白い車両のみピントが合わなくなる可能性が有るので注意したい。

↑ズーム流しとはズームリングを車両の動きにあわせて焦点距離を調整する撮影方法。筆者はキヤノンのカメラを使っているが、ニコンの場合はズームリングの回す方向が違うので注意

 

感覚的には、遠くからから近づいてくる鉄道車両の動きにあわせて、画角を思い切り広げていき、大きくなる車両に画角(フレーミング)を合わせていく。この際に、車両の走りに釣られず、カメラの位置はなるべく移動させずに、車両の後端が切れないように気を配りたい。

 

筆者の場合は、LED表示器が付く車両を撮る場合は、撮影モードはシャッター速度優先モードを利用。250分の1前後にしておき、車両が遠くに見えたら、シャッター速度を調整、ズーム流しを利用して撮影するようにしている。

 

【表示器を撮るコツ2】立ち位置の選び方も重要なポイントに

シャッター速度を遅くすれば、シャッターを切る間に、その遅くしたぶんだけ目の前を車両が走り過ぎていく。時速80kmの電車ならば、500分の1のシャッター速度ならば4.4cmだが、100分の1秒のシャッター速度ならば、シャッターを切る間に22cmも目の前を走ってしまう。

 

だが、立ち位置を選ぶことによって、自分のほうに向かってくる車両を、なるべく同じアングルが続くように加減することが可能だ。ズーム流しもしやすくなる。

 

下の図のように直線の線路区間では、電車から離れるほど、右側へ走る動きが加わり、スロー気味のシャッター速度での撮影が難しくなる。線路に近づけば良いのだが、近づきすぎは危険。また近づき過ぎると車両の顔ばかりが大きくなり、側面が撮れなくなる。

↑直線路で撮影するときの立ち位置と、アウトカーブの撮影地での、撮影者と電車の位置を図にした。直線路では160分の1が限界、アウトカーブならば100分の1でも撮影が可能となる(電車のスピードによって多少の差はあり)

 

理想的なのはアウトカーブの撮影地。カーブでは電車がスピードを緩める、また撮影者が正面気味に立っても、線路にさえ近づかなければ危険とならない。

 

筆者の場合、100分の1といったシャッター速度で撮らなければいけないときには、なるべく駅の近くで電車のスピードが落ち、さらにアウトカーブの撮影地を選んで訪れるようにしている。こうした場所でないと、100分の1というスロー気味のシャッター速度での撮影は、高度な技術を習得してもかなり難しいと思われる。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
全文表示